研究課題/領域番号 |
23K23159
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補助金の研究課題番号 |
22H01891 (2022-2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2022-2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分28010:ナノ構造化学関連
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
坂口 浩司 京都大学, エネルギー理工学研究所, 教授 (30211931)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
17,680千円 (直接経費: 13,600千円、間接経費: 4,080千円)
2024年度: 4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2023年度: 4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2022年度: 9,360千円 (直接経費: 7,200千円、間接経費: 2,160千円)
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キーワード | グラフェンナノリボン / 表面合成 / ナノ炭素細線 / 化学気相成長法 / 低温合成技術 / ナノ材料 |
研究開始時の研究の概要 |
我々が世界に先駆けて開発した2ゾーン化学気相成長法(H. Sakaguchi, et al., Nat. Chem., 9, 57 2017)を用いて、独自に分子設計した非対称Z型前駆体を金属表面上で重合した高分子に、水素受容性分子ガスを照射することにより化学変換(水素引抜反応)を起こさせ、従来の気相成長法では達成できなかった低温における脱水素縮環反応を高効率で進行させ、官能基を熱分解すること無く合成する新しいGNR成長法を開発する。本手法により、従来に無い新しい機能性GNRを合成する。
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研究実績の概要 |
本研究では、電気双極子がsp2炭素帯構造に非対称に高密度に連結した新しいナノ炭素構造である非対称グラフェンナノリボンを合成することを目的とする。この新しい強誘電体のモデルとして、GNRの片方のエッジに電子受容体や電子供与体を付与した電子的非対称GNRを提案する。今年度は片側に電子供与性置換基であるブトキシ基をZ型ポリフェニレン構造の片側に結合させた非対称Z型前駆体分子を設計・有機合成し、2ゾーン化学気相成長法により金(111)単結晶基板上で重合させた高分子を表面合成した。3個と2個のポリフェニレン骨格を持つ32非対称Z型前駆体分子を重合させた高分子の立体規則性について、77Kで動作する低温走査トンネル顕微鏡を用いて分析した。その結果、生成した高分子はアイソタクチック(isotactic)構造を示すことが明らかになり、32非対称Z型前駆体分子は金表面上で方向性を持ってベクトル的に結合し極性構造を示すことが明らかになった。これに対し、2個と2個のポリフェニレン骨格を持つ22非対称Z型前駆体分子を用いて金表面上で重合させた高分子の立体規則性は前駆体分子がランダムに結合したアタクチック(atactic)構造を示すことが明らかになった。密度汎関数法を用いた非対称Z型前駆体分子の金基板上でのコンフォーメーション(配座構造)を理論計算したところ、32非対称Z型前駆体分子は、基板高さ方向に異なる距離を有する軸キラル構造を示すのに対し、22非対称Z型前駆体分子では等しい距離を有する面キラル構造を示すことが判明した。以上の結果は前駆体分子のポリフェニレン骨格の非対称構造が金基板上での異性体構造に大きく影響し、ベクトル的な一方向重合を達成する因子として作用することを示しており興味深い。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の目的である非対称構造を持つ前駆体分子を設計合成し、化学気相成長により金属基板上でベクトル的に結合させた極性高分子の表面合成に成功したため。
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今後の研究の推進方策 |
本年度では、非対称Z型前駆体分子の化学気相成長法による金基板上での極性高分子を形成させることに成功したので、今後はこの極性高分子構造を脱水素縮環させた極性グラフェンナノリボン(GNR)の表面合成に挑む。GNRに付与する官能基はブトキシ基であり、酸素元素を含んでいる。従来の合成手法である超高真空成長法では400℃程度の高温での脱水素縮環反応(熱変換)を含んでいるため、官能基が分解してしまう問題点がある(C. Eduard, et al., ACS Nano, 11, 7 2017)。この問題解決のために、新しい低温合成法「分子気相アシスト法」を提案する。この手法では、我々が世界に先駆けて開発した「2ゾーン化学気相成長法」(H. Sakaguchi, et al., Nat. Chem., 9, 57 2017)を用いて、独自に分子設計した「非対称Z型前駆体」を金属表面上で重合した高分子に、水素受容性分子(DDQ:2,3-ジクロロ-5,6-ジシアノ-p-ベンゾキノン、酸素等)ガスを照射することにより化学変換(水素引抜反応)を起こさせ、従来の気相成長法では達成できなかった低温での脱水素縮環反応を高効率で進行させ、官能基を熱分解すること無く合成する新しいGNR成長法である。本手法を用いることにより、従来に無い新しい機能性GNR(強誘電性)を合成する。
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