研究課題/領域番号 |
23K23285
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補助金の研究課題番号 |
22H02017 (2022-2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2022-2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分31020:地球資源工学およびエネルギー学関連
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
小池 克明 京都大学, 工学研究科, 教授 (80205294)
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研究分担者 |
柏谷 公希 京都大学, 工学研究科, 准教授 (40447074)
久保 大樹 京都大学, 工学研究科, 助教 (90758393)
後藤 忠徳 兵庫県立大学, 理学研究科, 教授 (90303685)
渡辺 寧 秋田大学, 国際資源学研究科, 教授 (90358383)
白勢 洋平 愛媛大学, 理工学研究科(理学系), 講師 (50793824)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
17,550千円 (直接経費: 13,500千円、間接経費: 4,050千円)
2024年度: 4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2023年度: 4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
2022年度: 8,320千円 (直接経費: 6,400千円、間接経費: 1,920千円)
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キーワード | 空間モデリング / 地球統計学 / 熱水流動系 / 鉱床生成プロセス / 鉱床存在可能性評価 / 熱水鉱床 / 品位分布 / 鉱床タイプ / 主成分分析 / 金属元素濃度 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は,金属資源の濃集部である鉱床が地球のどこにどのような場で形成され,その法則性から未発見の鉱床がどこにあるのか? を解明することを目的におく。そのために日本列島とその周辺海域を対象地域に選び,①日本列島・周辺海域の地殻構造と金属資源の情報を網羅した総合金属資源データベースの構築,②対象地域全体にわたる現在の熱水流動系の解明,③鉱床を生成させた熱水の物理・化学条件の特定,④鉱床存在の可能性が高い場所を抽出できる手法の開発,の4つを目標にする。地質構造,地温,物性,化学組成の3次元モデルを高分解能で作成し,数値シミュレーションを適用する。また,鉱石・岩石試料の鉱物・化学組成分析も行う。
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研究実績の概要 |
本研究は①日本列島・周辺海域の地殻構造と金属資源の情報を網羅した総合金属資源データベースの構築,②現在の熱水流動系の解明,③鉱床を生成させた熱水の物理・化学条件の特定,④鉱床存在の可能性が高い場所を抽出できる手法の開発,の4つを目標におく。当初計画に沿い,令和5年度はデータベース構築,日本全域にわたる主な熱水鉱床からの鉱石試料の鉱物・化学組成分析と流体包有物分析の均質化温度測定,および鉱床生成温度の推定を継続した。データ駆動型解析により,日本の熱水鉱床鉱石を特徴付ける要因は,高温領域における方鉛鉱や閃亜鉛鉱の沈殿,マグマの結晶分化やアルミナ質花崗岩による鉱化作用の影響,珪酸塩鉱物の形成に伴う元素移動,および低温領域での黄鉄鉱・黄銅鉱の沈殿の4つであることを明らかにできた。また,例えば西南日本外帯には黄鉄鉱・黄銅鉱が卓越する鉱床が集中するなど,地域ごとの鉱床の特徴も抽出でき,さらに熱水中のPbとZn濃度が高く,Si濃度が低いことが大規模なベースメタル鉱床を形成する条件であることなども見出された。GISの応用により日本近海の海底での熱水鉱床が存在する可能性が高い場所も推定できるようになった。 また,金鉱床の成因に注目したところ,東北日本では北上帯での白亜紀造山型金鉱化作用,日本海拡大時の中新世前期浅熱水金鉱化作用,千島弧での中新世中-後期浅熱水金鉱化作用,中新世後期-更新世東北日本弧での含金浅熱水多金属鉱化作用に区分でき,最新のステージではベースメタルとともに金が浅熱水環境で沈殿したことなどが明らかになった。さらに,日本列島のような沈み込み帯における金属元素濃集のメカニズム解明のため,スラブとウェッジマントル間での流体反応における元素の挙動について検討した結果,超苦鉄質岩由来の金属元素が二酸化炭素に富む流体を介して移動し,周囲の岩石中に硫化鉱物や粘土鉱物として濃集するプロセスが見出された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
令和5年度の当初計画は,上記①・②・③の目標達成に関連した(I) データベース構築と3次元モデリング,(II) 3次元地温構造に基づく現在の熱水流動系の解明,(III) ケーススタディによる熱水の物理・化学の解明の3項目の実施であった。(I)に関しては昨年度に引き続き,鉱山と鉱床有望調査域の位置・鉱床タイプ・鉱量・分析品位・地質,陸域地熱情報,地殻構造の一つとして陸域・海域地震の震源位置とマグニチュード,海底熱水鉱床の位置と岩相などを収集でき,GISによって一元化した。空間モデリングにより地下3 km深度までの3次元地温構造を明らかにでき,水質化学も区分できた。また海底熱水鉱床を規定する構造的要因もより詳細に特定できた。(II)に関しては陸域と海底での代表的な熱水鉱床域を対象として,地質分布や浸透率分布を適切に推定し,数値シミュレーションによって現在の熱水流動系と温度・流速などの熱水物性の空間分布を明らかにし,特にキャップ層の形成が流動形態に強い影響を及ぼすことがわかった。(III)に関しては日本で代表的な鉱脈型鉱床と海底熱水鉱床を対象とし,鉱物組成・流体包有物・品位分布データから鉱床生成時の温度分布や浸透率分布を推定し,境界条件を適切に設定して数値シミュレーションを実施した。その結果,熱水の上昇に伴い圧力が低下して地表浅部で沸騰が生じ,二酸化炭素の脱ガスとpHの上昇が誘発され,これにより沸騰領域で硫化鉱物が著しく沈殿し,高品位部が形成されることがわかった。これらの研究成果として,下記の研究発表に示すように,資源地質学分野での最も代表的な国際誌に論文を掲載でき,2件の招待講演を含む国際会議4件と国内会議19件の計23件の学会発表も行えた。このように初年度に引き続き成果を上げられたので,研究は順調に進展していると評価できる。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度である3年目の2024年度は目標達成に関連した下記2項目を実行する。 ○ケーススタディによる熱水の物理・化学の解明:日本の代表的な鉱床周辺の空間分解能を向上させ,熱水流動に起因した鉱床生成プロセスの解明を目指す。今年度は黒鉱鉱床と海底熱水鉱床を対象に選び,以下の解析を行う。 -【鉱床生成時の温度分布の推定:岩石試料を用いて鉱物組成・化学組成分析と薄片観察・流体包有物分析を行い,これらの結果と調査資料を合わせて,熱水の温度・圧力の空間分布,および鉱物沈殿をもたらした熱水の化学組成を推定する。】【鉱床の空間モデリング:地質と品位の3次元分布,地質構造を詳細に明らかにする。】【岩石透水性と熱水流動経路の推定:データベース中の地震波速度分布などから透水係数分布を推定する。また,鉱物組成・化学組成分布より金属イオンの移行パターンとそれを形成した熱水の流動経路を推定する。】【熱水流動の数値シミュレーション:透水係数分布と流動経路,地質構造モデルを参照データとして対象地区の数値モデルを作成し,熱水の化学組成を複数設定して流動シミュレーションを行う。これにより品位分布と鉱床生成時の熱水流動系の物理・化学とを定量的に関連付ける。】 ○熱水鉱床タイプのケーススタディ成果を応用し,熱水の物理・化学と品位の間に一般的法則性を見出すとともに,現在の熱水流動系に当てはめ,鉱床存在可能性が高い場所の特定を目指す。 -【鉱床生成の法則性の定式化:選択した熱水の物理・化学パラメータと鉱床タイプごとの品位の空間分布との関係を表す鉱床関数を求める。】【鉱床存在の可能性の高い場所の特定:現在の熱水流動系で生成されている可能性が高いのは,陸域での浅熱水性鉱脈,および海域での黒鉱の2タイプの鉱床である。それぞれの鉱床関数を適用することで,品位が高く鉱量が大きな場所を特定する。】
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