研究課題/領域番号 |
23K23161
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補助金の研究課題番号 |
22H01893 (2022-2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2022-2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分28010:ナノ構造化学関連
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研究機関 | 国立研究開発法人物質・材料研究機構 (2023-2024) 国立研究開発法人理化学研究所 (2022) |
研究代表者 |
小澤 大知 国立研究開発法人物質・材料研究機構, ナノアーキテクトニクス材料研究センター, 主任研究員 (30756060)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
17,940千円 (直接経費: 13,800千円、間接経費: 4,140千円)
2024年度: 2,860千円 (直接経費: 2,200千円、間接経費: 660千円)
2023年度: 3,250千円 (直接経費: 2,500千円、間接経費: 750千円)
2022年度: 11,830千円 (直接経費: 9,100千円、間接経費: 2,730千円)
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キーワード | カーボンナノチューブ / 化学修飾 / 量子光源 / 励起子 / 光物性 / 量子欠陥 / 局所化学反応 / 単一分子分光 / 光化学反応 / 発光中心 / 単一光子発生 / ナノカーボン / 単一分子反応 / 表面修飾 / 格子欠陥 / 量子通信 / ナノ構造化学 / ナノ物質 / 光中心 |
研究開始時の研究の概要 |
この研究は、ナノテクノロジーを用いて原子や分子を自在に配置する技術の探求を目指す。特に、カーボンナノチューブの量子欠陥を決定論的に形成する方法を開発し、その光物性を理解することが主な目標である。これにより、量子光デバイスの集積化や新機能の実証が可能となる。具体的には、単一分子レベルでの量子欠陥制御と、その光物性の理解と応用が研究の主要なステップとなる。この研究は、量子技術と情報デバイスの進歩に寄与する可能性がある。
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研究実績の概要 |
ナノテクノロジーの最終到達点の一つは、原子や分子を自在に配置することである。単層カーボンナノチューブの量子欠陥は単一光子源として光デバイスへの応用に有望であるが、化学反応によりランダムな場所に形成されるという問題があり、回路に組み込むことの障壁になっている。申請者はごく最近、Si基板の溝上に架橋したナノチューブに量子欠陥をほんの数個だけ形成できることを見出した。この手法は光化学反応を行うことから、さらに顕微分光を組み合わせることで、任意の位置や個数の量子欠陥を決定論的に形成できる可能性が高い。そこで本研究では、単一ナノチューブの発光分光により反応をモニターしながら、前駆体とナノチューブとの反応を単一分子レベルで制御することで、サブミクロン精度で任意の場所に単一量子欠陥を形成する。さらに、失活欠陥の存在しない系で量子欠陥に固有の光物性を理解することを目的とする。これにより、光導波路や共振器との結合が容易になり、量子光デバイスの集積化や新機能実証につながる。本研究で用いる化学反応は、近年注目を集めている原子層や他のナノカーボン物質でも報告されている。そのため、本研究により局所的な化学修飾の手法が確立できれば、これらのナノ物質への転用も期待でき、新たな量子機能の探索にもはずみがつくだろう。 もともとナノチューブは通信波長領域の単一光子発生や、Si基板上で直接合成できる点で、既存の半導体技術と親和性が高い。また、本手法はSi半導体プロセスにおけるフォトリソグラフィと類似するので、Siエレクトロニクスのような集積化も将来可能になるだろう。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
高い単一光子発生純度を得るためには、ナノチューブ中央に1個だけ量子欠陥があることが望ましい [ACS Appl. Nano Mater. 3, 682]。そこで、ナノチューブ1本に量子欠陥が1個形成されたことを実証するために、空間領域および時間領域の2つの計測を行なった。まず1つ目の空間領域計測では、量子欠陥の励起イメージングにより個々の量子欠陥を可視化する。2つ目の時間領域計測では、光子相関測定により量子欠陥から単一光子発生が起こることを検証する。共焦点顕微鏡のレーザースポット内に1個だけ量子欠陥があれば、単一光子発生純度が高くなることが見込まれる。上記の2つのアプローチにより、量子欠陥の個数を厳密に決定し、単一量子欠陥であることを実証する。複数の量子欠陥がナノチューブに形成されている場合は、さらに実験条件を微調節することで、目標達成を目指す。これらの測定を一通り終えたため、おおむね順調に進展しているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
量子欠陥に固有の光物性を解明するために、極限まで系をシンプルにした試料作製が望まれてきた。従来のナノチューブ量子欠陥は、失活欠陥と共存するために発光量子効率が制限されている。申請者の励起子拡散シミュレーションによると、失活欠陥1個で最大61%の励起子が発光せずに再結合すると予想される。また、極低温での発光スペクトルには、1つのカイラリティにつき、10本以上のピークが観測されているが[ACS Nano 11,10785]、複数の量子欠陥からのピークなのか、励起子の個々のエネルギー準位に由来するのかなどの帰属が不明なままである。そこで、失活欠陥のない架橋ナノチューブに対して単一量子欠陥を形成し、励起子物性を調査する。量子欠陥を形成する前後で発光スペクトルの強度を比較する。どれだけの割合の励起子が量子欠陥に捕捉されて、不純物準位からの発光に変換されたのかを調べることで、単一の量子欠陥に失活欠陥がないために、励起子が量子欠陥に効率良く捕捉され、発光することが見込まれる。ける発光量子効率が初めて明らかになる。さらに極低温で単一量子欠陥からの発光スペクトルや時間分解発光測定を行うことで、励起子の詳細なエネルギー準位や準位間の遷移ダイナミクスなどの基礎的な励起子物性を解明する。
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