研究課題/領域番号 |
23K23288
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補助金の研究課題番号 |
22H02020 (2022-2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2022-2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分31020:地球資源工学およびエネルギー学関連
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研究機関 | 関西学院大学 |
研究代表者 |
尾崎 壽紀 関西学院大学, 工学部, 准教授 (20756663)
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研究分担者 |
岡崎 宏之 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構, 高崎量子技術基盤研究所 先端機能材料研究部, 主任研究員 (90637886)
石神 龍哉 公益財団法人若狭湾エネルギー研究センター, 研究開発部, 主任研究員 (10359242)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
17,810千円 (直接経費: 13,700千円、間接経費: 4,110千円)
2024年度: 1,950千円 (直接経費: 1,500千円、間接経費: 450千円)
2023年度: 5,200千円 (直接経費: 4,000千円、間接経費: 1,200千円)
2022年度: 10,660千円 (直接経費: 8,200千円、間接経費: 2,460千円)
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キーワード | 超伝導薄膜 / イオン照射 / 結晶欠陥 / 臨界電流特性 / ナノ構造 / エネルギー機能材料 |
研究開始時の研究の概要 |
超伝導応用機器の実現に必要不可欠な磁場中での超伝導特性向上のために、数MeV以下の低エネルギーイオン照射により形成されるナノ結晶欠陥と超伝導特性との関係を明らかする。また、照射欠陥や応力歪の導入、また熱処理などによりナノ結晶欠陥制御を行うことで、次世代高特性超伝導薄膜の創製を目指す。本研究では、比較的安価な小型加速器を用いた高特性超伝導線材作製のための基礎開発を行う。
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研究実績の概要 |
超伝導材料を用いた応用機器の多くは、磁場中で超伝導を利用するため、磁場環境下でより多くのゼロ抵抗電流を流さなくてはならない。そのためには、超伝導体内に侵入した量子化磁束線を超伝導体内の常伝導部分(析出物など)で「ピン止め」する必要がある。近年、数MeV以下の比較的低いエネルギーでのイオン照射においても、磁場中超伝導特性を向上させるのに有効であることがわかってきた。しかしながら、系統的な実験が行われていない。超伝導材料の更なる特性向上のためには、イオン照射条件を系統的に変化させることで、照射条件によって形成される結晶欠陥や密度の違いが超伝導特性に及ぼす影響を明らかにする必要がある。そこで、本研究では、低エネルギーイオン照射によって形成されるナノ結晶欠陥と超伝導特性との関係を明らかにし、照射欠陥や応力歪の導入、また熱処理などによりナノ結晶欠陥制御を行うことで、次世代高特性超伝導薄膜を創製することを目的とする。 2023年度は、極めて低いエネルギーでのイオン照射が鉄系超伝導FeSe0.5Te0.5(FST)薄膜の超伝導特性に及ぼす影響を調べた。具体的には、プロトンを10 keVで様々な照射量で照射し、照射量と超伝導特性の関係を明らかにした。またイオン照射によって形成された照射欠陥の制御を目的に、300 keV Heイオンを照射した銅酸化物高温超伝導GdBa2Cu3Oy (GdBCO)薄膜を用いて、酸素雰囲気中で熱処理を行い、熱処理前後のTcとJcなどの超伝導特性を系統的に調べた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
軽いプロトンを10 keVという極めて低いエネルギーでFeSe0.5Te0.5(FST)薄膜に照射し、照射量と超伝導特性の関係を調べた。照射量は5×10^13 - 2×10^16 ions・cm^(-2)とした。比較的低照射量領域において、照射後Tcは0 Tで0.5 K未満の上昇が確認された。一方、高照射量領域においては、照射後、Tcは低下した。プロトン照射前後のJcの磁場角度依存性を測定すると、照射後に、Jcがほぼ全ての磁場印加角度領域で向上していることが確認できた。これはプロトン照射によってFST層中に異方性の小さい欠陥が導入されたためだと考えられる。また、低照射量領域において、1 - 12 T//cの磁場中でJcが向上した。これらの結果から10 keVプロトン照射は広範囲の照射量で磁場中でのFST薄膜の超伝導特性を向上させることが分かった。 次に300 keV Heイオン照射後のGdBCO薄膜に酸素雰囲気中で熱処理を行い、熱処理前後のTcとJcなどの超伝導特性を調べた。350 °C以上の温度で熱処理を行うと熱処理前よりもTcが向上した。しかしながら、低磁場領域以外の磁場中Jcは、熱処理後に低下した。これらの結果から、イオン照射後の酸素雰囲気中での熱処理は、Tcの回復には有効であるが、磁場中Jcの向上には、有効ではないことがわかった。 低エネルギープロトン照射と酸素雰囲気中での熱処理、超伝導特性を明らかにできたため、達成度としてはおおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
2024年度(最終年度)は、プロトンよりも重いイオンを用いて、イオン照射条件と超伝導特性の関係を調べる。具体的には、酸素イオンやアルゴンイオンを数十 keVでFST薄膜に照射し、照射量と超伝導特性の関係を調べると共に、形成される欠陥のサイズや形状を微細構造観察により明らかにする。また、イオン照射が超伝導ダイオード特性に及ぼす影響を調べる。更にこれまで得られた実験結果に基づいて、低エネルギーイオン照射が、MgB2薄膜やNb薄膜など、他の超伝導薄膜の物理特性に及ぼす影響についても検討する。本研究を通じて、高特性超伝導薄膜作製のために、薄膜中のナノ結晶欠陥を制御・デザインする技術の構築を目指す。
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