研究課題/領域番号 |
23K23320
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補助金の研究課題番号 |
22H02052 (2022-2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2022-2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分32020:機能物性化学関連
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研究機関 | 奈良先端科学技術大学院大学 |
研究代表者 |
河合 壯 奈良先端科学技術大学院大学, 先端科学技術研究科, 教授 (40221197)
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研究分担者 |
LOUIS Marine 奈良先端科学技術大学院大学, 先端科学技術研究科, 助教 (20913932)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
17,550千円 (直接経費: 13,500千円、間接経費: 4,050千円)
2024年度: 5,070千円 (直接経費: 3,900千円、間接経費: 1,170千円)
2023年度: 5,070千円 (直接経費: 3,900千円、間接経費: 1,170千円)
2022年度: 7,410千円 (直接経費: 5,700千円、間接経費: 1,710千円)
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キーワード | 光反応 / フォトクロミズム / 放射線検出 / 増幅反応 / 蛍光 / フェルスター / 分子カプセル / センサー / 高感度 / ドシメーター / 増幅 / 連鎖 |
研究開始時の研究の概要 |
放射線を高感度で検出し色調変化や蛍光発光強度の変化をもたらす高感度フォトクロミック分子ドシメーター材料の開発と、そのための学理開拓に取り組む。従来は放射線によるフォトクロミック分子の励起状態形成と異性化反応を利用しており、放射線作業従事者の安全管理対応するためには1000倍程度の高感度化が必要となっていた。本研究では、放射線によって高効率に増幅形成する電荷分離状態を利用し、単一酸化活性種から1000を超える分子の異性化色調変化を誘導する超増幅反応系を利用する。高効率連鎖異性化反応による着色反応、連鎖反応による蛍光増強、酸化物やフッ化物等の無機ナノ粒子とのハイブリッドなどに取り組む。
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研究実績の概要 |
放射線を高感度で検出し色調変化や蛍光発光強度の変化をもたらす高感度フォトクロミック分子ドシメーター材料の開発と、そのための学理開拓に取り組む。従来は放射線によるフォトクロミック分子の励起状態形成と異性化反応を利用しており、放射線作業従事者の安全管理に対応するためには1000倍程度の高感度化が必要となっていた。本研究では、放射線によって高効率に増幅形成する電荷分離状態を利用し、単一酸化活性種から1000を超える分子の異性化色調変化を誘導する超増幅反応系を利用する。高効率連鎖異性化反応による着色反応、連鎖反応による蛍光増強、酸化物やフッ化物等の無機ナノ粒子とのハイブリッドなどに取り組む。2023年度は前年度までに明らかになった混合溶媒系による着色と消色の両立を可能とする反応系を利用し、光異性化の確認と、フォトクロミック分子の最適化を行った。さらにフェルスター距離に関する考察から高濃度条件が必要となることをふまえ、蛍光分子の最適化に取り組んだ。その結果、発光波長と着色体の吸収波長の重なりが大きい蛍光色素の選定に成功し、実際にフォトクロミック反応による蛍光変調の観測に成功した。さらに高濃度領域のフォトクロミック反応の観察のため、分子カプセル構造の構築取り組み、直径80μm程度のマイクロカプセル内でのフォトクロミック反応の実証に成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では放射線被ばくに対する即時視認性と高感度検出を両立させることから、【A】着色型連鎖反応系の構築、【B】連鎖蛍光増強反応系の構築、【C】放射線増感効果を有する無機ナノ粒子との連結による多重増感系の構築の3項目に取り組んできた。2023年度は主に【A】および【B】に取り組み、新規の連鎖反応系による蛍光スイッチング系の構築に取り組んだ。検討の結果、フォトクロミック反応に伴い発生する可視域の吸収バンドと蛍光波長がマッチする蛍光色素を選定し、溶液中におけるフォトクロミズムと蛍光スイッチングを検討した。通常、このような蛍光スイッチング分子ではフォトクロミック分子と蛍光分子を共有結合もしくは水素結合などで化学的に連結する必要がある。これは蛍光色素の励起寿命内に蛍光消光剤として機能する着色状態のフォトクロミック分子がフェルスター半径内に拡散する必要があるからである。しかし実際にこのような条件が成立するためには10mM以上の高濃度溶液であることが必要条件となる。このような高濃度溶液では紫外光の侵入長が短く反応系全体をスイッチングすることが困難であった。本研究ではマイクロカプセルを用いることでこのような高濃度溶液における効率の良い蛍光スイッチングに成功した。この場合、拡散係数から推定される自己拡散長とマイクロカプセルのサイズが一致することから攪拌を行うことなくマイクロカプセル内の濃度は自発的に均一化する事が有意性を与えることを明らかにした。
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今後の研究の推進方策 |
本研究ではすでにマイクロカプセルを利用することで高い反応性と大きな蛍光消光性が可能であることを明らかにした。さらに連鎖反応を組み合わせることで高感度に紫外線や放射線などの高エネルギー光子のセンシングが可能になると期待している。さらに想定していた向きナノ結晶との組み合わせについても検討を行う。当初はナノ結晶表面にフォトクロミック分子を固定化することを想定してきたが、2023年度までの検討の結果、マイクロカプセルを利用することで高濃度溶液でも効率の良いフォトクロミック反応が可能であることが見い出されたことや自己拡散効果により攪拌を行う必要がないことが明らかになったことなどから、ナノ結晶とフォトクロミック分子の連結を行う必要がないものと期待している。具体的なナノ粒子としては遷移金属酸化物を想定しており、放射線に対する高い感受性を期待している。
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