研究課題/領域番号 |
23K23246
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補助金の研究課題番号 |
22H01978 (2022-2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2022-2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分30020:光工学および光量子科学関連
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
戸田 泰則 北海道大学, 工学研究院, 教授 (00313106)
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研究分担者 |
小田 研 北海道大学, 理学研究院, 名誉教授 (70204211)
土屋 聡 北海道大学, 工学研究院, 助教 (80597633)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
17,550千円 (直接経費: 13,500千円、間接経費: 4,050千円)
2024年度: 5,330千円 (直接経費: 4,100千円、間接経費: 1,230千円)
2023年度: 4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2022年度: 8,060千円 (直接経費: 6,200千円、間接経費: 1,860千円)
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キーワード | 特異点光波 / 光誘起相転移 / 超伝導 |
研究開始時の研究の概要 |
光の高い時空間制御性を活用した、新しいタイプの光誘起電子状態制御を銅酸化物高温超伝導体に対して実現します。きわめて短時間に生じるリング状の強度分布を持つ光波(特異点光波)を使って超伝導をクエンチさせ、リング中心にクエンチされずに残るナノスケール超伝導を創出するとともに、その観測と制御をもとに超伝導の物性探索や機能開拓を進めます。
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研究実績の概要 |
本研究では特異点パルス光波を超伝導体の相破壊を空間的に制御する手段として活用し、高温超伝導体試料に対して光誘起のナノスケール超伝導を創出する。コヒーレントクエンチを通して過渡的に生成されるナノスケール超伝導のダイナミクス観測を実施し、光波の時空間制御性を利用した新規物性および新機能を開拓することを目的として研究を進めている。 特異点光波による空間局在超伝導を創出するため、本年度はコヒーレントクエンチ分光への特異点光波の適用と最適化、および過渡的に発現する超伝導のマルチパルス時間分解応答検出を実施し、時空間解析の整備に着手した。特異点光波を高温超伝導体の相破壊に反映させるため、新たな要素技術として1)スパイラル位相板を用いた特異点制御、2)アポクロマート対物レンズを用いた色収差補正を導入した。スパイラル位相板をビーム中心に対して相対的に走査することにより、相破壊応答の特異点位置依存性を明確に捉えることが可能となり、特異点に残留する超伝導応答の空間局在化を実証するとともにその応答特性を明らかにした。またマルチパルスに対して色収差補正を実施することで検出効率とビームの重なり精度を向上させた。さらに試料中の欠陥構造を利用することにより、時間分解イメージングを通して空間的に局在した超伝導応答分布を測定した。相破壊パルスのフルーエンス変化にもとづく空間分布の先鋭化が確認され、超伝導クエンチを反映する飽和特性を利用した超解像化の原理実証を行った。飽和特性を利用した超解像化は生体分子の蛍光イメージングに広く応用されているが、今回の測定結果は超解像原理を物性領域に拡張可能であることを示しており、基礎物性のみならず超伝導デバイス応用に対してもきわめて重要な意義を持つ。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現在までにコヒーレントクエンチ分光への特異点光波の適用と最適化、および過渡的に発現する超伝導のマルチパルス時間分解応答検出を実現し、時空間解析の整備に着手した。特異点光波の制御性を活用したクエンチ応答の特異点位置依存性から、特異点に残留する超伝導応答の空間局在化を実証するとともにその応答特性を明らかにした。また高温超伝導体試料の欠陥構造に着目し、空間的に局在した超伝導応答を利用した時間分解イメージングを実施した。相破壊パルスのフルーエンス変化にもとづく空間分布像の先鋭化が確認され、超伝導クエンチを反映する飽和特性を利用した超解像化の原理実証が実現できた。本成果は生体分子の蛍光イメージングに広く応用されている超解像原理を物性領域に拡張可能であることを示しており、基礎物性およびデバイス応用に対して重要な意義を持つ。現状、空間分布は対物レンズの集光条件で制限されており、空間分布から見積もられる分解能はミクロンスケールであるが、局所的なクエンチに対する超伝導秩序回復には特異的な時空間特性が現れており、光波の時空間制御性を利用した新規物性および新機能開拓の端緒を開いた。以上の進捗状況を踏まえ、本研究課題は順調に進んでいると考える。
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今後の研究の推進方策 |
本研究の推進方策として、(項目1)3パルス分光に対する特異点光波の適用、(項目2)特異点周りの強度暗点に形成される光誘起超伝導の空間分布と応答特性の解明、(項目3)ナノスケール局在超伝導の創出と時空間イメージングによる物性および機能開拓を掲げている。本年度は項目1および2を整備することにより、項目3の基盤構築を目的とした時空間イメージングを実現した。特異点周りの超伝導を局所的なプローブとする応答解析を実施し、高温超伝導体試料に存在する結晶欠陥周りの超伝導応答のイメージングに成功した。次年度はこのイメージング技術にもとづいて、超伝導相破壊条件に対する超伝導応答の時空間変化を系統的に調査し、超解像イメージングを実現するために最適な励起条件を明らかにするとともに局在超伝導を用いた物性解析の有効性を示すことを目標とする。具体的には強度暗点に形成される超伝導サイズの相破壊パルスに対する強度依存性、クエンチ経過時間依存性を調査し、超伝導のサイズ変化および応答特性がどのような超伝導特性を反映しているのか明らかにする。また本年度に構築した試料走査駆動系を最適化し、空間分解能の向上と装置安定化を進める。特にヘリウム流量制御装置を新たに導入し、イメージングに必要となる長時間測定の安定化を図る。
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