研究課題/領域番号 |
23K23298
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補助金の研究課題番号 |
22H02030 (2022-2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2022-2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分32010:基礎物理化学関連
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
近藤 徹 東京工業大学, 生命理工学院, 講師 (30452204)
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研究分担者 |
浅井 智広 中央大学, 理工学部, 准教授 (70706564)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
17,550千円 (直接経費: 13,500千円、間接経費: 4,050千円)
2024年度: 3,120千円 (直接経費: 2,400千円、間接経費: 720千円)
2023年度: 6,760千円 (直接経費: 5,200千円、間接経費: 1,560千円)
2022年度: 7,670千円 (直接経費: 5,900千円、間接経費: 1,770千円)
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キーワード | 1分子分光 / 超高速スペクトル分光 / 光合成光反応 / タンパク質ダイナミクス / 生体光反応のロバスト性 / 顕微分光 / 過渡吸収分光 / 光合成光捕集系 / 機能的ロバスト性 |
研究開始時の研究の概要 |
タンパク質構造の解析手法が確立され、構造を基にした機能解析が可能となった。一方で、生体内の生理環境は刻一刻と変化しており、構造は常に変動している。このようなタンパク質の動態性を解析するため、1分子分光法が発展した。最近、光合成タンパク質1粒子の分光解析から、光反応過程も動的に変動していることが分かってきた。しかし、実際の生体内ではタンパク質が単体で機能するのではなく、複数が連結した超複合体という機能ユニットを形成し光反応を制御している。そこで本研究では、単体では不安定なタンパク質でも、超複合体のように組織化することで、機能的な安定性を獲得できるのか?、という問いの答えを探る。
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研究実績の概要 |
本研究課題では、1分子感度の過渡吸収スペクトル顕微鏡を開発し、緑色硫黄細菌の光合成光捕集に関わるエネルギー移動過程を揺らぎ成分も含めて解析する。昨年度は、高感度吸収顕微鏡の開発およびフェムト秒過渡吸収顕微測定系の構築を行い、緑色硫黄細菌の光捕集アンテナであるクロロソームの1粒子解析に成功した。そこで2年度目となる当該年度ではまず過渡吸収顕微鏡の改良から進めた。遅延光学系の時間走査を高速化し、連続的に過渡吸収信号を得られるようにした。過渡吸収信号を1つ1つフィッティング解析することで、エネルギー移動の時定数の時間的な揺らぎを解析できるようになった。さらに、過渡吸収測定のprobe波長を変えることで、複数の波長で過渡吸収信号を得られるように改良し、時定数成分の同定を行った。これらの装置改良に加え、測定試料も再検討した。緑色硫黄細菌に変異を加え、クロロソームの色素会合体構造を制御した変異体試料を精製した。これにより、1粒子解析で新たに観測された時定数成分をクロロソームの微細構造と対応づけて同定できるようになった。今後は、変異体試料で得られた結果の解析を進め、これまでのアンサンブル測定では難しかったクロロソームの微細構造の不均一性の生理学的な意義について明らかにする。また、緑色硫黄細菌の光反応系において、クロロソームと結合して機能する光捕集アンテナタンパク質FMOと反応中心タンパク質RCの超複合体試料の精製も進めており、これらの1粒子解析も進めて行く予定である。これら各部位ごとの1粒子解析手法が確立できたら、最終的にはクロロソーム・FMO・RCの超複合体におけるエネルギー移動過程を解析し、それらと揺らぎがどのように相関しているのかを明らかにする。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
2年目である当該年度は、高感度吸収顕微鏡の改良および緑色硫黄細菌の光合成光反応系の1粒子解析を計画していた。当初の計画通り、緑色硫黄細菌がもつ光捕集アンテナであるクロロソームの1粒子過渡吸収解析に成功した。さらに、装置改良を行うことで過渡吸収信号の連続測定ができるようになり、フェムト秒時間スケールで生じる超高速光エネルギー移動の時定数の時間的な揺らぎの解析に成功した。吸収検出をベースとした分光解析で、時定数の揺らぎまで解析できた例はこれまでほぼ皆無に等しい。さらに、クロロソームの1粒子解析が予想以上に上手くいったため、微細構造を制御した変異体試料の測定まで行うことができた。まだ解析は不十分だが、野生株と比較して大きな違いが見えており、1粒子解析の強みを存分に活かした光生物研究へと発展できている。このように、本研究計画は当初の計画以上に進展していると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
当該年度で高感度吸収顕微測定系を構築することができ、緑色硫黄細菌の光合成光反応系の1粒子解析手法も確立できた。これにより、光捕集アンテナ・クロロソームの1粒子解析が可能となり、野生株と変異体から精製したクロロソームで超高速光エネルギー移動の不均一性の比較ができるようになった。そこで、今後の方針の1つ目として、クロロソームの1粒子解析をさらに進めて行く。次年度は様々な条件で測定を行うと同時に解析を進め、結果を論文としてまとめる。これまでのアンサンブル測定では難しかったクロロソームの微細構造の不均一性の生理学的な意義について明らかにする。今後の方針の2つ目は、吸収スペクトルの過渡変化を測定できる分光光学系を導入することである。広範囲のスペクトル情報が得られるように装置改良することで、より複雑な多段階のエネルギー移動過程まで解析できるようになる。これを用い、緑色硫黄細菌の光反応系においてクロロソームと結合して機能する、光捕集アンテナタンパク質FMOと反応中心タンパク質RCの超複合体試料を精製し、1粒子レベルで解析を行う。さらに、クロロソーム・FMO・RCの超複合体におけるエネルギー移動過程の解析まで発展させる。揺らぎの影響も含め、光合成系の光エネルギー移動過程がどのように高安定かつ高効率化しているのかを明らかにする。
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