研究課題/領域番号 |
23K23188
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補助金の研究課題番号 |
22H01920 (2022-2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2022-2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分28040:ナノバイオサイエンス関連
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研究機関 | 兵庫県立大学 |
研究代表者 |
住友 弘二 兵庫県立大学, 工学研究科, 教授 (30393747)
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研究分担者 |
山口 明啓 東洋大学, 理工学部, 教授 (70423035)
湊元 幹太 三重大学, 工学研究科, 教授 (80362359)
部家 彰 兵庫県立大学, 工学研究科, 准教授 (80418871)
大嶋 梓 日本電信電話株式会社NTT物性科学基礎研究所, 多元マテリアル創造科学研究部, 主任研究員 (90751719)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
17,030千円 (直接経費: 13,100千円、間接経費: 3,930千円)
2025年度: 3,250千円 (直接経費: 2,500千円、間接経費: 750千円)
2024年度: 3,640千円 (直接経費: 2,800千円、間接経費: 840千円)
2023年度: 3,640千円 (直接経費: 2,800千円、間接経費: 840千円)
2022年度: 6,500千円 (直接経費: 5,000千円、間接経費: 1,500千円)
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キーワード | 人工生体膜 / ベシクル融合 / 表面増強ラマン / 膜電位 / 表面増強ラマン散乱 / 巨大ベシクル / マイクロウエル / 膜融合 / エンベロープウイルス / イオン透過 |
研究開始時の研究の概要 |
生体内での物質輸送機構を,半導体基板上マイクロウエルを用いて再構築し,ウイルスやエクソソームを始めとする細胞外小胞内容物を高感度に検出可能な人工細胞膜マイクロウエル型バイオセンサーを構築する. そのために,[A]マイクロウエル架橋膜の機能化を行うことで生物小胞を選択的融合機能で識別するバイオインターフェースを構築し,生物小胞内容物をマイクロウエル内に取り込む.さらに,[B]ウエル内腔に取り込んだタンパク質や核酸(DNA/RNA)を基質とする微小反応場と高感度検出機構を構築する事で,単一分子レベルの生物小胞内容物検出を目指す.
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研究実績の概要 |
金ナノ粒子封入による高感度計測に関して,大きく進展した.巨大ベシクル内に金ナノ粒子を封入することで,巨大ベシクルに内包する分子を表面増強ラマン散乱を用いて計測することに成功した.金ナノ粒子の凝集体を封入した場合に,封入したビピリジンからのラマン散乱信号の増強が確認できた.また,巨大ベシクルにグラミシジンなどのカチオンを透過させるイオノフォアを導入することで,巨大ベシクル内で金ナノ粒子の凝集を制御することにも成功した.金ナノ粒子の分散液を巨大ベシクルに封入した状態では,ラマン散乱信号の増強は見られないものの,ナトリウムイオンをグラミシジンの作るチャネルを通して流入させることで,巨大ベシクル内で金ナノ粒子の凝集を引き起こし表面増強ラマン計測に成功した.本成果は,研究課題の中でも高感度計測を実現するためのキーとなる技術である. ベシクルの融合評価については,ガラスキャピラリーを用いた任意の場所への配置,融合,またその動的観察に成功した.負電荷,あるいは正電荷を有する脂質を一定量混入させることで,静電引力によるベシクル融合を制御した.ベシクルの外葉のみが融合したヘミフュージョン状態に安定状態があることが分かった.電荷を持つ脂質を混入した場合,ヘミフュージョン状態では正電荷と負電荷がそれぞれのリーフレットに偏った脂質二重膜が形成されるが,全融合への移行には電場,脂質膜の面内応力等の制御が求められる. マイクロウエル開口部の形状と架橋膜の安定構造(相分離)や,そこでの脂質分子の側方拡散についても新しい知見が得られた.今後,その制御方法の検討につなげていく.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
生体分子の高感度計測を実現するための金ナノ粒子を用いた表面増強ラマン計測において大きく進展した.巨大ベシクル内での表面増強ラマン散乱を確認したことで,本研究計画の中での高感度計測にむけて前進した.特に,脂質膜を透過するカチオンを制御することで,表面増強ラマンを引き起こせたことは大きな一歩である.微小反応場内での表面増強ラマンを制御することで,デバイス化につながる. 架橋膜の機能化とベシクル融合の評価については,ビオチン‐アビジン結合によるベシクルのつなぎ留めに関して継続して研究を進めた.係留ベシクルの動的観察,および,その融合過程の観察に努めた.主に蛍光観察により進めているが,さらなる制御性の向上,時間分解能の向上が求められる. ベシクルの内容物の移送に関しては,まだ効率が十分ではない.融合促進機構の解明等,さらなる効率の向上が必要となる.
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今後の研究の推進方策 |
「架橋膜の機能化とベシクル融合の評価」として,ビオチン‐アビジン相互作用によるベシクルの係留に加えて,DNAオリゴマーによる脂質表面の修飾を試みる.アビジンの凝集によるベシクル融合阻害効果を回避し,またDNAオリゴマーのバリエーションによる表面選択性の向上を図る. 「ベシクル内容物のマイクロウエル内への移動」に関しては,ベシクル融合の促進機構についての検討を進める.脂質分子組成,周辺バッファ溶液の塩濃度およびpH,マイクロウエル開口部の形状等,融合促進機構について検証し効率化を進める.光や電場等の外部刺激も検討する. 「金ナノ粒子による表面増強ラマン」に関しては,巨大ベシクル内の表面増強ラマン散乱の制御性,増強効果について,さらなる効率化,高感度化を図る.金ナノ粒子の凝集過程の制御性を向上し,ターゲット分子のラマン散乱の増強効果をさらに高める.
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