研究課題/領域番号 |
23K23179
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補助金の研究課題番号 |
22H01911 (2022-2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2022-2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分28030:ナノ材料科学関連
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研究機関 | 北海道大学 (2024) 東京都立大学 (2022-2023) |
研究代表者 |
蓬田 陽平 北海道大学, 電子科学研究所, 准教授 (90647158)
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研究分担者 |
柳 和宏 東京都立大学, 理学研究科, 教授 (30415757)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
17,030千円 (直接経費: 13,100千円、間接経費: 3,930千円)
2024年度: 3,640千円 (直接経費: 2,800千円、間接経費: 840千円)
2023年度: 8,060千円 (直接経費: 6,200千円、間接経費: 1,860千円)
2022年度: 5,330千円 (直接経費: 4,100千円、間接経費: 1,230千円)
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キーワード | ナノチューブ / 無機ナノチューブ / 遷移金属ダイカルコゲナイドナノチューブ / 構造制御 / 対称性制御 / 大量合成 / ヘテロナノチューブ / ヤヌスナノチューブ / 遷移金属ダイカルコゲナイド |
研究開始時の研究の概要 |
層状化合物を筒状にした無機ナノチューブ(INT)は、カイラル構造に由来した巨大なバルク光起電力効果や、1次元構造に由来した高い水素発生触媒性能が期待されており、脱炭素社会に向けて重要な太陽電池材料・燃料電池材料の有力候補となり得る。 本研究では、これまで開発してきたINTの合成技術を進化させ、これまでに無い複数組成かつ小径のINTの大量合成技術を開発する。さらに、得られた小径INTの構造・組成の自由度を駆使し、そのバルク光起電力効果・水素発生触媒性能を解明する。本研究を通して、小径INTの生産基盤を構築し、応用の可能性を見いだす。
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研究実績の概要 |
本研究は、これまで開発してきた無機ナノチューブ(INT)の合成技術を進化させ、これまでに無い複数組成かつ小径のINTの大量合成技術を開発すること、そして得られた小径INTの構造・組成の自由度を駆使し、バルク光起電力効果・水素発生触媒性能等を解明することを目的としている。2022年度は、その目標達成に向けて、①大量合成に適したINT合成技術の開発、②異なる遷移金属・カルコゲンを用いたINTの組成の制御、③INTの触媒応答および物性の解明に取り組み、以下を実現した。 ①大量合成に適したINT合成技術の開発:気相合成によりINTの前駆体である酸化タングステンナノワイヤをシリコン基板上に形成し、絶縁体基板上に転写した後に硫化することによって、高品位かつ小径のINT(直径10 nm程度)を得る合成技術を実現した。さらに、前駆体合成を絶縁体基板上で行えるように工夫し、前駆体合成からNT合成までシームレスに行える合成技術に改良した。 ②異なる遷移金属・カルコゲンを用いたINTの組成の制御:①で合成した小径のWS2-NTを鋳型として、その外壁面にMoS2を形成することによって、複数の組成のINTが同軸上に積層したMoS2/WS2ヘテロNTを実現した。さらに、WSe2-NTからWSSeヤヌスNTへの変換を可能にするINTの組成制御を実現した。 ③INTの触媒応答および物性の解明:HOPG基板上に合成したWS2-NTを用いて電気化学セルを形成し、その水素発生触媒性能を測定した。空間分解が可能な走査電気化学顕微鏡を用いて、形状観察と電気化学測定を同時に行い、INTからの水素発生反応を分離することに成功した。また、小径のWS2-NTの光学特性を明らかにし、小径のINTに由来する発光波長の変調を見出した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本研究では、これまでに無い複数組成かつ小径のINTの大量合成技術を開発すること、得られたINTのバルク光起電力効果・水素発生触媒性能等を解明することを目的としている。2022年度は、その目的達成に向けて、①大量合成に適したINT合成技術の開発、②異なる遷移金属・カルコゲンを用いたINTの組成の制御、③INTの水素発生触媒能の測定に取り組み、当初の目標を十分に達成することができた。 ①に関しては、これまでの液相合成ナノワイヤを用いたに比べて、直径の低減を達成した。液相合成前駆体に比べて、ナノワイヤからナノチューブへの変換が容易であり、幅広い温度領域でNTへの変換が可能な長所を有する。これは、温度等の不均一性がより深刻に影響し得る大量合成により適していると考えられ、当初の計画以上の高品位試料の合成が期待される。 ②に関しては、ヘテロNTの合成は計画通りの進展であるが、ヤヌスNTの合成は、計画段階の想定には無かった新たな発見である。 ③に関しては、TMDC-NTの触媒性能評価は計画通りに進展している。一方、小径INTにおいて観察された発光波長の変調は、①により小径かつ高品位なINTが得られたことで実現可能になったと考えており、当初の計画には無い進展である。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、本年度開発した気相合成前駆体を用いたINT合成のスケールアップを行う。ナノワイヤ前駆体の品質を保ちながらスケールアップ可能な合成系を構築し、高い収量でナノワイヤを得る条件を探索するとともに、その直接硫化によりINTを大量合成する技術開発を目指す。さらに、得られたINTの分離精製や物性・触媒性能の評価を進める。得られたINTの物性および触媒性能をバルクや二次元のTMDCと比較し、小径INTで期待される物性・触媒性能の変調を実証する。また並行して、バルク光起電力効果測定のためのナノチューブ一本のデバイス作製を進める。
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