研究課題/領域番号 |
23K23183
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補助金の研究課題番号 |
22H01915 (2022-2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2022-2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分28030:ナノ材料科学関連
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研究機関 | 関西大学 |
研究代表者 |
川崎 英也 関西大学, 化学生命工学部, 教授 (50322285)
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研究分担者 |
山本 健 関西大学, システム理工学部, 教授 (10370173)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
16,380千円 (直接経費: 12,600千円、間接経費: 3,780千円)
2024年度: 3,640千円 (直接経費: 2,800千円、間接経費: 840千円)
2023年度: 3,510千円 (直接経費: 2,700千円、間接経費: 810千円)
2022年度: 9,230千円 (直接経費: 7,100千円、間接経費: 2,130千円)
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キーワード | 超音波キャビテーション / 熱触媒 / ワイドバンドギャップ半導体ナノ粒子 / 水素発生 / 有物分解 / 超音波 / 超音波触媒 / ZrO2ナノ粒子 / 活性酸素 / 半導体ナノ粒子 / 有機物の完全分解反応 / 水の完全分解反応 / ジルコニアナノ粒子 / 金ナノクラスター / 金属ナノクラスター / 光触媒 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では、液体への超音波照射によって生じる高温・高圧(数千℃・数百気圧)キャビテーション気泡をワイドバンドギャップ半導体(ZrO2)ナノ粒子の熱触媒能を発現する熱励起場として活用する。熱励起された半導体ナノ粒子(熱活性化半導体ナノ粒子)の示す強力な酸化・還元力により、有機物の完全分解反応(無機化)と水の完全分解反応(水から水素と酸素を生成)を実現する。その結果、高温・高圧超音波キャビテーションを活用した「熱活性化半導体ナノ粒子の熱触媒」という新しい研究領域の構築が期待できる。
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研究実績の概要 |
本研究では、高温高圧の超音波キャビテーション気泡内で熱励起でき、強い酸化還元力を有する3.0 eV 以上のバンドギャップを持つ半導体ナノ粒子の熱触媒機能を開拓することを目的としている。本年度は,5.0 eV のバンドギャップを持つZrO2 ナノ粒子に注目した。ZrO2の励起には、水銀ランプ等の高エネルギーUVランプを用いて光励起するのが主流だが、環境への負荷が大きく光源としては適していない。本研究では、光照射に代わる手段として超音波キャビテーション気泡で熱励起してZrO2の触媒能を発現させることを目指した。結晶構造の異なるZrO2ナノ粒子(ZrO2 NPs)を調製し、その超音波触媒能 ( ・OH 生成能) が最大となる超音波照射条件を検討した。XRD、 Raman、TEM 測定から ZrO2 NPs (300 ℃焼成) はアモルファス質で約 5 nm 程のシングルナノサイズであった。ZrO2 (550 ℃焼成) は単斜晶と正方晶及び立方晶の混合系であり約 20 nm の粒子サイズを持ち、ZrO2 (900 ℃焼成) は単斜晶で約 80 nm の粒子サイズであった。ZrO2NPs の分散液の6分間超音波 (周波数:450 kHz, 強度:5.0 W) 照射による・OH 生成量を検討した結果、Control (ZrO2無し) と比べて全ての ZrO2 NPsにおいて・OH 生成量が増大した。これによりZrO2 NPsの超音波触媒能が確認された。ZrO2の・OH 生成量はZrO2 (300 ℃焼成) > ZrO2 (900 ℃焼成) > ZrO2 (550 ℃焼成) > ZrO2 (焼成なし)の順となり,特に ZrO2 (300 ℃) は Control と比較して 2 倍以上の高い・OH の生成であることを見出した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
今年度の目標は、高温高圧の超音波キャビテーション気泡内で熱励起して触媒能を示すワイドバンドギャップ半導体ナノ粒子の粒子設計指針を明らかにすることであった。その粒子設計指針として、シングルナノサイズ(粒径~5nm)の粒径でアモルファス質のZrO2 NPsが高い超音波触媒能を有することを明らかにできた。超音波触媒能が最大となる超音波照射条件として、音波キャビテーション気泡の生成因子となる超音波周波数と強度を検討し、最適な超音波照射(周波数:450 kHz、強度:5.0 W)を見出すことができた。他方、ZrO2ナノ粒子の超音波触媒作用による有機物完全分解(無機ガス化)反応のモデル物質として、有機色素(メチレンブルー、メチルオレンジ)と内分泌かく乱物質(ビスフェノール A)の分解反応を計画していたが、次年度の実施を計画している。そのため、研究計画としては、やや遅れている、とした。
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今後の研究の推進方策 |
熱活性化ZrO2ナノ粒子の超音波媒特性として、有機物完全分解反応及び水分解による水素生成を検討する。ZrO2はバンドギャップが5.0 eV (λ=248 nm)と非常に大きく、水を水素と酸素に完全分解できるほど、強力な酸化還元力を有するバンド構造を有している。超音波照射条件とZrO2ナノ粒子は、2023年度で最適化された条件を使用する。ZrO2ナノ粒子の熱触媒特性を向上させる助触媒として白金(または金)ナノクラスターをZr2Oナノ粒子に担持する。これにより熱励起で生成した励起電子と正孔の電荷分離を促進し、熱触媒活性の向上を図る。ZrO2の超音波触媒による水の分解反応について、(i)超音波照射による熱励起、(ii)紫外光(222nm)照射による光励起、および(iii)超音波+紫外光、で比較し、光触媒に対する熱触媒の優位性や相乗効果(光励起+熱励起)の可能性を調査する。ワイドバンドギャップ半導体ナノ粒子の熱触媒現象を一般化するため、ZrO2と同じくワイドバンドギャップ(5.0eV)を有する酸化ガリウムナノ粒子についても、超音波媒特性を検討する。
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