研究課題/領域番号 |
23K23283
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補助金の研究課題番号 |
22H02015 (2022-2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2022-2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分31020:地球資源工学およびエネルギー学関連
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
渡邉 則昭 東北大学, 環境科学研究科, 教授 (60466539)
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研究分担者 |
WANG JIAJIE 東北大学, 環境科学研究科, 助教 (60875467)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2027-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
17,680千円 (直接経費: 13,600千円、間接経費: 4,080千円)
2026年度: 1,950千円 (直接経費: 1,500千円、間接経費: 450千円)
2025年度: 2,470千円 (直接経費: 1,900千円、間接経費: 570千円)
2024年度: 2,470千円 (直接経費: 1,900千円、間接経費: 570千円)
2023年度: 2,470千円 (直接経費: 1,900千円、間接経費: 570千円)
2022年度: 8,320千円 (直接経費: 6,400千円、間接経費: 1,920千円)
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キーワード | 地熱貯留層 / 化学的刺激法 / キレート剤 |
研究開始時の研究の概要 |
高温ではあるものの浸透性が低い地熱貯留層を地熱発電に利用できるよう造成するためには,井戸を通じて貯留層の岩石を刺激し,高浸透性き裂網を形成する必要がある。研究代表者らは最近,環境調和型キレート剤による選択的鉱物溶解を利用した新化学的刺激法を発明した。しかし,なぜ,一部の鉱物の溶解に起因して,大きな浸透性の増加が生じるのかという問いに対する明確な答えが存在せず,新化学的刺激法の有効性や課題は完全には明らかになっていない。そこで本研究では室内実験を通じて浸透性増加のプロセスを解明する。また,基礎的なシミュレーションにより,新化学的刺激法の有効性や課題を明確にし,その課題に対する解決策を検討する。
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研究実績の概要 |
高温ではあるものの浸透性が低い地熱貯留層を地熱発電に利用できるよう造成するためには,井戸を通じて貯留層の岩石を刺激し,高浸透性き裂網を形成する必要がある。そこで研究代表者らは最近,環境調和型キレート剤による選択的鉱物溶解を利用した新化学的刺激法を発明した。しかし,なぜ,一部の鉱物の溶解に起因して,大きな浸透性の増加が生じるのかという問いに対する明確な答えが存在せず,新化学的刺激法の有効性や課題を完全には明らかにできていない。本研究は,地熱貯留層条件下での岩石へのキレート剤流通実験を実施することで,選択的鉱物溶解と浸透性の増加の特徴を把握し,浸透性増加のプロセスを解明することを目的とする。また,新化学的刺激法の有効性や課題を明確にし,その課題に対する解決策を検討することも目的とする。
本年度は,花崗岩における黒雲母の選択的溶解および浸透性増加のpH依存性を調査した。その結果,以下の2段階プロセスで浸透性の増加が生じることが明らかになった。つまり,まず,黒雲母が溶解することで孔隙が形成され,この孔隙を連結する流路の流動抵抗が低下し,卓越流路が形成される。その後,キレート剤は,程度の差はあるものの多種類の鉱物に対して溶解促進効果を持つため,卓越流路の幅が拡大し,浸透性が増加するというプロセスである。またこのプロセスに基づいて,浸透性の増加のための最適pHは単一のpHではなく,黒雲母の溶解による孔隙形成に適した弱酸性のpHと,キレート剤では達成できない石英の溶解促進に適したアルカリ性のpH(例えば,pH 4とpH 8)の組み合わせであることを明らかにした。加えて,花崗岩以外の岩石に対しても新化学的刺激法が適用可能であることを見出し,CO2の地中貯留および鉱物固定に関する特許を出願した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本年度実施した黒雲母の選択的溶解および花崗岩の浸透性増加の特徴把握とプロセス解明は,当初の計画では,本年度と次年度の2年間で実施するものであったが,1年間で終了したため。
加えて,花崗岩だけでなく,玄武岩等の火山岩にも環境調和型キレート剤による化学的刺激法が適用可能であり,CO2の地中貯留や鉱物固定にも応用展開可能であることを見出し,特許出願にまで至っているため。また,新たにドイツGFZとの共同研究に発展したため。
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今後の研究の推進方策 |
本研究は,当初の計画以上に進展し,花崗岩だけでなく,玄武岩等の火山岩にも環境調和型キレート剤による化学的刺激法が適用可能であり,地熱資源の開発生産だけでなく,CO2の地中貯留や鉱物固定にも応用展開可能であることが明らかになった。
そこで今後は,当初の計画で対象としていた岩石種や温度等の貯留層条件に限らず,広範な条件での実験を実施し,地熱貯留層造成だけなくCO2貯留層造成さらにはCO2鉱物化促進への環境調和型キレート剤による化学的刺激法の有効性や課題を明確にしていきたい。
さらに本研究の成果に対して,ドイツGFZの研究者が関心を示し,同研究機関の協力のもと地熱貯留層の造成に関する研究を実施しているTU Darmstadtの博士課程学生が,研究生として研究代表者の研究室でドイツの地熱フィールドへの本化学的刺激法の適用に関する研究を実施することになったため,この国際共同研究も推進したいと考えている。
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