研究課題/領域番号 |
23K23267
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補助金の研究課題番号 |
22H01999 (2022-2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2022-2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分31010:原子力工学関連
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研究機関 | 弘前大学 |
研究代表者 |
佐々木 一哉 弘前大学, 理工学研究科, 教授 (70631810)
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研究分担者 |
高橋 伊久磨 千葉工業大学, 工学部, 准教授 (60820793)
向井 啓祐 核融合科学研究所, 研究部, 准教授 (70807700)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
17,420千円 (直接経費: 13,400千円、間接経費: 4,020千円)
2024年度: 6,240千円 (直接経費: 4,800千円、間接経費: 1,440千円)
2023年度: 4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2022年度: 6,890千円 (直接経費: 5,300千円、間接経費: 1,590千円)
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キーワード | 核融合 / リチウム / 同位体濃縮 / 電気透析 / カスケード / リチウム6 / カスケード装置 / igor-pro |
研究開始時の研究の概要 |
核融合炉の実現に向け、燃料となる三重水素の製造に必要な質量数6のリチウム(6Li)の濃縮技術の確立は喫緊の課題である。電気透析技術は、環境負荷が小さく、最良の技術である。研究代表者は、一次溶液側の固液界面現象を考慮した新たな濃縮機構を考案し、本機構に基づくセル形状と条件の影響を解明し、高い濃縮比を世界で初めて「安定的に」実現した。本研究では、事前検討で示唆された二次側溶液の固液界面現象も加味する新たな濃縮機構をもとに更に高い6Li濃縮率を実現するとともに、1段セルで実現した濃縮を多段(カスケード)化し、世界初のカスケード電気透析による6Li濃縮をめざす。
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研究実績の概要 |
本研究は、基幹発電システムとして期待される核融合炉の実現への最大課題である、質量数6のリチウム同位体(6Li)の濃縮技術開発に資する。我々は、電気透析技術に基づく新たな6Li濃縮原理を考案し、1段ごとには大きな同位体濃縮率を達成した。6Li同位体比率を90%以上とするには、1段ごとの同位体濃縮率をさらに大きくかつ安定に実施する方法を見出し、またそれを繰り返し実施するカスケーディング装置を開発する必要がある。 本研究の主な目標は、①世界初のカスケード電気透析6Li濃縮の実現、②1段セルの6Li濃縮率の向上、である。 R5年度は、主に以下の実験研究を行った:(A)カスケード装置型同位体濃縮装置用のセルの設計・製作および評価、および(B)カスケード装置におけるセルの連結方法およびセル条件や運転条件の影響に関するシミュレーション検討。 (A)においては、カスケード装置用に単セル内の容積が小さく液の強制攪拌が困難なため、流路の形状とポンプによる流速制御によって基板界面近傍の拡散層の厚さを制御する方法を検討した。セル形状を設計し、外注によりアクリル製のセルを作製した。当初作製したセルでは、流路形状の問題で液の滞留が生じることが判明したため、拡散膜を入れて改良を行った。(B)の検討では、igor-proを用いて計算プログラムを作成し、クロスフローとリニアフローの二種類について、セルの流路形状、流路面積、流速、分流比率、電流密度、等の制御因子による、同位体濃縮係数やリチウムイオン濃度への影響をシミュレーションし、これら因子の影響の程度、および因子の適切な値の組み合わせの適正化を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
リニアフロータイプとクロスフロータイプの二種類について、セル形状や流速や分流比率等、および電流密度により、同位体濃縮率やリチウムイオン濃度に大きな差が生じること、およびこれらの制御可能な因子による影響の程度が判明した。また、それらの因子を適切に組み合わせることで、同位体濃縮比率を大きくできることが判明した。一方で、同位体の宿比率が大きくなる条件では、二次側溶液中のリチウムイオン濃度が低下する為、一組のカスケード装置だけでは、6Li同位体比率を90%まで上げることが困難であることが判明した。これに対し、数段のカスケードによる同位体濃縮の後に、リチウムイオン濃度を調整する工程を追加し、再度カスケード装置で同位体濃縮をするといった、同位体濃縮と溶液中のリチウムイオン濃度調整とを繰り返す複合的なカスケード装置とすることで、90%以上への6Li同位体濃縮を実現できることが推定された。 現在は、作成したプログラムを用いて因子の適正化を更に進めている。同時に、シミュレーションで適正化した因子の水準を実際の系で実施する為の装置製作を検討している。
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今後の研究の推進方策 |
従来検討していた、単セルの単純な連結によるカスケード化では、リチウムイオン濃度や溶液量に関するマスバランス上の問題が生じることが判明し、新たな方式としてクロスフロータイプとリニアフロータイプの二種類のカスケード装置を考案し、それを作製、制御する際の種々の因子による影響と適正化を、計算ソフトigor-proを用いてシミュレーションプログラムを作成した。更に、本プログラムを用いて計算を実施した。令和5年度の検討により判明した知見を基に、令和6年度のはじめには、数段から成る一つのカスケード装置に関して、より好適な条件を探索する。また、この数段のカスケードによる同位体濃縮の後にリチウムイオン濃度を調整する工程を追加して再度カスケード装置で同位体濃縮をするといった、同位体濃縮と溶液中のリチウムイオン濃度調整とを繰り返す複合的なカスケード装置について、シミュレーションにより6Li同位体濃度を90%程度に増大できる条件をシムレーションで明らかにする。その後、その条件を実際のセルで実現できるように、セル構造等を設計し、試作し、確認検討を行う。
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