研究課題/領域番号 |
23K23233
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補助金の研究課題番号 |
22H01965 (2022-2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2022-2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分29030:応用物理一般関連
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
金田 文寛 東北大学, 理学研究科, 教授 (80822478)
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研究分担者 |
藪野 正裕 国立研究開発法人情報通信研究機構, 未来ICT研究所神戸フロンティア研究センター, 主任研究員 (70777234)
BAEK SOYOUNG 東北大学, 電気通信研究所, 助教 (70826172)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
17,290千円 (直接経費: 13,300千円、間接経費: 3,990千円)
2024年度: 5,980千円 (直接経費: 4,600千円、間接経費: 1,380千円)
2023年度: 6,370千円 (直接経費: 4,900千円、間接経費: 1,470千円)
2022年度: 4,940千円 (直接経費: 3,800千円、間接経費: 1,140千円)
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キーワード | 光子 / 量子計測 / 量子もつれ |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では「多数の量子が多数の相関状態として存在する」現象である量子もつれを利用し、多数パラメータ計測を高分解能化する「多次元量子計測」を実証する。この目的のため、本研究では光子を計測プローブ量子として、バーストモード光子発生、超伝導アレイ型光子数検出器、光路の高速フーリエ変換、機械学習システムを開発し、従来技術の課題である光子間の高い非線形相互作用を要せず、多光子多モード量子もつれの発生、検出技術を一挙に確立する。本研究提案が実証されれば、イメージングや分光等、より一般的な多数パラメータ計測技術の「量子化」に大きな展望が拓かれることとなる。
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研究実績の概要 |
今年度は量子計測を実施するための必要装置として、伝令付き単一光子源、量子メモリ、空間モードスイッチ、そして光子数検出器の開発に取り組んだ。研究代表者の異動があり、実験設備を解体してから再度の構築が必要となったが、研究で必要である伝令単一光子源とその評価が完了した。構築した光源の改良と評価の結果、発生光子の光ファイバーへの集光効率は95%以上、フーリエ変換操作等で必要な2光子干渉の明瞭度は98.3%が観測された。これらの結果は、量子光源として世界最高性能を示すものであり、今後の量子計測実験での高度な量子もつれ発生、検出が期待される重要成果である。空間モードスイッチについても光学系の設計、構築と古典光源でのスイッチング特性の評価が完了した。立ち上がり時間は4 ns、スイッチ全体での透過率はモード不整合のために92%となっているが、現状の値でも使用することは可能であり、今後改善を続けながら単一光子のスイッチングにも使用する予定である。量子メモリについては異動後に再度構築中であるが、完成すれば、多数の単一光子を利用可能な光学系の構築は完了し、量子計測の基本光源として利用できるところまできている。 光子数検出器開発においては、まず新提案の高臨界電流バンク構造を用いた超伝導ワイドストリップ光子検出器を開発し、線幅20μmの超伝導ストリップを用いた高効率光子検出に成功した。また、32素子SNSPDとSFQデジタル信号処理回路をモノリシック集積化した光子数識別検出器の評価を行い、部分的動作の確認に成功した。一方、モノリシック素子ではエラー動作や歩留まりの問題が確認されたため、改善に向けた再設計を行う予定である。 その他、研究提案手法から派生した光通信Oバンドでの高純粋度をもつ伝令付き単一光子発生法の発見や、電気光学効果による偏光状態無依存、低損失単一光子スイッチング手法を実証することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
代表者の異動があったものの、光源開発においては光学系の立ち上げと、伝令付き単一光子源、空間モードスイッチ、2光子干渉の観測など、光源の評価と性能の実証を順調に進めることができたためである。フーリエ変換回路については未着手であるが設計は完了しており、光源開発が順調に進んだことから、今後円滑に量子計測実験に着手できるものと期待される。光子数検出器開発においても、新提案の高臨界電流バンク構造を用いた超伝導ワイドストリップ光子検出器の実証に成功している。さらに提案時にはなかった量子デバイスの実証にも成功していることも、順調に進展していると評価できる点である。
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今後の研究の推進方策 |
今後は量子メモリの調整と稼働、フーリエ変換回路の構築、そして開発設備の統合によって量子計測実験を実施する。フーリエ変換回路は提案通り、偏光モードを用いた光学系の単純化を図りながら安定な干渉計によって構築する。古典光によるフーリエ変換光学系の評価後、直ちに統合し、量子計測実験を実施する。最初のモデルはミラーの傾きなど、計測パラメータが比較的単純なものから着手し、その後、より複雑なパラメータ計測へと展開していく予定である。
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