研究課題/領域番号 |
23K23349
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補助金の研究課題番号 |
22H02081 (2022-2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2022-2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分33020:有機合成化学関連
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研究機関 | 大阪公立大学 |
研究代表者 |
神川 憲 大阪公立大学, 大学院理学研究科, 教授 (40316021)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
17,420千円 (直接経費: 13,400千円、間接経費: 4,020千円)
2024年度: 5,590千円 (直接経費: 4,300千円、間接経費: 1,290千円)
2023年度: 5,590千円 (直接経費: 4,300千円、間接経費: 1,290千円)
2022年度: 6,240千円 (直接経費: 4,800千円、間接経費: 1,440千円)
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キーワード | 不斉合成 / アライン / 非中心不斉 / 不斉触媒反応 |
研究開始時の研究の概要 |
近年、短寿命反応性化学種であるアラインの反応性を制御し、有機合成の有用な合成素子として積極的に利用する試みが精力的に行われている。本研究課題では、未だ成功例の少ない「アラインを活用した非中心不斉化合物の触媒的不斉合成」を目的としている。また、最近申請者はヘリセニルアラインを用いたPd触媒不斉[2+2+2]交差環化付加反応を行い、三重ヘリセンを高い立体選択性で合成することに成功している 。この際、不斉誘導の複合化、動的速度論的分割の活用が高い立体選択性の発現に大きく寄与したことを踏まえ、その概念を取り入れた独創性が高く、かつ実践的な非中心不斉触媒的不斉合成の創出を目指す。
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研究実績の概要 |
本研究では、これまでに報告例のないアライン中間体を活用したビアリール誘導体の触媒的不斉合成を計画し、検討を行った。2-トリフロメタンスルホニル-3-TMSビアリール誘導体に対して、フッ素アニオン存在下でアラインを発生させると、オルト2置換のビアリールに変換されるために、軸不斉が消失しビアリール軸周りの自由回転が可能なビアリール中間体が発生すると考えられる。そこで、この動的ビアリールアライン中間体一分子とアルキン二分子とキラル遷移金属触媒による [2+2+2] 環化反応が進行すれば新たに芳香環構築され再びオルト3置換ビアリールとなることで、軸周りの自由回転が阻害されて光学活性な軸不斉ビアリールが合成できるのではないかと考えた。同様にしてこのような動的なビアリールアライン中間体二分子とアルキン一分子との [2+2+2] 環化反応がキラル遷移金属触媒存在下で進行すると、今度は2つの軸不斉を有するターアリール誘導体の触媒的不斉合成に展開できる可能性が考えらる。このような計画に基づき、まずはビアリールアライン前駆体にを用いてを2当量のアルキンとの交差環化三量化によりビナフチル誘導体の合成を検討した。その結果、様々な不斉配位子を検討したところ、(S)-QUINAP、(S)-MONOPhos, (R,R) -iPr-DUPHOSの配位子を用いた場合に於いてビアリールアライン:アルキン=1:2の環化生成物が選択的に生成することがわかった。しかしながら、これらの配位子では軸不斉誘導は起こらずにラセミ体を得た。これに対して次に配位子として2座のホスフィン配位子である(S)-BINAPを用いて同様の反応条件にて反応を行ったところ、ビアリールアライン:アルキン=2:1のターアリール環化生成物が得られることがわかった。さらに、major体の収率13%、31%eeで不斉を誘導することに成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
アラインは、その曲がった3重結合に由来して速度論的に極めて不安定な反応性化学種だり、それゆえに高い反応性する不安定中間体である。一方、合成素子としての利用価値が高く、この二十年間で指数関数的に報告例が伸びている。しかしながら、アラインを不斉触媒反応に利用するためには、中性で反応性の高いアラインが立体制御された反応場と十分な相互作用を介して反応が進行する必要があることや、その高い反応性に由来する副反応の併発などがその開発を困難なものとしてきた。今回、我々は、このアラインを活用してこれまでに報告例のない軸不斉ビアリール化合物の軸不斉を制御することに成功した。光学純度は低いものの、アラインを活用した軸不斉合成としては最初の例であり、今後の進展が大いに期待される。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、光学純度の向上を目的として、さまざまな不斉配位子を活用した環化反応を検討する。さらには生成物の構造をX線結晶解析により決定するとともに絶対立体配置の決定も行う。そのために、光学的に純粋な生成物を調製する必要がある。そこで光学的に純粋な生成物を大量合成により供給できる手法を開発することを目指す。また、得られた生成物が立体化学を与える反応機構を理論計算から明らかにする必要があるため並行して検討する。
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