研究課題/領域番号 |
23K23316
|
補助金の研究課題番号 |
22H02048 (2022-2023)
|
研究種目 |
基盤研究(B)
|
配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2022-2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分32020:機能物性化学関連
|
研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
宮前 孝行 千葉大学, 大学院工学研究院, 教授 (80358134)
|
研究分担者 |
宮本 克彦 千葉大学, 大学院工学研究院, 准教授 (20375158)
|
研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
|
配分額 *注記 |
17,680千円 (直接経費: 13,600千円、間接経費: 4,080千円)
2024年度: 2,470千円 (直接経費: 1,900千円、間接経費: 570千円)
2023年度: 4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2022年度: 10,530千円 (直接経費: 8,100千円、間接経費: 2,430千円)
|
キーワード | 有機デバイス / 非線形分光 / 界面・表面 / 電荷蓄積 / オペランド計測 / 界面 / 和周波発生 / 時空間計測 |
研究開始時の研究の概要 |
有機デバイス内の分子配向が電荷蓄積・電荷輸送挙動、素子特性にどのように影響するかを解明することは有機エレクトロニクスの根幹をなす重要課題である。本研究では、電界誘起2重共鳴SFG法並びに電子和周波分光により、実素子駆動時の電荷注入・輸送に対する配向分極との関係を定量的に解明することを目的とする。配向秩序の異なる有機層を組み込んだ有機デバイスを用いて、分子配向が関わる分子内、分子間伝導の素子特性への関連を明らかにする。さらにシングルピクセルイメージング法による分子配向の空間情報を取得する方法を開発し、デバイス特性に対する配向分極の効果と界面電荷輸送特性の時空間計測による電荷挙動の全容を解明する.
|
研究実績の概要 |
有機デバイス内の分子配向が電荷蓄積・電荷輸送挙動、素子特性にどのように影響するかを解明することは有機エレクトロニクスの根幹をなす重要課題である。本研究では、電界誘起2重共鳴SFG法並びに電子和周波分光により、実素子駆動時の電荷注入・輸送に対する配向分極との関係を定量的に解明することを目的とする。配向秩序の異なる有機層を組み込んだ有機デバイスを用いて、分子配向が関わる分子内、分子間伝導の素子特性への関連を明らかにする。さらにシングルピクセルイメージング法による分子配向の空間情報を取得する方法を開発し、デバイス特性に対する配向分極の効果と界面電荷輸送特性の時空間計測による電荷挙動の全容を解明する. 計画2年目において、電界誘起効果を活用して、微細化したOLED素子間で問題となる横方向リーク(Lateral leakage current, LLC)の検出を試みた。OLEDでは、作成時に電荷注入層を共通層として使用することが多いが、この注入層に高伝導性を付与すると、電圧を印加していない、隣接素子においてSFGの非共鳴信号が変化する現象を確認することができた。この変化はデバイスシミュレーションにより見積もられたリーク電流と良い一致を示しており、電界誘起SFG分光法が非発光状態におけるLLCの検出に有効な手法であることを実証した。 OLEDの電荷輸送挙動を調べる手法として、これまでに用いてきた二重共鳴SFG分光に加え、可視光波長を変えながら有機材料の電子励起に共鳴させる、電子和周波発生(ESFG)の開発に取り組んできた。装置の調整、並びにESFGを扱う海外研究者との意見交換を進め、予備的な検討を行ってきた。OLEDに対してESFG測定を実効的に進め発光状態の電荷輸送の解明につなげていく。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2022年度において故障した赤外光発生ユニットは内外の研究者の協力により交換を進め、従来のSFG測定を継続して行うことが可能となった。このシステムを用いて、非発光状態のOLEDを用いたLLCの検出可能性の検討を進めた。また波長可変可視光と近赤外光を用いた電子和周波発生(ESFG)についての実現可能性を探索し、アメリカテキサス大学に学生を派遣し、当該技術に関しての情報収集並びに意見交換を行ってきた。既に、予備的な検討において、電圧印加したOLEDにおいてESFGの信号が変化する現象をとらえることに成功しており、電荷注入によるスペクトル変化の理論づけを進めている段階である。 有機積層膜の検討においては、有機半導体であるインジゴを用いたトランジスタとその積層構造についてSFG、薄膜X線回折、可視紫外吸収、ESFG、AFMを用いて総合的に界面分子配向についての検討を進めてきた。絶縁体層として用いられる、テトラテトラコンタン(TTC)薄膜は基板上では秩序性を持って配向しているが、70℃の低温アニールにより、TTC膜の平滑性が向上し、さらにTTC分子の配向秩序もそれに伴って向上する。この上にインジゴ薄膜を積層させると、インジゴの結晶成長が促進され、トランジスタとして両極性を示すことが示された。即ち膜の配向秩序と絶縁体層の平滑性が有機半導体の結晶成長には重要な因子となっていることが明らかになった。一方、インジゴを積層させた界面ではTTC薄膜の配向秩序は変化しており、この配向乱れはほかの有機半導体積層構造よりも大きいことが示された。このことは結晶成長形態により界面の分子配向が変化していくこと、分子間相互作用の小さい有機半導体ほど、配向乱れが抑制されることが見出され、有機半導体積層構造を設計するうえで配向制御が重要な因子となり得ることを示すことができた。
|
今後の研究の推進方策 |
有機デバイスの電荷輸の計測に関しては,振動和周波発生だけでなく,現在電子和周波発生の測定を可能にするようにSFG分光システムを再構築している。これまでに提案者が進めて来た,振動和周波発生を用いた有機デバイス解析においては,分子振動を分子固有の指紋として用いることで電荷蓄積の有機界面を解析し,電荷挙動の追跡に用いていたが,この手法では,バンドギャップの大きい有機物の振動を捉えることが技術的に難しく,限られた有機層の情報しか得ることが出来なかった。新たに構築しようとしている電子和周波計測システムを用いることで,各有機層固有の電子状態,電荷輸送,蓄積状態を評価・解析することが可能になる。波長可変可視光ユニットと近赤外光の電子和周波は紫外領域の波長帯域を有しており,有機半導体,機能性有機材料の個別の吸収帯の電荷挙動を詳しく調べることが可能となる。 現時点では、420~670nmの波長範囲において、ESFG信号を取得できることに成功している。この波長制度を向上させ、電子和周波を用いて,有機ELで用いられている有機薄膜の各層の電子共鳴SFGスペクトルを取得し,実際の有機ELを駆動した際の電子和周波スペクトルの変化挙動と照らし合わせることで,有機EL内部における電荷挙動の全貌を明らかにすることを目指す。 有機トランジスタの積層構造における界面分子配向と電荷輸送との関係を調べることは電荷トラップや、結晶粒界など、有機トランジスタにおける諸問題を解明し、制御していくうえで需要な課題である。振動SFGに加え、電子SFGを加えていくことにより、電荷輸送に関わるオペランド計測の実現を目指す。
|