研究課題/領域番号 |
23K23167
|
補助金の研究課題番号 |
22H01899 (2022-2023)
|
研究種目 |
基盤研究(B)
|
配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2022-2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分28020:ナノ構造物理関連
|
研究機関 | 東京工業大学 (2023-2024) 名古屋大学 (2022) |
研究代表者 |
蒲 江 東京工業大学, 理学院, 准教授 (00805765)
|
研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
|
配分額 *注記 |
17,420千円 (直接経費: 13,400千円、間接経費: 4,020千円)
2025年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
2024年度: 4,030千円 (直接経費: 3,100千円、間接経費: 930千円)
2023年度: 4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
2022年度: 7,150千円 (直接経費: 5,500千円、間接経費: 1,650千円)
|
キーワード | 遷移金属ダイカルコゲナイド / ヘテロ構造 / モアレパターン / 発光デバイス / 歪み効果 / 電解質 / 発行デバイス |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では、新奇原子層物質である遷移金属ダイカルコゲナイドのヘテロ構造に生じるモアレパターンを、新たなデバイス機能発現の自由度とみなし、歪み効果を用いたモアレ構造の自在制御技術を構築することで、新しい発光・受光機能を有する量子光機能デバイスの創製を目指す。
|
研究実績の概要 |
本研究の目標は、原子層ヘテロ構造に生じるモアレパターンを新たなデバイス機能発現の自由度とみなし、モアレ構造を外場操作(回転角と歪み)により連続制御する技術を構築することで、新しい発光・受光機能を有するデバイス(オプト・ツイストロニクス)の実現を目指す。具体的には、柔軟な基板上に遷移金属ダイカルコゲナイド(TMDC)による回転積層ヘテロ構造を作製し、機械的変形を行うことで任意のモアレパターン制御を行う。これにより、モアレポテンシャルに閉じ込められた励起子の次元性を連続的に変調可能となり、モアレ励起子の量子状態及び偏光自由度を機能化した発光・受光デバイスの作製を目的とする。 この目的に対し本年度は、(1)歪みを用いた原子層ヘテロ構造作製技術の構築と、(2)歪み効果を導入したモアレパターンの制御・観測技術の構築を行った。以下、項目ごとに示す。 (1)歪みを用いた原子層ヘテロ構造作製技術 原子層ヘテロ構造を柔軟な基板上に作製し、基板を変形することで積層構造に歪み効果の導入を行った。歪み効果は顕微分光測定(PL、ラマン、第二次高調波)により評価した。その結果、ヘテロ構造において歪みを印加すると、層間において歪み分布が代わる結果が得られた。加えて、歪みによる層間励起子の変調を示唆する結果も観測した。 (2)歪み効果を導入したモアレパターンの制御・観測技術 上述の歪み導入したヘテロ構造において、ピエゾAFMによるモアレパターンの直接観測をを行った。その結果、歪み任意に変調することでモアレパターンの連続的な制御に成功し、特殊な対称性や次元性を有するモアレ超格子の作製を可能にした。本年度確立した構造制御及び観測評価手法を基に、今後モアレパターン制御による新たな量子機能光デバイスの実現を目指す。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本年度は、研究提案全体となる歪みによるモアレ制御技術と観測評価技術の基盤を構築した。特に、ヘテロ・モアレ構造への歪み効果導入と制御は、世界的に見ても前例のない取り組みであり、先行例や技術的な参考文献が皆無な状態であった。また、モアレパターンの観測技術も一般的に大型の真空・顕微鏡設備が必要とされ、提案する手法との両立は容易ではない状況であった。これに対し、本年度はモアレ構造への歪み導入・制御技術を独自の手法により確立することができた。また、モアレパターンの観察評価手法も、常温常圧下で測定可能なピエゾAFMを導入することで、歪みによる作製技術と観測を両立可能な実験系を構築した。これにより、実際のモアレパターンの連続変調や、既存手法では実現できないような特殊な次元性・対称性を有するモアレ構造の作製にも成功した。以上から、本年度の成果は、今後の物性評価及びデバイス作製の根幹をなし、本手法の構築により研究提案の達成がより一層見込まれる状況となった。
|
今後の研究の推進方策 |
前年度の構築した歪みによるモアレ制御技術を基に、様々な歪み効果を導入した遷移金属ダイカルコゲナイド(TMDC)ヘテロ・モアレ試料において、モアレポテンシャル変化と電子構造変化及び光学特性変化の相関を解明する。 特に、歪み制御したモアレ試料において光励起発光分光測定を導入し、モアレ励起子の光学・偏光特性及びその歪み依存性を調べる。例えば、1次元モアレポテンシャルにおいては、モアレ周期の方位に依存した偏光発光が期待でき、歪みにより任意の直線偏光を発光・受光するデバイス機能が創出可能となる。また、TMDCは特異な電子構造(バレー分極)を有しており、励起子形成のスピン選択則に起因した円二色性を有することが知られている。二次元のモアレポテンシャルに閉じ込められたモアレ励起子は、バレー分極に起因した円偏光発光が生じ、ポテンシャル深さ等によりその二色比の制御も理論予測されている。したがって、歪み制御によりモアレポテンシャルの深さ・周期を変調すれば、モアレ励起子の円偏光発光及びその円二色比を制御可能であると考えられる。さらに、歪み強度を増大させ、その方位も最適化すれば、究極的に0次元の量子ドット状のモアレポテンシャルが実現でき、スピン選択性を有する単一光子発光も期待できる。以上より、偏光分解及び超高感度分光測定系を構築することで、モアレパターン変調による発光特性の解明を行う。また、モアレパターン制御と光学特性の相関については、理論計算による検証も行う予定である。さらに、モアレパターン変調に起因した電子構造変化は角度分解光電子分光等の測定により直接的な可視化も試みる。以上の、顕微・分光評価と理論検証を組み合わせ、特殊なモアレパターンに起因した光物性に関して実験・理論両面から系統的な理解を行う。以上より、TMDCモアレ構造の自在制御を活かした量子光機能デバイス創出を目指す。
|