研究課題/領域番号 |
23K23170
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補助金の研究課題番号 |
22H01902 (2022-2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2022-2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分28030:ナノ材料科学関連
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研究機関 | 山形大学 |
研究代表者 |
横山 大輔 山形大学, 大学院有機材料システム研究科, 准教授 (00518821)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
12,220千円 (直接経費: 9,400千円、間接経費: 2,820千円)
2024年度: 2,600千円 (直接経費: 2,000千円、間接経費: 600千円)
2023年度: 7,020千円 (直接経費: 5,400千円、間接経費: 1,620千円)
2022年度: 2,600千円 (直接経費: 2,000千円、間接経費: 600千円)
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キーワード | ナノ相分離 / 非晶質 / 非平衡 / 屈折率制御 / 有機EL / ナノポーラス |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では、非平衡の分子凝集プロセスである真空蒸着により物性が極めて大きく異なる2つの材料を非晶質膜として混合堆積させ、その相分離構造をナノサイズで制御して新たな光学物性を有する薄膜を創出することを目指す。さらに、それらの膜を有機ELデバイスへと応用し、飛躍的な光取り出し効率の改善をねらう。互いに相溶性の低い2材料の組み合わせでナノ相分離構造を精密かつ広範囲に制御する手法を新たに開拓し、新規な物性を発現するための非平衡混合系の学術的基盤を築く。
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研究実績の概要 |
前年度(R4年度)は、非晶質有機半導体材料とフッ素系絶縁樹脂との組み合わせを用いて混合膜のナノサイズ相分離構造の制御を進め、さらにその混合膜のフッ素系絶縁樹脂を選択溶解することで、超低屈折率ナノポーラス有機半導体薄膜の創製に成功し、その薄膜を導入した有機ELデバイスの光取り出し効率が約1.4倍向上することを実証した。しかしながら、経時によるナノポーラス構造の崩れが顕著であるため、R5年度はまず当初より予定していた研究実施計画に基づき、蒸着速度・成膜基板温度によるナノ相分離構造の制御を進めた。その結果、蒸着速度が遅いほど、あるいは、成膜基板温度が高いほど、ナノ相分離の構造周期は増大し、フッ素系絶縁樹脂を選択溶解した際のナノポーラス構造の崩れを抑えられることが示された。さらに、光架橋性の非晶質有機半導体を用いて光架橋を行うことで、フッ素系絶縁樹脂の選択溶解後における非晶質有機半導体ナノポーラス構造の崩れを抑える施策を試みた。光架橋性非晶質有機半導体材料としては正孔輸送材料「OTPD」を用い、その膜に光架橋開始剤を微量ドープした薄膜を作製して成膜後に光架橋することをねらったが、光架橋開始剤を安定に真空蒸着することができず、OTPDでは当初のねらいを実現することが困難であることが明らかとなった。 また、上記の研究と並行して、非晶質有機半導体材料と混合する新たな材料系として無機フッ化物を選び、新規な低屈折率電子輸送層の開発を試みた。非晶質電子輸送材料「TPBi」と無機フッ化物LiFの共蒸着による混合により、膜の屈折率は1.55(@600 nm)にまで低減し、炭酸セシウムのドープにより導電性もある程度保てることを示した。光学シミュレーションによりその膜を導入した有機ELデバイス構造を最適化し、実際にデバイス作製・測定を行い、1.28倍の光取り出し効率の向上を実証した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
前年度(R4年度)において本年度(R5年度)以降に実施予定だった「ナノポーラス超低屈折率膜の有機ELデバイス応用」を先行的に実施し、有機ELデバイスの光取り出し効率向上の実証を推し進めることができており、加えて本年度では新たな組み合わせの材料系(非晶質有機半導体材料と無機フッ化物材料)を用いて新規な低屈折率電子輸送層の開発および有機ELデバイス光取り出し効率向上の実証に成功しており、その点は当初の計画は順調に進展を見せている。 しかしながら、当初に計画していた「光架橋性材料を用いたナノポーラス膜の構造強化」については、光架橋開始剤のドープが困難であることが明らかとなり、現状のところその実現に向けて良好な結果は得られておらず、デバイスとしての構造安定性を十分に高めるための方法を見出すには至っていない。次年度以降、光架橋性非晶質有機半導体材料を用いた検討をさらに推し進め、当初の計画の実現可能性を精査することを予定している。また、これまでの研究成果に関する対外発表・論文化(投稿中)を早期に進める必要がある。 以上を総合的に見て、研究は「やや遅れている」とした。
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今後の研究の推進方策 |
R6年度の重要課題としては、非晶質有機半導体材料とフッ素系絶縁樹脂材料との共蒸着膜における相分離周期構造の制御、および、光架橋性材料を用いたナノポーラス超低屈折率膜の構造強度の向上が挙げられる。前者については、前年度までの研究成果を踏まえ、蒸着速度を下げる、あるいは成膜基板温度を上げて両材料の混合膜を作製し、ナノ相分離の構造周期を増大することで、ナノポーラス化した際の構造強化を図る。この検討を通じ、非平衡化での非晶質相分離構造形成の基礎的な知見を獲得する。後者については、光架橋性の非晶質有機半導体材料として開始剤を必要としない「VNPB」を用い、フッ素系絶縁樹脂材料との共蒸着膜における光架橋反応進行および構造強化について可能性を検討する。過去にVNPBと類似する材料を用いた研究において、蒸着後の架橋反応の進行とそれに伴う溶剤耐性の向上が報告されており、VNPBにおいても同様の特性向上とナノポーラス構造の強化を期待することができる。 さらに、これらの施策によって構造が強化されたナノポーラス超低屈折率有機半導体薄膜を実際の有機ELデバイスに導入し、光取り出し効率の向上およびデバイス耐久性の向上を実証する。光学シミュレーションも用い、超低屈折率膜に最適なデバイス構造を設計し、光取り出し効率を最大限に増大させる。 また、上記の一連の研究と並行し、本研究においてR5年度に新たに見出された「非晶質有機半導体材料と無機フッ化物の混合による低屈折率電子輸送層」の開発も進める。低屈折率の無機フッ化物各種を用い、有機ELデバイスの光取り出し効率の向上と電気特性の維持とを両立しうる材料混合系を見出し、新たな発光効率向上指針につなげることを目指す。
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