研究課題/領域番号 |
23K23313
|
補助金の研究課題番号 |
22H02045 (2022-2023)
|
研究種目 |
基盤研究(B)
|
配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2022-2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分32010:基礎物理化学関連
|
研究機関 | 認定NPO法人量子化学研究協会 |
研究代表者 |
中辻 博 認定NPO法人量子化学研究協会, 研究所, 理事長 (90026211)
|
研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
|
配分額 *注記 |
17,160千円 (直接経費: 13,200千円、間接経費: 3,960千円)
2025年度: 4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2024年度: 4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2023年度: 4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2022年度: 4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
|
キーワード | シュレーディンガー方程式の正確な解法 / 理論合成化学 / scaledシュレーディンガー方程式 / シュレーディンガー方程式のexact解 / 予言的量子化学の建設 / exact量子化学の建設 / 自由完員関数理論 / Exactポテンシャルカーブ / RKRポテンシャルカーブ / シュレーディンガー方程式 / Scaledシュレーディンガー方程式 / exact解に基づく量子化学理論の建設 / 基底・励起状態 / exactポテンシャル曲線 / RKRポテンシャル / 量子化学の高精度化 |
研究開始時の研究の概要 |
シュレーディンガー方程式は化学・生物学・物質物理学を支配する方程式であり、この方程式が正確に解くことができれば、これらの物質科学は基本的には理論によってすべて設計・予見することができ、これを裏づけるための実験との協業によって完結する。しかし、前世紀までシュレーディンガー方程式は解けないと信じられていたが、2000年以来の研究で中辻はこれが解ける事を示し、2004年その一般的解法を提出した。その後、その容易な解法の実現を目指し、上記の道は開かれつつある。本課題はその合成化学への展開であり、京都大学工学部合成化学科を卒業し、後にその教授となった申請者のライフワークの一つである。
|
研究実績の概要 |
量子化学は理解のための学問から正確な化学現象の予言を行える学問に変身しなければならない。例えば合成化学は新しい機能を持つ物質を実際に創り出す化学であるが、分子の機能をあらかじめ正確に予測し、しかも予測された分子を実際に効率よく合成する道は、実際の合成化学者によっていつも考えられている。これを私たちが開発した正確な予言的量子化学によって実現する事が本研究の目的である。この線に沿って、本年度は、① Correct型スケーリングg関数の導入と検証 (J. Chem. Theory Comput. 20, 3749 (2024).)、② Gauss関数を用いたFC-変分計算: rGauss関数の積分法の開発 (J. Chem. Phys., 159, 024103 (2023).)、③ FC-LSE理論によるシュレーディンガー方程式の絶対解レベルで正確なポテンシャルカーブ の計算(J. Chem. Theory Comput. 19, 6733 (2023).)、等を行い、記載の学会誌に発表した。これらは、正確な予言的合成化学の基礎になる成果であり重要である。特に、③の研究では、昨年のLi2の9個の価電子基底・励起状態のフルなpotential curveの計算に続いて、有機星間分子として重要なCH+のやはり6個の基底・励起状態のpotential curveの計算を行い、昨年同様、あらゆる意味で完全に実験と一致するpotential curveを得ることができた。実際の計算は分子科学研究所の計算機センターの計算機を使って行われ、その報告書にもより詳しく報告している。これらの成果を基に、最初に述べた新しい機能を持つ物質を理論的に予測し、それを実際に創り出す道をも設計することのできる理論合成化学を確立するための研究を続けていきたい。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
シュレーディンガー方程式は化学を支配している方程式であり、その正確な解は化学を正確に予言する能力のある、きわめて強力な解である。したがってこの方程式の正確な解を導くことができる申請者の自由完員関数理論(Free Complement theory)を用いて、望む分子機能を持つ分子をあらかじめ正確に予測し、しかも予測された分子を実際に効率よく合成する合成化学を理論設計する化学理論体系を作り上げたい。その様なことは、化学以外の一般の他分野にはありえない事であり、化学はその意味で、完全に理論化学が支配できる世界となり、後は合成化学によって実際に有用な物質を合成する、という姿があり得る。本研究は、そのような近未来の化学と理論合成化学を作り上げる先駆け的な研究であり、その意味は歴史的にも大きい。上記①の研究により、今までの研究より格段に効率よく正確なシュレーディンガー方程式の解を求めることができたことは、本理論の予言性の向上につながり、本研究の有用性を大いに高めるものである。また③の例にみられるような成果は今後も色々なより複雑な系にも得られるようになり、本理論の正確な予言性が広範な系に生かされ、真に有用な予言的量子化学が確立されていく先導を示すことになると確信している。これこそが、今までの理論にはなかった姿であり、世界の量子化学を大きく変えていく原動力になるものと確信している。理論は正確でなければならないし、予言は正確でなくては意味がないからである。
|
今後の研究の推進方策 |
今までの本理論の応用は、シュレーディンガー方程式の局所性から、VB法的な初期関数から出発することが多かった。これに対して今年度からはMO法的な初期関数も出発関数に加える。また、分子の計算においては、exact波動関数の必要条件であるHellmann-Feynman 定理(静電定理)の成立をその計算条件に加える。これによって理論がより正確になるとともに申請者が提案した「静電力理論」が使えるようになる。静電力理論は「力の概念」によって化学現象を直感的に理解することのできる理論であり、正確なexact theoryにありがちな「難かしさ」を取り除き、理論の理解を助け、予言をより容易にする力がある。さらに、本理論の応用範囲を広めるため、初期関数を本研究者のSAC/SAC-CI理論に広げる。これにより、exact levelの基底・励起・イオン化・電子付加状態を作成する。 以上の二つの拡張によって、原子・分子の基底・励起状態・イオン化・電子付加状態を含むほぼあらゆる状態が研究対象となり、さらに静電力理論に基づく力の概念が使えるようになるため、この広い応用範囲に加えてexactな正確さと直感的理解の両方を兼ね備えたexact theoryが出来上がることになり、そのインパクトは極めて大きいと考えている。
|