研究課題/領域番号 |
23K23176
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補助金の研究課題番号 |
22H01908 (2022-2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2022-2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分28030:ナノ材料科学関連
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
長久保 白 大阪大学, 大学院工学研究科, 助教 (70751113)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
17,160千円 (直接経費: 13,200千円、間接経費: 3,960千円)
2025年度: 4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2024年度: 4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2023年度: 4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2022年度: 4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
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キーワード | エレクトロマイグレーション / リアルタイムモニタリング / ピコ秒超音波法 / 非同期計測 / ナノ力学特性 / 欠陥 / 拡散 / ナノ欠陥 / モニタリング / 弾性定数 |
研究開始時の研究の概要 |
集積回路の小型化に伴う電流密度の増加はエレクトロマイグレーション (EM) という電子による原子拡散現象の問題を引き起こし、EMに伴う欠陥と電気特性の関係は盛んに研究されてきた。しかし材料の力学的特性はEMのメカニズムと破断過程を支配する重要な特性であるにもかかわらず実験的研究が進んでいない。 そこで本研究では独自に開発した非同期ピコ秒超音波法によるリアルタイム弾性率計測法を用いて、電流を印可しながら単一ナノ細線の弾性率をモニタリングする。これによってEMに伴う欠陥の生成が力学特性及ぼす影響を解明し、力学特性という新たな観点からEMに伴う動的な欠陥生成プロセスの理解を深化させる。
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研究実績の概要 |
本年度は単線Al系合金に高密度電流を流し、破断までの寿命時間の計測、10-100 GHz波超音波を用いた非破壊その場リアルタイム診断による欠陥生成過程のモニタリングを行った。まず実験条件を精査するために室温環境下で電流印加試験を行い、特定の厚さ・幅・長さのAl合金ナノワイヤに対して27-40 MA/cm2の電流印加を行いつつ、ピコ秒超音波法により作成したプログラムを用いて電流印加による反射率変化を非接触・非破壊で計測した。まず本計測系が24時間近くに及ぶ実験においても安定的に概ね一定の振幅の信号を取得することができることを実験的に立証した。一方、電流を印加すると電気抵抗はほぼ変化が現れない時点から超音波の第1・第2エコーの振幅や熱拡散速度が低下することを発見した。特に高周波成分の方が減衰が大きく、これは内部に微細な欠陥や析出物が生じたことを反映している。また一部の試料ではエコーが減衰する過程でワイヤ全体が振動するような信号に変化し、またもとのようにエコーが減衰したような波形が現れた。これは内部の欠陥と同時に界面での剥離が起こったことを示唆しており、超音波計測が内部での欠陥生成を高感度で検出できることを示している。 また破断する前に電流印可を中断し、電流によるダメージを受けた金属細線内部のTEM観察も行った。電流印可に伴う表面・内部の欠陥を直接観察することで、実際の内部構造の変化と超音波計測の結果を比較することができるようになった。これら統合的な計測は超音波によって得た結果を考察するうえで欠かすことができない。TEM観察の結果、電流印加によって結晶粒や内部構造に変化が現れている様子を確認することができ、今後その相関を評価する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本年度は計測法をさらに改善することによって幅1000 nmの細線中においても超音波エコーが2往復するまで信号を取得することができるようになった。その結果、昨年度までは評価することができなかった音速の変化や正確な音響減衰についても評価することができるようになり、エレクトロマイグレーションがナノワイヤの特性に及ぼす影響についてさらに詳細をつかめるようになった。また透過型電子顕微鏡観察も想定以上に順調に進行し、内部構造の重要な情報を数多く取得することができた。これらは当初の計画以上に順調に進行しているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
当面はより幅の細いワイヤに対する計測や非同期ピコ秒超音波法を用いたモニタリングを進める。現在は幅1000 nmのワイヤに対する計測を行っており、そのワイヤ中の結晶粒径は約150 nm程度である。したがってワイヤの面内には多数の粒が存在している状態であり、その粒界に沿った原子拡散が支配的であると考えられる。しかし現代の先端半導体は幅3-10 nmオーダーであり、結晶粒界の影響が大きく異なる。そこでまずは結晶粒よりも幅が小さくなる100 nm程度の細線を対象に欠陥生成過程を超音波でモニタリングする。またこれまではまずは高精度な実験を行うために同期型ピコ秒超音波法計測を行ってきたが、より短時間でより詳細に計測するために非同期ピコ秒超音波法を用いた計測に取り組む。
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