研究課題/領域番号 |
23K23192
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補助金の研究課題番号 |
22H01924 (2022-2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2022-2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分28050:ナノマイクロシステム関連
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
田中 秀治 東北大学, 工学研究科, 教授 (00312611)
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研究分担者 |
塚本 貴城 東北大学, 工学研究科, 准教授 (70646413)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
17,160千円 (直接経費: 13,200千円、間接経費: 3,960千円)
2024年度: 6,240千円 (直接経費: 4,800千円、間接経費: 1,440千円)
2023年度: 5,850千円 (直接経費: 4,500千円、間接経費: 1,350千円)
2022年度: 5,070千円 (直接経費: 3,900千円、間接経費: 1,170千円)
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キーワード | 共振子 / MEMS / センサー / モード局在化 / ジャイロ / 非線形性 |
研究開始時の研究の概要 |
2自由度MEMS共振子のモード制御の方法論として、付加的マスを用いた2+1マスMEMS共振子について研究を行う。理論検討とシミュレーションに基づいてデバイスを試作し、その基礎特性とモード制御性を明らかにする。また、2自由度MEMS共振子のモード制御によって実現できるモード局在化現象についても、その基礎特性を実験的に明らかにし、さらにそのセンシング応用を目指した発展的研究を行う。
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研究実績の概要 |
本研究では、付加的なマスを有する2+1マスMEMS共振子を設計・試作し、実験的評価を行ってきた。この2+1マスMEMS共振子の応用としては振動ジャイロがある。振動ジャイロの高性能化の方法論としてモードマッチングが知られているが、特に周波数変調ジャイロでは、直交2軸の周波数とQ値の両方をマッチングさせる必要がある。周波数は静電アクチュエータにバイアス電圧を印加することによって静電ばね効果を発現させ、容易にチューニングできる。一方、Q値については、チューニング方法はあるものの周波数と独立にチューニングすることは難しい。 本年度は、2+1マスMEMS共振子を用いて周波数とQ値を独立に制御する方法を研究した。ここで新たに提案する方法は、ばねを介してカップリングする2つのマスを有する2自由度振動系に付加的な第三のマスをばねを介して接続し、第三のマスが構成する振動系のスクイーズドフィルムダンピング(SFD)によってQ値をチューニングするものである。普通の2自由度系振動系と同様に第一、第二のマスは、in-phase、out-of-phaseの2つのモードで振動するが、第三のマスの振動は主にin-phaseモードとカップリングする。この共振子を適切に設計し、各ばねを静電的に調整すると、out-of-phaseモードの周波数と振幅比にほとんど影響を与えずに、第三のマスの振動を介してout-of-phaseモードのエネルギーをSFDによって損失させ、Q値を制御できる。 振動ジャイロへの応用を想定し、2+1マスMEMS共振子を直交2軸に配置した共振子を設計、作製し、上述の理論を実験的に実証した。この成果は、直交2軸共振子の周波数とQ値をほぼ独立に制御し、周波数とQ値の両方についてモードマッチングができることを実証したもので、MEMS振動ジャイロの高性能化に資する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2+1マスMEMS共振子は3自由度振動系であるので、3つの固有モードがあるが、3つの固有モードの振動数ω1、ω2、ω3が、2ω1≒ω2≒ω3(一般的にはnω1≒ω2≒ω3、nは整数)となるように2+1マス共振子を設計すると、モード2とモード3は固有振動数が近いので、モード結合し、振動エネルギーをやり取りする。ここで片方のモードにエネルギーが局在化することがモード局在化とも説明できる。モード1は、その固有振動数がモード2、3のそれから大きく離れているが、約1/2(1/n)なので、系の非線形性を介してモード2、3と振動エネルギーのやり取りができるが、この現象をモード制御に適用できる。ここまでの研究によって、以上の現象を実験的に確認し、それが理論と対応することを確認した。 本年度は、2+1マスMEMS共振子の応用を想定し、振動ジャイロに使える直交2軸共振子において、周波数とQ値の独立したチューニングを実証した。この方法は、主たる2つのマスのout-of-phaseモード(ジャイロの利用するモード)の振動エネルギーの一部を、第三のマスが振動するin-phaseモードに流し込み、第三のマスの振動のスクイーズドフィルムダンピングによって消費させ、Q値を制御するものである。これは2+1マス共振子の巧みなモード制御によって可能になる方法である。 従来のMEMS共振子では、共振周波数は制御できるものの、それとおおよそ独立にQ値を制御することはできなかったが、2+1マスMEMS共振子の導入によってこれが可能になった。これはモードマッチングによる振動ジャイロの高性能化に資する重要な成果である。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの成果によって2+1マスMEMS共振子のモード制御の自由度の高さを実証し、さらにその振動ジャイロへの応用可能性を示したものの、問題点も明らかになった。応用上の重要な問題点は、上述のモード制御法が複雑であり、モードマッチング状態、あるいはそれに近いモード局在化状態を実現し、それを安定的に維持する制御が難しいことである。 そこで、次年度の課題として、1つ目にモードマッチングの自動制御の研究を行う。これに最初から2+1マスMEMS共振子を用いるのは複雑過ぎるので、2自由度MEMS共振子を用いる。また、2つ目に発展的研究として、2軸MEMS共振子を用いたモード局在化の基礎特性の把握、およびセンシングへの適用可能性についても研究する。ここで用いる2軸MEMS共振子は、2+1マスMEMS共振子と同様に2軸のカップリングをバイアス電圧によって制御でき、しかも構造が単純である。したがって、モード局在化のセンシング応用を考えたとき、2+1マスMEMS共振子の複雑性を回避する相補的方法になると考えられる。これについては既に実験を始めている。
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