研究課題/領域番号 |
23K23329
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補助金の研究課題番号 |
22H02061 (2022-2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2022-2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分33010:構造有機化学および物理有機化学関連
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研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
俣野 善博 新潟大学, 自然科学系, 教授 (40231592)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
17,160千円 (直接経費: 13,200千円、間接経費: 3,960千円)
2025年度: 4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2024年度: 4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2023年度: 4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2022年度: 4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
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キーワード | アザポルフィリン / 機能性色素 / 金属錯体 / ラジカル / 光増感剤 / 反芳香族性 / 核置換 / 光触媒 / 光線力学効果 / レドックス触媒 / モノアザポルフィリン / ジアザポルフィリン / 鋳型環化 / 酸化還元 / 芳香族性 |
研究開始時の研究の概要 |
ポルフィリンを母核とする次世代の機能性色素や触媒を設計する上で、meso位が部分的に窒素で置換されたアザポルフィリンは魅力的な化合物群である。本研究では、アザポルフィリン類の合成法を体系化し、meso窒素・中心金属・外周部の置換基が醸し出す物性面での相乗効果を明らかにした上で、アザポルフィリンの特徴が最大限に発揮されるような光増感剤や光レドックス触媒を探索し、医療科学や合成化学分野への展開を図る。
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研究実績の概要 |
2023年度は、meso位の窒素上に置換基をもつ5,10,15,20-テトラアリール-5,15-ジアザポルフィリン(TADAP)および5,10,20-トリアリール-5,15-ジアザポルフィリン(TriADAP)を題材として、その合成および構造―物性相関の解明に取り組んだ。TADAPについては、前年度に亜鉛錯体の脱メタル化によるフリーベース体の一般的合成法を確立したので、今年度は主にフリーベース体の錯形成と軸配位子の交換を利用してケイ素錯体とスズ錯体を合成した。いずれの錯体においても、DAP環の20π/19π/18π酸化還元反応は可逆的に進行し、20π電子系を持つ反芳香族性TADAPや19π電子系を持つTADAPラジカルが大気下で安定に存在することを確認した。また、得られた金属錯体のX線結晶構造解析、紫外/可視/近赤外吸収スペクトル測定、NMR測定、密度汎関数理論計算を行い、DAP環が高い平面性をもつことや、軸配位子が吸収特性や環電流効果に及ぼす影響は比較的小さいことなどを明らかにした。TriADAPについては、窒素上に置換基を持たないDAPのN-アリール化による合成法を確立し、ニッケル錯体と白金錯体の合成に成功したほか、19π電子系を持つDAP二量体における不対電子の非局在化の様式が、meso-窒素上の置換基の数に依存して大きく変化することを明らかにした。さらに、1個のピロール環の代わりにベンゼン環を構成要素として含む核置換5,10-ジアザポルフィリンの錯形成を行い、白金錯体や銅錯体の合成に成功した。得られた成果の一部については、8件の学会発表を行ったほか、2報の論文として報告した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2023年度は、meso位の窒素上に置換基をもつ各種アザポルフィリン誘導体(TADAPとTriADAP)を研究対象として、その合成、構造―物性相関の解明、および機能開拓を計画していたが、脱メタル化、錯形成、meso-窒素上のアリール化を利用して目的物を合成・単離することに成功し、得られた化合物の構造-物性相関の解明も行った。特に、TADAPのフリーベース体の錯形成によるケイ素錯体とスズ錯体の合成に成功したことで、従来の方法では合成が困難であった種々のTADAP金属錯体の姿が明らかとなり、中心金属の特徴を活かした増感剤や金属触媒を構築するための指針を手にすることができた。また、meso-窒素上のアリール化という手法を新たに確立したことにより、TriADAPの合成ルートの幅が大きく広がった。たとえば、DAP二量体の化学修飾ではTriADAP部位を含む2種類の置換体が得られ、meso窒素上の置換の数が二量体の物性に与える影響を系統的に調べることができた。得られた結果については、8件の学会発表を行ったほか、2報の論文として報告済みであり、全体として研究はおおむね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、医療用増感剤や金属触媒の開発を視野に入れ、当初の計画に沿う形で、TADAPやTriADAPを含む各種アザポルフィリン誘導体の金属錯体の合成を系統的に行うとともに、ケイ素・すず・リン錯体を対象として、DAP環外周部と中心金属の軸配位子の化学修飾法を体系化する。具体的には、クロスカップリング反応を利用してアザポルフィリン環のβ位にさまざまな置換基を導入するほか、メタセシス反応による軸配位子の交換を行い、中心金属・外周部置換基・軸配位子がアザポルフィリンの光物性や電気化学特性に与える影響を明らかにする。また、両親媒性と近赤外光応答性を持つ誘導体を合成し、光増感による一重項酸素発生効率や励起状態からのエネルギー移動過程を調べ、アザポルフィリンを医療用増感剤やイメージング材料として活用する道を拓く。さらに、酸化触媒としての展開を図るため、鉄・コバルト錯体を用いた炭化水素の触媒的酸化反応における触媒活性や化学選択性を評価し、等電子構造を持つポルフィリン金属錯体の反応性との比較を行う。なお、反応中間体の検出については、必要に応じて学内外の研究者と協力して測定を行い、研究を推進していく予定である。
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