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ナノ分解能電子分光によるヘテロ界面フォノン輸送解析

研究課題

研究課題/領域番号 23K23227
補助金の研究課題番号 22H01959 (2022-2023)
研究種目

基盤研究(B)

配分区分基金 (2024)
補助金 (2022-2023)
応募区分一般
審査区分 小区分29020:薄膜および表面界面物性関連
研究機関国立研究開発法人物質・材料研究機構

研究代表者

吉川 純  国立研究開発法人物質・材料研究機構, マテリアル基盤研究センター, 主幹研究員 (20435754)

研究期間 (年度) 2022-04-01 – 2026-03-31
研究課題ステータス 交付 (2024年度)
配分額 *注記
16,250千円 (直接経費: 12,500千円、間接経費: 3,750千円)
2025年度: 3,770千円 (直接経費: 2,900千円、間接経費: 870千円)
2024年度: 3,770千円 (直接経費: 2,900千円、間接経費: 870千円)
2023年度: 3,510千円 (直接経費: 2,700千円、間接経費: 810千円)
2022年度: 5,200千円 (直接経費: 4,000千円、間接経費: 1,200千円)
キーワードフォノン / 電子エネルギー損失分光 / EELS
研究開始時の研究の概要

異なる半導体材料同士の界面(ヘテロ界面)を通過する熱の流れの理解と制御が重要になっている。本研究では、熱を運ぶ結晶格子の振動(フォノン)の視点に立ち、どの振動モードでどの波数ベクトル(単位長さあたりの振動の数と振動が伝わる方向)とエネルギーを持つフォノンが、ヘテロ界面においてどれだけの割合で透過、散乱されるか、を実計測で明らかにすることを目指す。そのため、1ナノメートル(10億分の1メートル)の位置分解能で波数分解できる電子分光イメージングによるフォノン計測技術を開発し、温度勾配のなかに置かれたヘテロ界面でのフォノン輸送解析に応用する。

研究実績の概要

本研究では、熱を運ぶ結晶格子の振動(フォノン)の視点に立ち、どの振動モードでどの波数ベクトル(単位長さあたりの振動の数と振動が伝わる方向)とエネルギーを持つフォノンが、異なる半導体材料同士の界面(ヘテロ界面)においてどれだけの割合で透過、散乱されるか、を実計測で明らかにすることを目指す。そのため、1ナノメートル(10億分の1メートル)の位置分解能で波数分解できる電子分光イメージングによるフォノン計測技術を開発し、温度勾配のなかに置かれたヘテロ界面でのフォノン輸送解析法の確立を目指している。2022年度に、散乱ベクトル分解・電子エネルギー損失分光法(EELS)を基軸として、 本研究の基盤技術となる、音響フォノンを用いた室温~300℃域の高精度温度計測技術と、ナノメートルスケール温度分布計測技術、をおおむね確立することができた。これらの成果は音響フォノンを活用した新しい技術であり、世界に先駆けて成功することができた。1,2ナノメートルの高位置分解能で温度が計測できる点で、局所領域の熱輸送を計測・解析する際に重要な技術である。
2023年度は、当初計画に沿って半導体ヘテロ接合ナノワイヤを作製する一方で、主題から少し逸れるが、研究過程で現れた格子欠陥準位や同位体濃縮効果の分光に関して計測・解析を実施した。窒化ホウ素のバンドギャップ内に導入された発光に関わる欠陥準位をEELSで測定することに世界で初めて成功した。半導体内の格子欠陥は、後々フォノン輸送について解析する際に重要になりうる。また、本研究の計測技術の一部を他の研究(エポキシ樹脂の電子照射損傷)にも応用し、学術雑誌に掲載された。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

これまでに下記の(1)(2)を確立した。さらに、現在(3)を中心に取り組んでいる。当初の計画に沿って、おおむね順調に進んでいる。
(1)音響フォノンを用いた室温~300℃域の高精度温度計測技術: ダイヤモンド結晶中の音響フォノンを用いて、フォノンの生成と消失の確率比がボルツマン係数に比例すること(詳細釣り合いの原理)に基づき、室温~300℃の比較的低温域で高精度に温度を測定できることを実証できた。音響フォノンを用いることで、位置分解能が低下する光学フォノンと違って、電子プローブ直径1-2nmの位置分解能で温度測定できることも示した。
(2)ナノメートルスケール温度分布計測技術の開発: ダイヤモンド結晶を微細加工して作製したナノワイヤをMEMSチップ上に固定して、ナノワイヤ両端に電圧をかけて通電することで自己ジュール発熱させた状態で、音響フォノンをEELS計測した。各電子プローブ位置(各ピクセル)の信号/ノイズ比が小さかったため、音響フォノンの生成と消失の確率比を評価するためにピクセル数を積算して位置分解能を落として、ナノワイヤ軸に沿った温度勾配を評価した。1-2nmの位置分解能で温度分布を得るには、各電子プローブ位置の信号/ノイズ比を大きくする必要がある。また、ナノワイヤの伝導電子の経路とフォノンの経路を判定し、ジュール加熱機構を明らかにした。
(3)ヘテロ界面フォノン解析の取り組み:熱の流れあるヘテロ界面近傍でフォノン計測をする技術を開発するため、(1)と同様に、ヘテロ接合結晶体を微細加工して作製した半導体ヘテロ接合ナノワイヤをMEMSチップ上に固定して、ナノワイヤ両端に電圧をかけて通電することで自己ジュール発熱を試みている。現在、電気特性を詳細に調べている。

今後の研究の推進方策

次のステージとして、フォノンの流れを検出し可視化する技術の確立と、ヘテロ界面を横断するフォノン流の解析技術の確立を目指す。具体的には次のように進める予定である。
(1)温度勾配MEMSチップの作製: 温度勾配を制御可能な電子顕微鏡用のMEMSチップを作製する。MEMSチップ上にマイクロヒーターを設置して、微細加工した試料内に温度勾配を発生させる。
(2)フォノン流の検出と可視化技術の開発: 高速電子とフォノンの相互作用を理論的に考察したうえで、温度勾配を持つ試料内での熱励起フォノンの流れの向きと波数と数密度をナノメートルスケールで計測する技法を開発する。半導体ナノワイヤを用いて、ワイヤ軸に沿った熱励起フォノンに着目する。続いて、スペクトルイメージング法で温度と熱励起フォノンの強度の可視化を目指す。
(3)ヘテロ界面を横断するフォノン流の解析技術の開発: (2)の発展として、ヘテロ接合したナノワイヤを用意し、ヘテロ界面を横断するフォノン流の計測・解析技術の確立を目指す。特に界面付近に着目し、フォノンのモードや流れの向き、波数、数密度が界面での反射・透過による変化を検出する。温度勾配の向きによる違いも調べる。

報告書

(2件)
  • 2023 実績報告書
  • 2022 実績報告書
  • 研究成果

    (12件)

すべて 2023 2022

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (10件) (うち国際学会 1件、 招待講演 4件)

  • [雑誌論文] Fast electron damage mechanism of epoxy resin studied by electron energy loss spectroscopy and electron diffraction2023

    • 著者名/発表者名
      Kikkawa Jun、Nii Aoi、Sakaniwa Yoshiaki、Kon Naochika、Sakamaki Marina、Ohashi Touyou、Nita Nobuyasu、Harano Koji、Kimoto Koji
    • 雑誌名

      The Journal of Chemical Physics

      巻: 159 号: 17 ページ: 174708-174708

    • DOI

      10.1063/5.0177019

    • 関連する報告書
      2023 実績報告書
    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Optical and acoustic phonon temperature measurements using electron nanoprobe and electron energy loss spectroscopy2022

    • 著者名/発表者名
      Kikkawa Jun、Kimoto Koji
    • 雑誌名

      Physical Review B

      巻: 106 号: 19 ページ: 195431-195431

    • DOI

      10.1103/physrevb.106.195431

    • 関連する報告書
      2022 実績報告書
    • 査読あり
  • [学会発表] Local temperature measurement in a Joule heated nanowire by probing acoustic phonon using STEM-EELS2023

    • 著者名/発表者名
      Jun Kikkawa, Koji Kimoto
    • 学会等名
      The 20th International Microscopy Congress (IMC20)
    • 関連する報告書
      2023 実績報告書
    • 国際学会
  • [学会発表] ジュール加熱下におけるナノワイヤ内のフォノン分光と温度計測2023

    • 著者名/発表者名
      吉川 純, 木本 浩司
    • 学会等名
      日本顕微鏡学会 第79回学術講演会
    • 関連する報告書
      2023 実績報告書
  • [学会発表] フォノン生成・消滅の電子分光による局所温度計測2023

    • 著者名/発表者名
      吉川 純
    • 学会等名
      第17回電子線応用技術研究会・先端計測技術研究会
    • 関連する報告書
      2023 実績報告書
    • 招待講演
  • [学会発表] STEM-EELSを用いたフォノン分光によるジュール加熱中ナノワイヤの温度計測2023

    • 著者名/発表者名
      吉川 純, 木本 浩司
    • 学会等名
      日本物理学会 2023年春季大会
    • 関連する報告書
      2023 実績報告書 2022 実績報告書
  • [学会発表] 電子顕微鏡を用いたフォノン分光によるナノメートル分解能温度計測2023

    • 著者名/発表者名
      吉川 純, 木本 浩司
    • 学会等名
      NIMS先端計測シンポジウム2023
    • 関連する報告書
      2023 実績報告書 2022 実績報告書
  • [学会発表] STEM-EELSによるフォノン計測2022

    • 著者名/発表者名
      吉川 純
    • 学会等名
      第37回分析電子顕微鏡討論会
    • 関連する報告書
      2022 実績報告書
    • 招待講演
  • [学会発表] Phonon measurements by electron energy-loss spectroscopy2022

    • 著者名/発表者名
      Jun Kikkawa
    • 学会等名
      日本顕微鏡学会学際的顕微研究領域 若手研究部会2022年度シンポジウム
    • 関連する報告書
      2022 実績報告書
    • 招待講演
  • [学会発表] 電子ナノプローブを用いたフォノン分光による局所温度計測.2022

    • 著者名/発表者名
      吉川 純, 木本 浩司
    • 学会等名
      日本物理学会 2022年秋季大会
    • 関連する報告書
      2022 実績報告書
  • [学会発表] Nanometer-resolution phonon spectroscopy using monochromated electron probe2022

    • 著者名/発表者名
      Jun Kikkawa, Takashi Taniguchi, Koji Kimoto
    • 学会等名
      IUMRS-ICYRAM 2022 (The 5th International Union ofMaterials Research Societies International Conference of Young Researchers on Advanced Materials)
    • 関連する報告書
      2022 実績報告書
    • 招待講演
  • [学会発表] フォノン生成・消滅の電子分光によるナノメートル分解能温度計測2022

    • 著者名/発表者名
      吉川 純, 谷口 尚, 木本 浩司
    • 学会等名
      日本顕微鏡学会 第78回学術講演会
    • 関連する報告書
      2022 実績報告書

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公開日: 2022-04-19   更新日: 2024-12-25  

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