研究課題/領域番号 |
23K23199
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補助金の研究課題番号 |
22H01931 (2022-2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2022-2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分29010:応用物性関連
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研究機関 | 山形大学 |
研究代表者 |
松井 弘之 山形大学, 大学院有機材料システム研究科, 教授 (80707357)
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研究分担者 |
片桐 洋史 山形大学, 大学院有機材料システム研究科, 教授 (40447206)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
16,770千円 (直接経費: 12,900千円、間接経費: 3,870千円)
2025年度: 2,860千円 (直接経費: 2,200千円、間接経費: 660千円)
2024年度: 3,770千円 (直接経費: 2,900千円、間接経費: 870千円)
2023年度: 7,410千円 (直接経費: 5,700千円、間接経費: 1,710千円)
2022年度: 2,730千円 (直接経費: 2,100千円、間接経費: 630千円)
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キーワード | 有機半導体 / ドーピング / 単結晶 / マテリアルズインフォマティクス / 有機トランジスタ / 不純物半導体 / 固溶体 |
研究開始時の研究の概要 |
結晶性有機半導体は最大で約30cm2/Vsの移動度を有し、印刷プロセス適性や柔軟性に優れる反面、不純物ドーピングが難しいという課題がある。申請者らは最近、置換型固溶体を形成する有機半導体を1例発見し、固溶体による有機トランジスタの特性制御に成功した。この成果に基づき本研究では、結晶性有機半導体の高移動度を保ちながら、ゲスト分子によるフェルミ準位制御や機能性付与を可能とする新たな物質群を創出する。そのための分子の組み合わせをハイスループット計算とコンビナトリアル実験により大規模に探索する。更に、得られた不純物ドープ有機半導体結晶を印刷型有機トランジスタに適用し、デバイスにおける有用性を実証する。
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研究実績の概要 |
本年度はまず、ハイスループット計算に基づいて固溶体を形成する有機半導体分子の組み合わせの探索を行った。ホスト分子はDNTTとした。DNTTの結晶構造中の一つの分子を慣性テンソルの主軸が一致するように別の分子に置換し、構造最適化を行った後、エネルギーを計算した。エネルギー計算には古典力場計算と分散力補正密度汎関数理論(DFT)計算の両方を採用した。得られたエネルギーを基に、基底関数重なり誤差(BSSE)を補正しながら、フローリー・ハギンス理論のχパラメータを算出し、χパラメータが0に近いほど固溶体を形成しやすいとして探索した。その結果、実験で固溶体を形成することが既知のゲスト分子DBTTFと比較して、より絶対値が小さなχパラメータを持つ有機分子が112個見つかった。これらの内、市販品かつHOMOが浅いまたはLUMOが深い分子として、ペンタセン、2,8-dimethylanthra[2,3-b:6,7-b']dithiophene、α-quaterthiopheneを購入して共昇華法による固溶体結晶作製を行った。その結果、DNTTとペンタセンの共昇華によって成長した結晶はそれぞれ単体のものと異なる色および粉末エックス線回折パターンを示し、固溶体を形成している可能性が示唆された。2,8-dimethylanthra[2,3-b:6,7-b']dithiopheneとα-quaterthiopheneについては昇華点の違いにより現在のところ混合結晶は作製出来ていない。以上より、本年度はハイスループット計算に基づいてDNTTとペンタセンが固溶体を形成することを予測し、実験によって検証することに成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ハイスループット計算に関しては、ホスト分子が当初予定していた20種ではなくDNTTのみの1種に留まっているが、手法が確立したことから、20種への展開は容易に行えると考えられる。一方、実験による検証に関しては、次年度の計画を先行して進められており、実際にDNTTとペンタセンが固溶体を形成していることが確認された。
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今後の研究の推進方策 |
ハイスループット計算については、可溶性の材料へと適用範囲を拡大する。ホスト分子の候補として、Ph-BTBT-CnやPh-BTNT-Cn、DTBDT-C6などがある。 上記のハイスループット計算のみでは、真に固溶体形成のメカニズムを理解できたとは言えない。そこで、χパラメータと各種要因(分子サイズや形状、配座自由度、化学的親和性、分子内分極、電荷移動など)の多変量解析により、各種要因が固溶性に与える影響を明らかにする。これは、合金分野において知られるヒューム-ロザリーの法則に類するものであるが、無機原子に比べて有機分子は複雑な形状を有すること、配座自由度を有すること、分子内分極を有すること、分子間結合を持たないことなどが決定的に異なる。 実験については、DNTT:ペンタセン固溶体結晶の構造解析を進めるとともに、コンビナトリアル実験により組成が異なる有機半導体混合膜の一括作製および測定に関する装置開発を行う。
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