研究課題/領域番号 |
23K23204
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補助金の研究課題番号 |
22H01936 (2022-2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2022-2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分29010:応用物性関連
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
塩田 陽一 京都大学, 化学研究所, 准教授 (70738070)
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研究分担者 |
荒川 智紀 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 計量標準総合センター, 研究員 (00706757)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
17,680千円 (直接経費: 13,600千円、間接経費: 4,080千円)
2024年度: 3,380千円 (直接経費: 2,600千円、間接経費: 780千円)
2023年度: 4,810千円 (直接経費: 3,700千円、間接経費: 1,110千円)
2022年度: 9,490千円 (直接経費: 7,300千円、間接経費: 2,190千円)
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キーワード | スピントロニクス / スピン波 / マグノン / 人工反強磁性体 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では、人工反強磁性体におけるスピン波スピン流の極性を直接計測・制御することを目的とする。一般的な反強磁性体は、全体として磁化がゼロであるため、磁場への応答が極めて小さく磁化の検出・制御が困難といった課題がある。そこで本研究では、材料・膜厚によって自由に物性設計が可能な人工反強磁性体を研究対象とし、磁化配置を外部磁場によって容易に制御できるという特徴を活かして、人工反強磁性体の最も魅力的な特性の一つである磁気共鳴の回転極性に着目し、異なる極性間のコヒーレント操作やスピン波スピン流と磁壁との双方向制御を実現し、人工反強磁性体を用いたスピントロニクスデバイスの新たな応用可能性を開拓する。
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研究実績の概要 |
磁性体中を伝搬するスピン波はスピン流の担い手になりえることが知られており、このスピン波スピン流は伝導電子スピン流に比べて散逸の小さい伝搬方法である。反強磁性体におけるスピン波は強磁性体にはない回転極性を有するため、スピン波スピン流に「偏光」制御という新たな自由度を追加できることが理論的に提案されおり、実現が期待されている。しかし、これまで反強磁性体における磁化制御の困難さから実験的な実証は手付かずであった。そこで、本研究では反強磁性体に比べて交換結合の弱い人工反強磁性体に着目した。 昨年度はスパッタ製膜したCo/Ni多層膜を磁性層に持つ垂直磁化人工反強磁性体において、円偏波マイクロ波を発生させることができるストリップ導波路を用いることで、磁気共鳴の回転極性を直接計測することに成功した。本年度は、ナノメートルスケールの微細加工を施し伝搬マグノンの回転極性を検出・制御することに成功した。具体的には、人工反強磁性体の細線にマグノン励起アンテナおよびアンテナから数um離れた位置にホール電圧測定用の端子を作製する。マグノンの回転極性はアンテナに入力する励起周波数によって選択的に励起し、ホールクロスに到達したマグノンを逆スピンホール電圧によって検出する。その時、人工反強磁性体の上下を同符号のスピンホール角を持つPtで挟んだ構造を用いることで、マグノンの回転極性を逆スピンホール電圧の符号で検出できるに成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
伝搬するマグノンにおいて反強磁性共鳴モードの回転極性を直接計測することに成功し、順調に研究を進められている。
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今後の研究の推進方策 |
強磁性金属を用いた垂直磁化膜では磁気ダンピング定数(スピン波の散逸)が大きい事から伝搬長が数μmと非常に短く、伝搬スピン波の回転極性を制御するのは難しい事がわかってきた。そこで本年度は強磁性金属より磁気ダンピング定数が小さいことが期待される強磁性絶縁体のイットリウム鉄ガーネット(YIG)に着目し、YIGの垂直磁化膜の作製を行う。そうすることでより低散逸なスピン波の回転極性を活かした研究を実施する。
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