研究課題/領域番号 |
23K23184
|
補助金の研究課題番号 |
22H01916 (2022-2023)
|
研究種目 |
基盤研究(B)
|
配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2022-2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分28030:ナノ材料科学関連
|
研究機関 | 国立研究開発法人物質・材料研究機構 |
研究代表者 |
馬 仁志 国立研究開発法人物質・材料研究機構, ナノアーキテクトニクス材料研究センター, グループリーダー (90391218)
|
研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
|
配分額 *注記 |
17,420千円 (直接経費: 13,400千円、間接経費: 4,020千円)
2024年度: 4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2023年度: 5,070千円 (直接経費: 3,900千円、間接経費: 1,170千円)
2022年度: 7,670千円 (直接経費: 5,900千円、間接経費: 1,770千円)
|
キーワード | ナノシート / メンブレン / イオン分離 / イオンデバイス / エネルギー変換 |
研究開始時の研究の概要 |
イオンを選択的に透過させることができる分離膜・メンブレンは海水の淡水化、食塩製造、酸やアルカリの回収、電池の隔膜等に応用される。本研究では、オリジナル金属酸化物と水酸化物ナノシートの幾何学的・化学的特性に着目し、ナノ空間に閉じ込められたイオンおよび電解質を対象としたナノフルイディクスの新領域の開拓を目指し、高度な機能を創成する。具体的には、提案者らが先導的に開拓してきた二次元ナノシートの自己組織化・集積化技術を基盤に、陰イオンの選択的分離と能動的輸送を可能とするラメラ膜、アニオン性とカチオン性ナノシートをヘテロ積層したバイポーラ膜などのイオンデバイスの創出を行う。
|
研究実績の概要 |
層状複水酸化物(LDH)単層ナノシートを再積層することによって再構築されたイオン伝導膜・メンブレンについて、その層間ギャラリー寸法の制御を行った。ろ過法作製したナノシート膜の層間間隔はX線回折実験で1次ピークが約1.15 nmと測定され、ナノシートの結晶学的厚さ0.48 nmを差し引くと、約0.67 nmの層間スペースを有する。このような大きな層間スペースは、単層ナノシートが水とホルムアミド分子を吸着する高い水和状態で再積層することにより形成し、効率的な陰イオン伝導チャネルとして機能する。LDHナノシート膜の層間間隔は、水とエタノールの混合液に一晩浸漬しても明らかな変化が見られなかったが、X線回折1次ピークと3次ピークの強度比は逆転した。これは、浸漬処理により、層間ギャラリーにおける水、エタノール、ホルムアミドの含有量が変化したことが原因と考えられる。続いて、250℃でのアニール処理後、層間間隔は0.89 nmに縮小し、一般的に観察される硝酸イオン型LDHの回折ピーク強度プロファイルと一致する。このアニールした膜を水とエタノールの混合液に再度浸漬すると、層間間隔は1.15 nmに回復したが、1次ピークの強度は再び弱くなった。このような可逆的な変化は、LDHナノシートによって再構築された膜の層間ギャラリーの寸法が、異なる溶媒への浸漬とアニール処理などによって調整できることを示している。 LDHナノシート積層膜の幾何形状を設計し、幾何学的な制約と外部バイアス電圧の印加によるイオン整流挙動を定量的に評価した。その結果、イオン整流挙動は低濃度領域で最も顕著であり、非対称電流―電圧(I-V)曲線から求められた整流比の値は膜の形状非対称性の程度と直線的な関係を示した。さらに、外部バイアス電圧駆動と逆方向のイオン拡散濃度勾配を導入し、濃度差が1000倍達すまで、低濃度から高濃度への一方向能動輸送現象が確認された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
LDHナノシートの再積層によって再構築された膜の形状とイオン伝導チャネル寸法の制御を行うことにより、効率的な陰イオン交換と輸送を実現した。今後、2種類のナノシートの再積層によりバイポーラ膜を作製し、ヘテロ界面効果が介在するナノシートのイオン伝導機構を考察する。
|
今後の研究の推進方策 |
引き続き、高品質の層状複水酸化物(LDH)単層ナノシートを用い、水酸化物イオン(OH-)伝導特性を解明すると同時に、同じく二次元物質である酸化チタンナノシートのプロトン(H+)伝導度を測定する。微細加工技術により絶縁基板の上に吸着した酸化チタンナノシートの上に微小電極を形成し、シート1枚におけるプロトン伝導挙動を評価する。温度と相対湿度を変化させながらイオン伝導度を測定し、温湿度がイオン伝導に及ぼす影響を解析する。また、ナノシートの自己組織化技術に基づき、カチオン性LDHナノシートとアニオン性酸化チタンナノシートのヘテロ接合体を作製するプロセスを考案する。基板の上にLDHナノシートを吸着させ、次に反対電荷を持つ酸化チタンナノシートを累積することによって、2種類ナノシートからなるバイポーラ素子を形成する。シート面内方向、シート面に垂直な方向のイオン(OH-、H+)伝導特性を比較考察するとともに、ヘテロ界面効果が介在するナノシートのイオン伝導機構を明らかにする。さらに、液相集積技術を利用することによって、LDHナノシートと酸化チタンナノシートをヘテロ積層したバイポーラ膜を構築する。作製したバイポーラ膜のイオン選択性と分離・輸送特性を評価し、新規イオンデバイスの開発を進める。このように、ナノシートに基づく二次元ナノチャネル構造イオン伝導膜・メンブレンの創製とその応用可能性を探索し、高効率な水電解システムをはじめとする次世代エネルギー変換のための基盤技術の創出に繋げていく。
|