研究課題/領域番号 |
23K23232
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補助金の研究課題番号 |
22H01964 (2022-2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2022-2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分29020:薄膜および表面界面物性関連
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研究機関 | 国立研究開発法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
荒川 智紀 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 量子・AI融合技術ビジネス開発グローバル研究センター, 研究員 (00706757)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
17,940千円 (直接経費: 13,800千円、間接経費: 4,140千円)
2024年度: 2,990千円 (直接経費: 2,300千円、間接経費: 690千円)
2023年度: 3,770千円 (直接経費: 2,900千円、間接経費: 870千円)
2022年度: 11,180千円 (直接経費: 8,600千円、間接経費: 2,580千円)
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キーワード | 2次元電子系 / 空洞共振器 / 誘電体共振器 / 円偏波マイクロ波 / 複素伝導度 / 円偏波 / マイクロ波 / 量子ホール効果 / スピン軌道相互作用 |
研究開始時の研究の概要 |
近年、層状物質、酸化物界面、トポロジカル物質の表面など、特異な性質をもった2次元電子系が相次いで報告され、輸送現象の微視的な理解と次世代デバイスへの応用は重要なテーマとなっている。しかし、2次元電子系の輸送現象の研究には、主に直流極限での伝導度測定が利用されるため、電子のダイナミクスに関しては理解が進んでいない。 本研究では、ダイナミクスを直接反映する複素伝導度の革新的な測定手法を開発する。この手法は、非接触に複素伝導度の全成分を測定でき、物質系に依存しない測定を可能にする。さらに、この手法を駆使して、2次元電子系の物理定数の新たな評価法の確立・電子ダイナミクスの解明を行い、その有用性を実証する。
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研究実績の概要 |
通常、2次元電子系の輸送現象の研究では、直流極限での伝導度 (縦伝導度とホール伝導度)を測定する。しかし、この静的な手法では、電子のダイナミクスに関する情報が平均化によって消えてしまう。本研究の目的は、マイクロ波領域において複素伝導度の全成分を同時に測定できる非接触な複素伝導度の測定手法を開発し、電子ダイナミクスを研究する。特に、円偏波空洞共振器法と円偏波誘電体共振器法の二種類の手法を開発し、ほぼすべての2次元電子材料に適応できる手法として確立する。 本年度は、円偏波空洞共振器を用いてInGaAs/InAlAs界面形成された2次元電子系の複素伝導度の周波数特性を測定し、非自明な有効磁場の存在を説明するためのモデルの検討を開始した。円偏波誘電体共振器法の改良を行い、スタンプ法によってサファイア基板上に転写した劈開グラフェンの複素伝導度の検出を試みた。誘電体共振器の改良では、励振用アンテナとの結合を最適化することでQ値を改善し、誘電体の形状を最適化することで不要な不純物スピンのESR信号を低減することに成功した。 本測定手法では、低温環境下において左右の円偏波モードを独立に測定することで、4自由度の情報(左右の共振周波数と半値幅の変化)が得られる。本年度は、この測定をより高精度に行うため、独自の低温用校正手法を開発し、論文として発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
円偏波誘電体共振器法の開発では、励振用アンテナとの結合を最適化することでQ値を改善し、また、不純物スピンのESR信号の円偏波依存性から十分な円偏波純度が実現されていることが確認できた。ただし、大きさ数10 umの劈開グラフェンからの信号を検出するには、さらに測定感度を上げる必要がある。一方で、低温環境下における独自の校正手法を確立したため、今後はより高精度な円偏波分解測定が可能となる。
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今後の研究の推進方策 |
円偏波誘電体共振器法の改良とフロッケ状態の探索を並行して推進する。円偏波誘電体共振器法によって劈開グラフェン(数10ミクロン程度)の信号を検出するため、誘電体形状をさらに工夫し、電磁界モードの電場を試料近傍に集中させることで相互作用を大きくする。一方、誘電体共振器のTE011モードを強く励振し、GaAs/AlGaAs界面の2次元電子系に垂直振動磁場を印加した状態で複素伝導度の測定を行い、フロッケ状態の探索を行う。
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