研究課題/領域番号 |
23K23206
|
補助金の研究課題番号 |
22H01938 (2022-2023)
|
研究種目 |
基盤研究(B)
|
配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2022-2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分29010:応用物性関連
|
研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
中山 健一 大阪大学, 大学院工学研究科, 教授 (20324808)
|
研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
|
配分額 *注記 |
17,680千円 (直接経費: 13,600千円、間接経費: 4,080千円)
2024年度: 3,250千円 (直接経費: 2,500千円、間接経費: 750千円)
2023年度: 3,250千円 (直接経費: 2,500千円、間接経費: 750千円)
2022年度: 11,180千円 (直接経費: 8,600千円、間接経費: 2,580千円)
|
キーワード | 有機半導体 / キャリア移動度 / 分子配向 / 縦型トランジスタ / 縦型デバイス |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では、有機ELや有機太陽電池などのサンドイッチ型有機デバイスで重要となる、「縦方向(膜厚方向)キャリア移動度をどこまで上げることができるか?」という課題に、①基板上での分子配向技術、②二次元・三次元伝導に適した材料の探索、③縦方向移動度の評価方法、の3つの視点を軸に実験・計算の両面から探索を行い、縦方向伝導における分子構造―薄膜構造―光・電気物性の階層的関係を理解する学理を確立する。
|
研究実績の概要 |
有機半導体薄膜における縦方向移動度を抜本的に向上させることを目的として、基板上の分子配向制御および三次元的な伝導を示す材料の探索を行っている。 (1)これまでに、当グループで製法を確立した極薄rGO膜のテンプレート層を用いてチオフェンオリゴマーであるα-6T分子の分子配向制御に成功しており、平面ヘテロ接合の有機太陽電池でも、励起子拡散長とキャリア移動度を向上させれば高性能化できる可能性が示された。昨年度はそれらの知見に基づいて、励起子拡散長が長いと報告されているY6をアクセプター分子に用い、種々のドナー材料を探索することにより、平面ヘテロ接合型有機太陽電池としては高い性能を実現した。 (2)極薄膜rGOをソース電極とし、ゲート電圧印加により絶縁層を介してrGOソース電極のフェルミレベルがシフトする現象を使った縦型有機トランジスタ(rGO-VOFET)の開発を行っている。これまでの素子構造がかかえる、引き出し電極部分のrGOの大きな抵抗が全体の電流を制限してしまう問題に対し、引き出し電極のエッジ部分が自動的にアクティブエリアとなる新しい素子構造「セルフアライメント型」rGO-VOFETを提案した。この新しい素子構造において、昨年度の目標として掲げた、p型半導体を用いてトランジスタの動作にも成功した。 (3)究極的な縦方向移動度向上を目指して、結晶構造の全方位に大きな電荷カップリングを持ち三次元的な伝導を示す材料を、結晶構造データベースから探索する手法の開発を行っている。昨年度は、データベース上の結晶構造から、ヘリングボーン、ブリックワーク、などのパッキング様式を自動判定するプログラムを開発し、量子化学計算から予測される電荷カップリングの異方性とパッキング様式の相関性を分析するところまで進め、ダブルヘリングボーン構造が三次元伝導に有利であるという示唆を得た。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度計画した、(1)「rGOテンプレート層を用いた分子配向制御による有機太陽電池の性能向上」については、分子配向制御に由来する励起子拡散長の増大と太陽電池性能を結び付け、結晶構造に基づく計算による新たな材料探索手法を提案するところまで至った。(2)「rGOを電極に用いた縦型トランジスタの高性能化」については、セルフアライメント素子構造の提案により、p型有機半導体材料を含めてさまざまな材料で安定的に評価する手法を確立した。(3)「三次元伝導に適した材料の探索のための手法の開発」については、結晶構造データベースに基づいたパッキング様式を自動判定するプログラムと、大量の結晶構造データから電荷カップリングの異方性を自動的に計算するプログラムを開発し、パッキング様式とカップリングの異方性の相関を系統的に議論できる枠組みが整備された。以上の進捗状況から、おおむね順調に進展していると判断した。
|
今後の研究の推進方策 |
(1)励起子拡散長の長い分子を用いた平面ヘテロ接合有機太陽電池の性能向上 昨年度、励起子拡散長を実験的に求める手法と、量子化学計算に基づいて励起子拡散長とキャリア移動度の予測値を系統的に求める手法を確立した。本年度はこの枠組みに基づいて、結晶構造から平面ヘテロ接合素子に有効な材料を系統的に探索し、平面ヘテロ素子のさらなる高性能化を目指す。 (2)rGO-VOFETの性能向上と周波数特性の評価 昨年度のセルフアライメント構造の提案により、p型有機半導体材料も含めてさまざまな材料を使ってrGO-VOFETを評価できるようになった。そのため本年度は、さまざまな有機半導体材料を用いてrGO-VOFETを作製し、材料のエネルギー絵レベル(注入障壁)やキャリア移動度が性能に及ぼす影響を系統的に明らかにする。また、ほとんど報告例がない、rGO-VOFETの周波数特性の評価を行い、縦型トランジスタの利点である高速応答性を検証する。 (3) 三次元伝導に適した分子を探索するシステムへの機械学習の導入 昨年度、結晶構造からパッキング様式を自動判定し、各結晶軸方向に対する電荷カップリングから求めたキャリア輸送異方性との対応を検証するシステムをPythonベースで開発した。本年度は、さまざまなケースを含むパッキング様式の判定精度を向上させるとともに、パッキング様式とキャリア輸送異方性の関係のデータを蓄積して解釈可能な機械学習にかけることで、三次元伝導に有利な分子がどのようなものであるか、分子構造レベルでの支配因子を明らかにする。
|