研究課題/領域番号 |
23K23243
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補助金の研究課題番号 |
22H01975 (2022-2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2022-2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分30010:結晶工学関連
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研究機関 | 国立研究開発法人物質・材料研究機構 |
研究代表者 |
渡邊 賢司 国立研究開発法人物質・材料研究機構, 電子・光機能材料研究センター, 特命研究員 (20343840)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2027-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
17,420千円 (直接経費: 13,400千円、間接経費: 4,020千円)
2026年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2025年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
2024年度: 2,990千円 (直接経費: 2,300千円、間接経費: 690千円)
2023年度: 4,030千円 (直接経費: 3,100千円、間接経費: 930千円)
2022年度: 7,280千円 (直接経費: 5,600千円、間接経費: 1,680千円)
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キーワード | 六方晶窒化ホウ素 / 結晶成長 / 2次元原子層材料 / 非線形分光 / 2次元原子層材料 / プラズモン |
研究開始時の研究の概要 |
2次元原子層サイエンスを支える基盤材料である六方晶窒化ホウ素(h-BN)における高効率エキシトン発光機構を解明するために、非線形分光学的な見地から電子格子相互作用の振る舞いを明らかにする。そのために積層欠陥密度の低い高品位なh-BN単結晶成長のための熱CVD法の確立を図り、非線形分光法である共鳴SHG法、共鳴ハイパーラマン散乱分光法や共鳴ポンプ&プローブ法などの分光法を駆使し、新しい電子励起状態の知見を得るとともに、電子格子相互作用により展開される協奏ダイナミックスを探索し、2次元系材料における新たな発光デバイス創成への手がかりを得る。
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研究実績の概要 |
本研究では六方晶窒化ホウ素の特異な電子格子相互作用の素性を非線形分光法により明らかにするのに必要な結晶性を有する高品位単結晶を成長するための熱化学気相成長法(CVD法)による結晶成長技術の開発を行っている。これまで気相成長中の雰囲気に残留する酸素および炭素不純物原子・分子が結晶成長層に取り込まれることが問題であった。2022年度から2023年度にかけてこれらの不純物取り込みを減らすために気相成長室の雰囲気制御を行なった結果、成長前の不純物ガス分圧は従来にくらべて2桁以上の向上を得ている。本年度はさらに成長条件を見直すことにより、実際に結晶成長をする試料温度での雰囲気制御を行なった。 また、結晶評価のためのカソードルミネッセンス(CL)装置の立ち上げを行なった。本CL装置は複数の波長感度を有する光検出器を搭載し、近赤外から可視・紫外領域までの発光過程を試料の発光像とともにスペクトル観測できるイメージングタイプの測定装置である。冷凍機を使用することにより試料温度を室温より下げて対象試料のハイパースペクトルを観測できるので成長試料の電子励起状態を簡便に観測できる。六方晶窒化ホウ素はワイドバンドギャップ材料であり、結晶性評価のために200 nm近辺の励起子発光から1μm領域の不純物欠陥発光まで極めて広い波長領域での発光観察が必須であるので、本装置の導入により的確な結晶評価を短時間で達成できるものと期待される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
窒素ガスソースとしてアンモニアを使用した六方晶窒化ホウ素のこれまでの気相成長実験により、他のIII-V族化合物半導体成長と同様に高温での成長で層状成長が進み良好な結晶成長が行われることがわかっている。好適な成長が行われる1300 °C以上の高温領域を得るために、我々の成長装置ではカーボン熱ヒータおよび高出力cwレーザ照射の同時加熱により成長を試みていた。このような装置系においてカーボン熱ヒータは熱輻射により対象の結晶成長基板を加熱するので、成長基板ホルダ以外のパーツを同時に加熱してしまい、そこからの脱ガスの影響を無視することができなかった。そこでレーザ加熱光学系の改良を行い試料加熱のための効率を高めることによりカーボン熱ヒータの電流を抑制してもなお目的の高温が得られるように工夫した。このような成長条件の変更下で従来通りの成長速度で結晶成長が行われることも確認している。また、これらの成長結晶試料においてラマン散乱分光法によるE2gモードの解析からも従来と遜色ない結晶性が得られていることがわかっている。昨年度から進めてきた従来の結晶成長室の交換と、成長雰囲気を超高真空に保つためのポンプ系のオイルレス化と合わせて高純度の六方晶窒化ホウ素が成長できるものと期待される。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの成長雰囲気の制御により得られた結晶の結晶性をイメージングカソードルミネッセンス分光法やラマン分光法などで確認する。また二次イオン質量分析法(SIMS)により成長試料の不純物濃度を同定し雰囲気制御の効果を調べる。特に炭素原子や酸素原子などは六方晶窒化ホウ素の構成元素である窒素およびホウ素と周期律表の同じ周期に属し、気相成長法や高温高圧下における温度差法などの成長方法にかかわらず、単結晶成長において非常に取り込まれやすい不純物元素であることが知られているので、これらの原子の不純物濃度を中心に同定する。また、一方で、不純物原子や結晶欠陥は六方晶窒化ホウ素における単一光子発光中心を形成することでも知られており、将来の量子オプトエレクトロニクス応用の基盤材料として非常に注目を受け期待されている。そこで2023年度に導入したイメージングカソードルミネッセンス分光法で新しい発光センターの探索を行う。特に低損失の光ファイバー通信に適している近赤外領域の発光中心探索は応用上とりわけ重要である。このイメージングカソードルミネッセンス分光装置では近赤外領域までカバーしているので近赤外領域の新しい発光中心が観測できないかどうか調べる。
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