研究課題/領域番号 |
23K23337
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補助金の研究課題番号 |
22H02069 (2022-2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2022-2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分33020:有機合成化学関連
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
美多 剛 北海道大学, 化学反応創成研究拠点, 教授 (00548183)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
17,420千円 (直接経費: 13,400千円、間接経費: 4,020千円)
2025年度: 2,990千円 (直接経費: 2,300千円、間接経費: 690千円)
2024年度: 3,770千円 (直接経費: 2,900千円、間接経費: 870千円)
2023年度: 4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2022年度: 6,500千円 (直接経費: 5,000千円、間接経費: 1,500千円)
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キーワード | 二酸化炭素 / カルボキシル化 / ラジカルアニオン / 光電子移動触媒 / γ-ブチロラクトン / 電気分解 / 可視光 / インドール / ナフタレン / β-アミノ酸 / 固定化 / 電気化学 / 光化学 / カルボン酸 / アミノ酸 / 量子化学計算 / AFIR法 |
研究開始時の研究の概要 |
申請者の所属する北海道大学化学反応創成研究拠点(WPI-ICReDD)の基幹技術であるAFIR法を初めとする計算化学を巧みに用いることで、大気中に無尽蔵に存在する魅力的な一炭素源であるCO2を原料とする高難度カルボキシル化反応を実現する。具体的には、CO2を用いたβ-アミノ酸やγ-ブチロラクトンの化学合成、ヘテロ芳香環からの脱芳香族化を伴うカルボン酸の合成、および遷移金属触媒を用いカルボキシル化反応を計算化学により設計し、合成化学実験で具現化する。
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研究実績の概要 |
2023年度は、電解還元法を用いたナフタレン類の選択的還元法の開発に取り組んだ。最近、CO2を使用した電気化学的カルボキシル化が多くの注目を集めており、様々な反応が発表されている。その中でもナフタレンの電気化学的なカルボキシル化は1959年にすでに確立されており、選択的に脱芳香族的なジカルボキシル化が進行して1,4-ジヒドロナフタレン誘導体が生成されることが報告されていた。報告者はp-terphenylとH2Oの共存下電解還元法を用いることで、電子求引基が導入されたナフタレン誘導体から、トランス選択的に、1,2-ジ置換された1,2-ジヒドロナフタレン誘導体が得られることを見出した。また、2022年に引き続き、CO2ラジカルアニオンを利用した反応の開発に注力した。具体的には、反応経路自動探索法を用いることで、CO2ラジカルアニオンの反応性を予測した。その結果に基づき、青色LED照射下でギ酸セシウム、光電子移動触媒、HAT触媒を使用し、CO2のラジカルアニオンの付加反応の開発に取り組み、いくつかの新反応を開発することができた。最後に、β-アミノ酸の化学合成に取り組んだ。すなわち、可視光照射下、分子内にアミンとアルケンを有する基質に対してCO2雰囲気下で環化-カルボキシル化を行うことで、β-アミノ酸を合成することに成功した。最終的にファインバブルフロー装置による気液フローシステムを駆使することで、バッチ反応と遜色ない収率でβ-アミノ酸が得られた。これらの成果は、CO2の有効利用に寄与し、持続可能な社会を支えるための有望な技術のひとつとなり得る。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
2023年度の研究では、電解還元法と可視光照射下での光電子移動触媒を用いたカルボキシル化反応の探索に重点を置いて研究に取り組んだ。最初のプロジェクトでは、ナフタレンの電気化学的カルボキシル化反応に着目した。これは1959年に確立されたが、高圧条件下でしか実現せず、また位置選択的な反応が難しいという課題があった。我々は、p-terphenylとH2Oを共存させることで、ナフタレン誘導体の選択的なカルボキシル化を実現した。これにより、トランス選択的に1,2-ジヒドロナフタレン誘導体を合成することができた。次に、CO2ラジカルアニオンを活用した反応の開発に注力した。反応経路予測法の一つであるAFIR法を用いて、新しい反応条件を探索した。青色LED照射下でのギ酸セシウム、光電子移動触媒、HAT触媒を用いた反応系により、CO2ラジカルアニオンの付加を含む新しい反応を多数開発した。一方で、β-アミノ酸の化学合成にも成功した。このプロセスでは、可視光照射下での環化-カルボキシル化反応を活用した。具体的には、アミンとアルケンを含む基質に対してCO2雰囲気下で反応を行い、β-アミノ酸を効率よく合成する方法を確立した。この反応条件をファインバブルフロー装置を用いた気液フローシステムに適用することで、バッチ反応と比べても遜色ない収率で、短時間(3.2分)でβ-アミノ酸を得ることができた。これらの研究成果は、有機合成化学の分野において、新しい反応条件の開発や効率的な合成法の確立に貢献するものと期待される。
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今後の研究の推進方策 |
γ-ブチロラクトン構造は、様々な天然物に広く存在し、有機合成において不可欠な構築要素である。そのため、γ-ブチロラクトンの合成方法の開発は、有機合成化学の分野で非常に重要である。今後の研究の推進方策としては、入手容易でビニルグリニャール試薬から簡単に合成できるアリルアルコールからのγ-ブチロラクトン合成における直接的な合成手法の開発に取り組む。特に、CO2や金属ギ酸塩から生成されるCO2ラジカルアニオンを用いることで、ラジカルヒドロカルボキシル化とそれに続く熱的な環化反応によって合成できると考えられる。加えて、アリルアルコール誘導体としてα,α-ジアリールアリルアルコールを使用した場合、アリール基の1,2-ラジカル移動がCO2ラジカルアニオンの付加と同時に起こることが期待される。初期的な検討結果として、良好な収率で4,5-置換ラクトンが得られることがわかっている。また、反応経路自動探索法(AFIR計算)を用いることで、本反応におけるアリール基の1,2-ラジカル移動と他の副生成物の反応経路を特定できると考えている。
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