研究課題/領域番号 |
23K23240
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補助金の研究課題番号 |
22H01972 (2022-2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2022-2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分30010:結晶工学関連
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研究機関 | 山口大学 |
研究代表者 |
麻川 明俊 山口大学, 大学院創成科学研究科, 講師 (90757337)
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研究分担者 |
本同 宏成 静岡県立大学, 食品栄養科学部, 准教授 (10368003)
柳谷 伸一郎 徳島大学, ポストLEDフォトニクス研究所, 准教授 (40314851)
勝野 弘康 金沢大学, 学術メディア創成センター, 准教授 (70377927)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
17,290千円 (直接経費: 13,300千円、間接経費: 3,990千円)
2025年度: 260千円 (直接経費: 200千円、間接経費: 60千円)
2024年度: 390千円 (直接経費: 300千円、間接経費: 90千円)
2023年度: 3,250千円 (直接経費: 2,500千円、間接経費: 750千円)
2022年度: 8,320千円 (直接経費: 6,400千円、間接経費: 1,920千円)
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キーワード | 表面融解 / 有機結晶 / その場観察 / 高分解能光学顕微鏡 / 結晶成長 |
研究開始時の研究の概要 |
表面融解とは融解の前駆現象として融点よりも低い温度で結晶表面を液膜が覆う現象のことである。本申請では有機結晶を用い、シンプルに分子間相互作用しか働かない有機結晶の表面融解を世界で初めて実空間で検証する。更に、高分解能で且つ高度なその場観察技術を駆使し、液膜の厚さと構造の関係について世界に先駆けてその場観測し、ミクロな視点に踏み込んで表面融解のモデルを構築する。本成果は氷に限定されていた表面融解の学理を有機物質に拡張し、性質の異なる分子選択によって表面融解の制御を可能にする。粒の融合防止や粒成長などの医薬食品への利用、新しい潤滑材の提案など幅広い材料設計エンジニアリングに貢献する。
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研究実績の概要 |
気相成長するビフェニル結晶をその場観察できる観察チャンバーを開発した。観察チャンバーは蒸気供給用結晶を設置する銅板と観察用結晶を設置する銅板を独立に温度制御する仕組みである。温度を精密に制御するために、観察チャンバーの構造をマイナーチェンジを繰り返した。観察チャンバー内の意図しない箇所に結晶が生成する場合があったため、観察チャンバー内の想定外の低温部分に溶質分子が供給されないように、観察チャンバーの構造を改良した。また、観察用チャンバーをキャリブレーションし、過飽和度を制御するところまで成功した。レーザー共焦点微分干渉顕微鏡を用いて、ステップレベルでビフェニルの気相成長を観察することができるようになった。渦巻成長するビフェニルのステップ前進速度は数μm/sec.ていどであった。更に、観察結晶の温度を融点直下にまで上げると、ビフェニル結晶の表面融解を観察することに成功した。融点よりも-0.3℃で、ビフェニル結晶はステップエッジで液滴を生成し、生成した液滴がステップを削っていくことを発見した。この描像は、黒田とLacmanらが提唱した熱力学に基づいた表面融解の描像に近い。現在、このメカニズムの再現性を確認しているところである。また、微分干渉の光学系と反射型干渉計の光学系をハイブリッド化した光学系をレーザー共焦点顕微鏡に取り付け、レーザー共焦点微分干渉顕微鏡-位相シフト干渉計の試作に成功した。実際に、数100本のステップの平均情報ではあるが、一分子段差のステップの高さを直接観察、計測することに成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
観察用チャンバーをキャリブレーションし、過飽和度を制御するところまで成功した。観察結晶のレーザー共焦点微分干渉顕微鏡を用いて、ビフェニル結晶の表面融解の観察に成功した。このことから、想定通りの測定まで実現することができたと言える。また、レーザー共焦点微分干渉顕微鏡-位相シフト干渉計の試作機の開発に成功し、実際に、一分子段差のステップを直接観察し、平均高さであるが、ステップの高さ計測するにまで至った。表面融解の観察だけでなく、高分解能光学顕微鏡の開発も順調であり、当初の予定を順調に達成している。本年度開発を完了させるめどが立った。以上より、本研究では進展が順調と結論付けた。
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今後の研究の推進方策 |
レーザー共焦点微分干渉顕微鏡-位相シフト干渉計を完成させる。また、ビフェニルの表面融解の再現性を確認する。更に、表面融解を定量化するため、温度、過飽和度、液膜の厚さの関係をまとめる。観察結晶が作り出す相互作用を理論の観点から計算し、ビフェニルの表面融解との対応を検討する。一方で、ビフェニル結晶の異なる結晶面上で表面融解を観察し、表面融解機構の違いが生じないか検証する。ビフェニルだけでなく、亜リン酸トリフェニルの表面融解を観察するため、観察用チャンバーを開発する。現在試作しているところで、出来上がり次第キャリブレーションを行う。
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