研究課題/領域番号 |
23K23256
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補助金の研究課題番号 |
22H01988 (2022-2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2022-2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分30020:光工学および光量子科学関連
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
浅野 卓 京都大学, 工学研究科, 准教授 (30332729)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
17,290千円 (直接経費: 13,300千円、間接経費: 3,990千円)
2024年度: 5,720千円 (直接経費: 4,400千円、間接経費: 1,320千円)
2023年度: 6,240千円 (直接経費: 4,800千円、間接経費: 1,440千円)
2022年度: 5,330千円 (直接経費: 4,100千円、間接経費: 1,230千円)
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キーワード | フォトニック結晶 / 共振器 / 電気制御 / 光電子融合回路 / 機械学習設計 / フォトニック結晶共振器 / 光転送 / 高Q値化 / ナノ共振器 / 光バッファ |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では、シリコンフォトニック結晶共振器結合系に面内p-i-n構造を導入して電気的に屈折率を高速に制御できる機構を付加しつつ、共振器の光保持時間を極力低下させない手法を検討し、電気制御による光の動的操作が可能な光電子融合チップを実現する。そして、3共振器結合系での高効率かつ高速な共振器間光転送を電気制御によって実現し、その上でさらに多様な動的光操作への適用を目指す。
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研究実績の概要 |
我々はこれまでにフォトニック結晶共振器やその結合系に光を保持している間に屈折率分布を変化させることで、光を動的に操作する技術を提案し、その実証に取り組んできた。従来は屈折率制御をチップ外部から短パルス光を照射することでキャリアを励起する手法で行っていたが、ごく最近、面内p-i-n構造を導入して電気的に屈折率を高速に制御できる機構を付加することを行い、これによる共振器間光転送に成功した。しかしプロセスの複雑化に伴う汚染などの問題や、結合共振器とp-i-n構造を最適化できていないなどの課題が残っていたため、昨年度は様々なプロセス改善の検討を行い、これまで200万程度であった電気制御機構付き共振器結合系のQ値を、その2倍の400万程度まで向上させることに成功した。(ただし、キャリア注入を行っていない状態。) 本年度は、転送時間および転送効率を向上させるため、共振器Q値を大きな値に保ちながら共振器間結合定数を増大させ、かつp-i-n構造によるキャリア注入速度を向上させることに取り組んだ。前者に関しては共振器間の結合に用いる導波路の位置をサイドカップリング配置から同軸配置に変更し、対称性を向上させることで放射Q値を低下させずに結合定数を3倍程度増大させる設計に成功し、また実験的にも確認した。しかしp-i-n構造によりキャリアを注入して光転送実験を行ったところ、光転送後の光保持寿命が極端に低下することが分かった。そこでその原因を検討したところ、注入キャリアによる想定外の光吸収が生じていることが分かった。そこで、p-i-n構造および共振器と結合用導波路の配置等を見直しつつ、機械学習的手法も活用した設計を行い、結合定数を昨年度の構造の2倍程度に高めつつ、キャリアを注入して光転送を行った後のQ値を300万程度以上という高い値に保つことできる設計を得ることに成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
注入キャリアが光転送後の光保持寿命に想定以上の大きな影響を及ぼすという現象に予期せず遭遇したが、物理に基づく考察と機械学習的手法とを用いた電気回路および光回路の総合設計を行うことで結合定数を昨年度の構造の2倍程度に高めつつ、キャリアを注入して光転送を行った後のQ値を300万程度以上という高い値に保つことできる設計を得ることに成功したため。
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今後の研究の推進方策 |
本年度の検討で得られたpin構造と結合共振器系構造を実際に作製して、光転送性能の向上を実証することを目指して研究を行う。p-i-n構造から注入されたキャリアが共振器外に広がることが、光転送後の光保持寿命の低下につながることが明らかになったため、より幅の狭いp-i-n構造(従来i層の大きさが4.5μm×4.5umだったものを2.5μm×1.9μmとする)を用いる。しかし、それに伴って共振器とi層の位置合わせを厳密に行う必要が生じるので、電子ビーム露光による重ね合わせ描画手法の再検討を行って位置合わせ精度を向上させる。また、結合共振器構造に関しては光保持用共振器に関しては、結合用導波路と同軸の構造、制御用共振器に関してはサイドカップリング構造が最適であることが分かったので、まずp-i-n構造なしの結合共振器を作製し、その共鳴波長、結合係数等の基本特性を確認する。その上で、p-i-n構造を導入した結合共振器構造を作製し、オンデマンドな光転送実験を行う。これによって、従来構造よりも高速・高効率な光転送を実証することを目指す。また、p-i-n構造にパルス電圧ではなく、高周波信号を加えることで、波長差のある共振器間に光結合を誘起できる可能性があるため、その実験的検討を行う。
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