研究課題/領域番号 |
23K23180
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補助金の研究課題番号 |
22H01912 (2022-2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2022-2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分28030:ナノ材料科学関連
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研究機関 | 大阪公立大学 |
研究代表者 |
野内 亮 大阪公立大学, 大学院工学研究科, 准教授 (70452406)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
17,030千円 (直接経費: 13,100千円、間接経費: 3,930千円)
2024年度: 1,950千円 (直接経費: 1,500千円、間接経費: 450千円)
2023年度: 12,350千円 (直接経費: 9,500千円、間接経費: 2,850千円)
2022年度: 2,730千円 (直接経費: 2,100千円、間接経費: 630千円)
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キーワード | 原子層半導体 / エッジ状態 / エッジ終端化 / ダングリングボンド / フェルミ準位ピニング / 二次元材料 / 二硫化モリブデン / 電界効果トランジスタ / 閾値電圧シフト / 表面吸着効果 |
研究開始時の研究の概要 |
従来のシリコン等の3次元半導体と違い、面内で結合が閉じた2次元構造を有する原子層半導体の場合、完全結晶では表面にダングリングボンドが無いため、ダングリングボンドの影響が軽視されてきた。しかし、研究代表者は、端(エッジ)自体は1~数原子の幅でしかないとしても、エッジのダングリングボンドがデバイス特性に及ぼす影響はマイクロメートルスケールに渡ることを見出し、エッジに局在する電子状態(=エッジ状態)の低減の必要性を明らかにした。本研究は、原子層半導体のエッジ状態を低減するためのプロセスの開発や、当該プロセスがデバイス動作へ及ぼす影響の解明を行うことにより、原子層半導体デバイスの性能向上を成し遂げる。
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研究実績の概要 |
従来のシリコン等の3次元半導体と違い、面内で結合が閉じた2次元構造を有する原子層半導体の場合、完全結晶では表面にダングリングボンドが無いため、ダングリングボンドの影響が軽視されてきた。しかし、エッジのダングリングボンドがデバイス特性に及ぼす影響はマイクロメートルスケールに渡り得るため、エッジに局在する電子状態(=エッジ状態)の低減手法の確立が必要である。本研究では、高集積化技術との親和性が高いエッジ選択的終端化プロセスを採用し、エッジ選択的終端化がデバイス特性に及ぼす影響の包括的理解を目指している。
昨年度までに、代表的な原子層半導体である二硫化モリブデンを用いた電界効果トランジスタに関し、フッ素による終端化効果を調査していたところ、特異な閾値電圧スイッチング現象を見出した。これは、ドレイン電圧の値に応じて電流が流れ始めるのに必要なゲート電圧値(閾値電圧と呼ばれる)がシフトするというものである。ドレイン電圧印加に伴い閾値電圧がシフトする現象はこれまでにも知られていたものの、そこから予想される閾値電圧シフト量よりも非常に大きく、新たなメカニズムの提案が必要であった。本年度は、当該現象が大気中水分子に起因すること、二硫化モリブデン上へ特定の分子種を堆積した際に生じること、などを明らかにした。本現象における水分子の吸着サイトとしては、第一にエッジが考えられるため、適切なエッジ終端化処理プロセスの確立のためにも考慮すべき視点を得たものといえる。また、別の観点からいえば、外来分子の新規なセンシング原理としての応用展開が期待される現象でもあるため、本研究の本来の目的を超えた成果と捉えることができる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では、原子層半導体のエッジ状態低減による原子層デバイスの性能向上を成し遂げるため、高集積化技術との親和性が高いエッジ選択的終端化プロセスの確立とエッジ選択的終端化効果の包括的理解を目指している。その目的のもとフッ素終端化効果について調査していた中で、二硫化モリブデン電界効果トランジスタにおいて、従来のメカニズムとは異なる特異な閾値電圧シフト現象を見出した。
適切なエッジ終端化処理プロセスを確立するためには、まず、終端化処理などに起因して出現する現象を洗い出すことが肝要である。新たに見出したこの閾値電圧シフト現象は、その最たるものといえ、目的達成のための重要な一歩である。本年度は、この新規現象のメカニズム解明につながる基本的データを揃えたという点で、年度初めの目的通りの進展を得ている。また、本現象は新規な外来分子センシングへの応用展開も期待され、本研究課題の当初の目的を超えた波及性を有する可能性もある。以上を総合し、この評価とした。
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今後の研究の推進方策 |
本研究の目的のもとフッ素終端化効果について調査していた中、二硫化モリブデン電界効果トランジスタにおいて、特異な閾値電圧シフト現象を見出した。適切なエッジ終端化処理プロセスを確立するためには、まず、終端化処理などに起因して出現する現象を洗い出した上で、そのメカニズムを正しく理解することが肝要である。今年度には、本現象が再現される条件を調査し、特定の表面修飾層を堆積させた際に高湿環境下で得られることを突き止めている。
そこで次年度は、この現象の詳細解明のための調査を引き続き行う。具体的には、表面堆積層や環境中分子の構造上の特徴を捉えた上で、系統的に分子種を変えた調査を行う。閾値電圧シフト量の大小と分子種パラメータの関係について明らかにすることで、当該現象の詳細なメカニズムを同定する。また、トランジスタのチャネルとなる二硫化モリブデン薄片の大きさや厚さといった構造パラメータに対する相関も見ることで、環境中分子が薄片中のどこに作用しているのかについても併せて考察する。現時点では薄片のエッジへの吸着が強く疑われる状況であるから、エッジ終端化処理が本現象に及ぼす影響も大きいと考えられる。閾値電圧シフト現象を積極的に利用したいのか発現しないようにしたいのか、という視点からもエッジ終端化処理を捉え、目的に応じたエッジ終端化プロセスの開発を行っていきたい。
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