研究課題/領域番号 |
23K23217
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補助金の研究課題番号 |
22H01949 (2022-2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2022-2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分29020:薄膜および表面界面物性関連
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研究機関 | 芝浦工業大学 (2024) 東京大学 (2022-2023) |
研究代表者 |
中野 匡規 芝浦工業大学, 工学部, 教授 (70592228)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
17,940千円 (直接経費: 13,800千円、間接経費: 4,140千円)
2024年度: 2,470千円 (直接経費: 1,900千円、間接経費: 570千円)
2023年度: 2,470千円 (直接経費: 1,900千円、間接経費: 570千円)
2022年度: 13,000千円 (直接経費: 10,000千円、間接経費: 3,000千円)
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キーワード | 薄膜・界面物性 / 電界効果デバイス / 二次元物質 |
研究開始時の研究の概要 |
ファンデルワールス(vdW)超構造は、様々な二次元物質を様々なパターンで積層させることで得られる人工の低次元超構造体であり、界面での相互作用や空間対称性などを設計することで、単一物質では得られない物性や機能性を実現することが可能である。本研究では、vdW超構造中のvdWギャップにおける層間配列の自由度に注目した研究に取り組む。研究代表者がこれまでに確立してきた、分子線エピタキシー法によるvdW超構造作製技術と、イオンゲート法による電気化学ドーピング技術を組み合わせることで、様々なvdW超構造への層間イオン導入・配列制御を行い、従来の積層配列制御では得られない物性や機能性の創出を目指す。
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研究実績の概要 |
本研究では、分子線エピタキシー(MBE)法によるファンデルワールス(vdW)超構造作製技術と、イオンゲート法による電気化学ドーピング技術を組み合わせることで、様々なvdW超構造への層間イオン導入・配列制御を行い、従来の積層配列制御では得られない物性や機能性を創出することを目指している。本年度はまずCr3Te4へのLiインターカレーションに取り組み、その磁性を電気的に制御することを試みた。まずはas-grownのCr3Te4薄膜に対して実験を行ったところ、インターカレーションの進行に伴って強磁性転移温度(TC)が室温近傍まで大きく上昇すると共に、磁気異方性が面直から面内へと変化することがわかった。一方、インターカレーションがさらに進行すると、今度はTCがわずかに下降すると共に、磁気異方性が再び面直へと変化する振る舞いが観測された。このようなフェルミ準位の単調なシフトに対する磁性の非単調な変化は、従来の単純な強磁性体では見られないものであり、Cr3Te4特有のバンド構造に起因した新しい現象であると考えられる。以上の成果を論文にまとめて投稿した。次に、CrxNbSe2の一種であるCr1/4NbSe2に注目し、その物性や電子構造の評価を行った。まず電気抵抗やホール係数の温度依存性から、この物質は100 K近傍でフェルミ面の再構成を伴った相転移を示すことがわかった。その一方で、磁化測定や磁気輸送測定などからは、少なくとも2 Kまでは長距離磁気秩序の発達を示唆する結果は得られなかった。また、角度分解光電子分光測定から、この物質はフェルミ準位近傍にフラットバンドを有し、かつこれが顕著な温度依存性を示すことがわかった。その起源については現在検討中であるが、Cr由来の局在スピンとNbSe2由来の伝導キャリアの間の磁気的な相互作用を反映した効果であると考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本年度の目標の一つは、代表的なvdW化合物であるNbSe2のvdWギャップ中に様々な3d磁性イオンを導入・配列させた超構造の構築に取り組み、母物質のNbSe2にはない磁性やトポロジカル物性の開拓を行うことであった。また、別の目標の一つに、様々なvdW超構造への電気化学ドーピングに取り組み、可逆的な電子数制御による新奇物性の開拓を行うことがあった。前述したCr1/4NbSe2エピタキシャル薄膜の作製と物性および電子構造の評価は前者に、Cr3Te4へのLiインターカレーションによる磁性の制御は後者にそれぞれ該当し、当初の目標はある程度達成できたと考えている。その一方で、当初は想定していなかった成果として、Cr1/4NbSe2に真空中で熱処理を施すと強磁性が発現することを発見した点が挙げられる。そのメカニズムについては現在考察中であるが、熱処理による系のキャリア数変化が強磁性の発現に重要な役割を果たしている可能性が考えられる。研究代表者らのこれまでの研究から、Cr3Te4においても真空中での熱処理によって磁性が大きく変化することがわかっており、そのことが、今回のLiインターカレーションによる磁性の制御という成果に繋がったが、Cr1/4NbSe2に対しても今後同様の成果が期待できる。また、これらの研究と並行して、NbSe2の類縁物質であるTaSe2へのCrイオンのインターカレーションにも着手しており、興味深い成果を得つつある。以上のように、本年度は当初の目標を達成するだけでなく、当初は想定していなかった成果(かつ新たな展開への可能性を秘めた成果)を挙げることができており、当初の想定を大きく上回る進展が得られたと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
本年度得られた成果をさらに発展させる。まずはCrxNbSe2の磁性の全容解明を目指す。研究代表者らのこれまでの研究から、Cr1/3NbSe2が強磁性かつトポロジカルに非自明な電子状態を形成することや、Cr1/4NbSe2が低温でバンド構造の変調を伴った強相関電子状態を形成することなどがわかっている。また、Cr1/4NbSe2に真空中で熱処理を施すと系に電子がドーピングされ、それに伴って層間Crが形成する面内超構造のパターンが変化することや、面内強磁性が出現することなどを見出している。今後はこのCr1/4NbSe2にLiインターカレーションを施し、Cr1/4NbSe2における磁性と電子数の相関関係を明らかにする研究に取り組む。また、それと並行してCr1/4NbSe2の表面にLiを少しずつ蒸着しながら低速電子線回折や角度分解光電子分光で面内超構造やバンド構造の変化を明らかにする研究にも取り組み、Cr1/4NbSe2における磁性発現機構の包括的な理解を目指す。さらに、Cr1/3NbSe2へのLiインターカレーションにも取り組み、Cr1/4NbSe2の場合との比較を通してCrxNbSe2における磁性の全容解明を目指す。一方で、母物質や磁性イオンを変化させた物質系の開拓にも取り組む。既にCrxTaSe2のMBE成長に着手しているが、これをさらに発展させ、Cr1/3TaSe2やCr1/4TaSe2の選択合成を実現すると共に、それらの磁性や電子状態を明らかにする研究に取り組む。その上で、真空中での熱処理やLiインターカレーションにも取り組み、CrxNbSe2の場合との比較を通して、CrxTaSe2における磁性の全容解明を目指す。また、磁性イオンを変化させた物質系のMBE成長にも着手し、Cr系との類似点や相違点を明らかにすることで、AxMX2の磁性の包括的な理解を目指す。
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