研究課題/領域番号 |
23K23303
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補助金の研究課題番号 |
22H02035 (2022-2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2022-2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分32010:基礎物理化学関連
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
森 俊文 九州大学, 先導物質化学研究所, 准教授 (20732043)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
17,160千円 (直接経費: 13,200千円、間接経費: 3,960千円)
2025年度: 3,120千円 (直接経費: 2,400千円、間接経費: 720千円)
2024年度: 5,200千円 (直接経費: 4,000千円、間接経費: 1,200千円)
2023年度: 4,940千円 (直接経費: 3,800千円、間接経費: 1,140千円)
2022年度: 3,900千円 (直接経費: 3,000千円、間接経費: 900千円)
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キーワード | 構造ダイナミクス / 酵素反応 / 分子シミュレーション / 自由エネルギー / 遷移状態 / 機械学習 / 深層学習 |
研究開始時の研究の概要 |
酵素の高い基質特異性および反応性には、個々の酵素に固有の立体構造が重要であるが、同時に構造揺らぎや遅い状態遷移といった構造ダイナミクスも、活性を向上する上で重要となる。このような酵素の動的特性は、好冷菌などで見られる活性の特異的な温度依存性や、時計タンパク質KaiCの温度補償性の実現にも寄与していると考えられる。本研究では、酵素の状態遷移過程と反応遷移経路の理論計算に基づき反応の動的機構を解明するための新たな理論的枠組みを構築する。この理論を用いて、酵素反応における活性の特異的な温度依存性や温度補償性の分子起源を明らかにする。
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研究実績の概要 |
酵素は反応の活性化エネルギー障壁を下げることで反応を促進・制御するが、同時に酵素の構造は溶液内で大きく揺らいでいる。さらに、その揺らぎや状態遷移といった酵素の構造ダイナミクスが機能に重要であることが近年の実験から示唆されている。そのため、従来の立体構造解析や速度論的解析といった手法に加え、どのように構造揺らぎや状態遷移が起きているかを理解することが、酵素反応の分子機構の解明に不可欠である。本研究では、分子動力学シミュレーションを基盤とした理論的アプローチにより、生体分子の構造ダイナミクスを理解する理論的枠組みを構築すると同時に、酵素反応を動的側面から明らかにし、活性制御につなげることを目指している。 本年度は、基質状態や溶媒環境などといった様々な環境の変化に構造ダイナミクスがどのように影響を受けるかを調べた。中でも、近年の実験で興味が持たれている生体内環境に近い高濃度ATP溶液での挙動を調べた。まず従来の水のTIP3Pモデルではうまく記述できない高濃度ATP溶液のシミュレーションを行うために、水分子モデルの検討を行い、OPCモデルおよびTIP4P-Dモデルがより適当であることを見出した。次に、ATPが多数ある状態でのタンパク質の構造ダイナミクスを調べ、ATPが主にアデニン環を介してタンパク質と相互作用していることを見出した。 また、リン酸化反応のQM/MM計算も行い、反応過程を調べると同時に、タンパク質の構造ダイナミクスが反応の始状態に相当する構造をごく稀にしかとっていないことを明らかにした。他にも共同研究として、有機合成反応の分子機構の解明に取り組んだ。今後、これらの構造ダイナミクスと化学反応の反応経路に関する解析手法および知見が組み合わさることで、酵素の構造変化によって引き起こされる酵素反応の動的機構とその制御メカニズムが明らかになることが期待される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題で推進する酵素の構造ダイナミクスと活性制御の分子機構の解明には、平衡状態で酵素がとる多様な構造・状態の探索と、その間を行き来するダイナミクス、さらに活性部位で起こる反応イベントとの関連を統一的に解き明かすことが必要である。さらに、これらが基質の状態や溶媒環境などの影響によって変化する仕組みを理解することが、反応の制御につながる。2022年度は酵素の遅い運動を実験と結びつける解析手法と、機械学習を用いて化学反応の反応座標を決定する方法の開発を行った。本年度は、これらの方法を発展させ、生体分子の構造ダイナミクスへの外部環境の影響を解析し、また反応座標決定法の水溶液反応および酵素反応への拡張を行った。同時に、生体分子の構造励起状態から化学反応が起こる過程のQM/MM計算も進めている。このように、構造ダイナミクスと化学反応のつながりの解明に取り組んでおり、着実に研究が進んでいるため。
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今後の研究の推進方策 |
酵素の構造ダイナミクスと活性制御の分子機構の解明に向け、2022年度および2023年度の研究により、構造ダイナミクスの解析手法や、反応イベントを記述する反応座標を機械学習にもとづき決定する方法の開発を進めてきた。また、これらの手法を用いて、プロリン異性化酵素Pin1や時計タンパク質KaiCをはじめとした複数の生体分子内でおこる化学反応の計算に取り組んで来た。今後はこれらの系に関する計算を進め、酵素の遅い構造ダイナミクスと、それに引き続いて起こる化学反応の過程を調べる。これらの性質の大きく異なる構造ダイナミクスがどのように結びつく様を明らかにすることで、酵素反応が効率よく制御されている仕組みを理解し、これを説明するための反応速度論と反応制御に向けた分子理論の開発に取り組む。
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