研究課題/領域番号 |
23K23328
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補助金の研究課題番号 |
22H02060 (2022-2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2022-2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分33010:構造有機化学および物理有機化学関連
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
寺尾 潤 東京大学, 大学院総合文化研究科, 教授 (00322173)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
17,420千円 (直接経費: 13,400千円、間接経費: 4,020千円)
2024年度: 4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2023年度: 5,070千円 (直接経費: 3,900千円、間接経費: 1,170千円)
2022年度: 7,670千円 (直接経費: 5,900千円、間接経費: 1,770千円)
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キーワード | 分子デバイス / 電子伝達系 / 機能性共役分子 / 共役分子 / シクロデキストリン / 分子エレクトロニクス / 電荷移動度 / 電子伝達分子 / ロタキサン / 触媒 / π共役分子 / 酸化物 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では,実用的な分子デバイスの実現を目的とし,現在のリソグラフィー技術で歩留まり良く作製可能な,10nm前後のギャップを有する固定電極を用い,長い分子の1分子伝導度は低いため,固定電極間に複数・並列配線し,固定電極間で逐次的なカップリング反応を行い,被覆型分子を自在に配向配列して繋ぎ,再現性の高い分子架橋法を創出する.また,応用展開として,超分子伝導計算と機械学習を融合し,超分子相互作用による芳香族化合物の分子識別を高速に実現する超分子センサの開発を行う.また,マイクロ流路内に様々な分子認識能を有するセンサ素子を集積化し,機械学習による煙成分のモニタリングシステムへと応用する.
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研究実績の概要 |
有機分子と無機固体を複合化した有機無機ハイブリッド材料は、化学的および物理的特性を分子レベルで制御できるため、高性能な材料開発を可能にする。中でも、d電子に由来する様々な機能をもつ遷移金属錯体を金属酸化物半導体表面に導入することで、優れた電子的特性が期待される。しかし、分子間相互作用により金属錯体は凝集や不均化などが生じ、性能が低下しやすいという課題がある。この点に関して我々は最近、完全メチル化αシクロデキストリン(PM αCD)とトラン骨格からなる、[1]ロタキサン型構造を有するホスホン酸アンカーを開発し、金属酸化物上に単分子性を維持したまま高密度な表面担持が可能なことを示した。そこで本研究では、発光性遷移金属錯体の単分子での高密度担持を志向して、[1]ロタキサン型π共役リンカーを有する有機無機ハイブリッド型ルテニウム(II)錯体を開発した。本研究では、色素増感剤や可視光レドックス触媒として広く利用されているルテニウム(II)錯体に注目し、[1]ロタキサン型π共役リンカーを利用した有機無機ハイブリット材料の開発を行った。被覆π共役連結ルテニウム(II)錯体の合成を行い、その溶液系での光物性と酸化還元特性、それらの結果からHOMO-LUMOギャップの算出を行った。これらの結果において、対応するトリス(ビピリジン)ルテニウム錯体と同様であったことから、被覆π共役ユニット上に導入したルテニウム錯体が、本来の性能を損なうことなく機能することを確認した。次に、平坦なITO基板への固定化と物性評価を行った。まず初めに、CV、XPS、AFM測定結果から平坦なITO基板への被覆π共役連結ルテニウム(II)錯体の固定化を確認した。また、AFM測定結果から被覆体において顕著な凝集体の形成が確認されなかったことから、PM α-CDによるπ共役系の被覆が分散性の確保に有用であることが示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
被覆π共役連結ルテニウム錯体の合成と溶液系での特性評価:金属錯体ユニットには、可視光増感剤やフォトレドックス触媒として広く利用されているトリス(2,2’-ビピリジン)ルテニウム(Ru(bpy)3)を採用した。アジド型被覆共役リンカーとビピリジンとを銅触媒アジド-アルキン[3+2]付加環化反応によりトリアゾール環で連結した化合物を得た。その後、常法に従い錯体化し被覆π共役連結ルテ二ウム錯体を合成した。この分子の溶液系での紫外・可視吸収(UV-vis)スペクトル測定では、Ru中心からビピリジン配位子へのMLCT遷移と被覆共役ユニットのπ-π*遷移が確認された。また、サイクリックボルタンメトリー(CV)測定ではRu(Ⅱ)/ Ru(Ⅲ)の酸化還元に帰属される可逆な酸化還元波が確認された。これらの結果は、対応するRu(bpy)3(PF6)2とほぼ同様であり被覆π共役ユニット上に導入したルテニウム錯体の光および酸化還元特性が本来の性能を損なうことなく機能することを示唆する。
ITO基板へのルテニウム錯体の担持とその評価:高い導電性を有する金属酸化物として知られるITO基板を使用し、ホスホン酸基を有するアジド型被覆共役リンカーの溶液に浸漬して担持した。その後、エチニル基を有するRu(bpy)3錯体を含む溶液中で、銅触媒アジド-アルキン[3+2]付加環化反応を行い、被覆π共役連結ルテニウム錯体を構築した。担持基板のCV測定では、Ru(Ⅱ)/ Ru(Ⅲ)の酸化還元に帰属される可逆な酸化還元波を示し、ITO基板へのRu錯体の導入が確認された。また、AFM 測定により担持基板表面を観察したところ、被覆体の顕著な凝集が見られなかった一方で、対応する非被覆体では、 凝集体の形成が見られたことから、包接構造が触媒導入における単分子性の確保に有用であることが示された。
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今後の研究の推進方策 |
本年度の成果では、α-CDユニットは無機担体表面上に分子を直立かつ分散した状態での固定化による、金属錯体間または金属錯体が無機担体間の電子移動の抑制に有用であることが示された。また、無機担体上での銅触媒アジド-アルキン[3+2]付加環化反応による様々な機能性ユニットの導入が可能であることから応用展開が期待される。そこで、今後は、本技術により金属錯体ユニットを無機担体に対し、単分子性を維持したまま高密度での固定化が可能となることから、金属酸化物担体としては、まず、種々の基本物性の測定を行うために、高い導電性を有する金属酸化物として知られるITO 膜の透明ガラス基板を用い、次に、半導体であるTiO2ナノ粒子を用いて、光物性と触媒機能の確認を行う。最後に、高密度修飾による高活性触媒を可能とする、直径がnmオーダーで長さがμmオーダーのZnOナノワイヤを用いる予定である。また、金属基板への展開も検討する。配向制御プラグ分子は共役分子の片側に金属電極との接合部,もう片方にカップリング反応点と1つのPMαCDが連結した分子の自己包接により合成する.接合部は電極界面の種類とフェルミ準位を考慮し,適切に選択する.また,電気化学測定により接合密度を,原子間力顕微鏡及びX線光電子分光により接合状態を,赤外分光により分子配向を,走査型トンネル顕微鏡点接触法により電荷注入効率をそれぞれ評価する(金属電極にはS, Se等,酸化物電極には有機酸).本測定を様々な電極,接合点,共役骨格を有する配向制御プラグ分子に対して系統的に行う.得られた結果をフィードバックし,最適な分子構造を決定し,設計・合成を行う.
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