研究課題/領域番号 |
23K23264
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補助金の研究課題番号 |
22H01996 (2022-2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2022-2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分30020:光工学および光量子科学関連
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研究機関 | 国立研究開発法人理化学研究所 |
研究代表者 |
安藤 潤 国立研究開発法人理化学研究所, 開拓研究本部, 研究員 (40623369)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
17,680千円 (直接経費: 13,600千円、間接経費: 4,080千円)
2024年度: 2,990千円 (直接経費: 2,300千円、間接経費: 690千円)
2023年度: 5,850千円 (直接経費: 4,500千円、間接経費: 1,350千円)
2022年度: 8,840千円 (直接経費: 6,800千円、間接経費: 2,040千円)
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キーワード | 表面増強ラマン散乱 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究課題は、血中で働く酵素を無標識、かつ高感度に定量する技術を開発する。酵素は代謝や吸収などの重要な生体機能を担い、血中酵素の増減は疾患の進行を捉える指標となる。本研究課題では、表面増強ラマン散乱分光法を用い、酵素による基質の分解を無標識で直接計測する技術を開発する。さらに、微小なチャンバーに酵素を分子1個ごとに封入し、表面増強ラマン散乱信号が得られるチャンバー数をカウントすることで、血中に存在する微量な酵素の量を、高精度に直接定量する技術の開発を目指す。
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研究実績の概要 |
本年度は、表面増強ラマン散乱分光計測に特化したマイクロチャンバーアレイの開発を行なった。マイクロチャンバーアレイ形成のため、フォトリソグラフィーを基軸とした微細加工技術を駆使して開発を進めた。基板上面に塗膜した樹脂に対して、マイクロスケールのチャンバーをアレイ状に安定して再現性高く形成する工程の最適化を行った。さらに、形成したマイクロチャンバーアレイに金属ナノ構造を付加する試験も併せて行なった。用いる基板や、基板上に塗布する樹脂の材質、膜厚、チャンバーの直径、ピッチ、配列パターンや、チャンバーアレイに付加する金属ナノ構造の金属種、サイズ、形状など、種々の条件について検討を行い、マイクロスケールの個々の微小環境内において、表面増強ラマン散乱分光計測が可能となる、新たな機能化マイクロチャンバーアレイを開発することができた。また、マイクロチャンバーアレイを用いた酵素のラマン分析を行うための、ラマン散乱分光イメージング装置の設計と構築も併せて行なった。構築した計測装置を用い、表面増強ラマン散乱分光計測の感度や、イメージングの時間分解能、空間分解能などについても検証を進めた。さらに、開発したマイクロチャンバーアレイに対し、標準試料として精製した酵素と基質を混合した溶液試料を封入し、開発装置によるラマン分光イメージングを行うことで、酵素の活性を1分子毎に計測するデジタルラマン分光計測の原理検証を進めることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度、当初の計画どおり、表面増強ラマン散乱分光計測に特化したマイクロチャンバーアレイの開発、マイクロチャンバーアレイの分光分析に用いるラマン分光イメージング装置の設計・構築、および、チャンバーアレイとイメージング装置を用いた酵素1分子のデジタルラマン分光計測の原理検証を進めることができたことから、おおむね順調に進展していると判断した。計画のとおり、微細加工技術によって基板上の樹脂にマイクロチャンバーアレイを形成するとともに、種々の条件検討を経て、金属ナノ構造を付加した新たな機能化マイクロチャンバーアレイの開発を推進できた。マイクロチャンバーアレイを用いたラマン分析を行うラマン分光イメージング装置の設計と構築も順調に進展し、その性能評価にも取り組むことができた。加えて、開発した機能化チャンバーアレイとイメージング装置を活用し、酵素1分子のデジタルラマン計測の原理検証を進めることができた。いずれも次年度に繋がる進捗が得られており、全体として計画どおりに順調に研究を推進できていると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
今後、開発した機能化マイクロチャンバーアレイを試料に用い、これを迅速に分光分析に供する高速ラマン分光イメージング装置の設計と構築を行うことを計画している。励起レーザー光の波長、光強度、照明パターンなど、種々の実験条件について検討を行い、同時に分光計測可能なチャンバー数を増加させ、分光分析・イメージングの高速化を図る。また、機能化マイクロチャンバーアレイの定量迅速評価システムの構築と、その評価法の確立にも取り組み、本研究開発における計測の定量性や安定性の向上に繋げる方策である。さらに、上記の高速イメージング装置による酵素1分子のデジタルラマン分光計測の原理検証を進めるとともに、検出下限や時間分解能等の詳細な評価を行うことを計画している。最後に、本研究で開発する技術を、血液等のヒト検体試料に含まれる微量な酵素の高精度・直接検出に応用する研究開発を計画している。
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