研究課題/領域番号 |
23K23351
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補助金の研究課題番号 |
22H02083 (2022-2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2022-2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分33020:有機合成化学関連
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研究機関 | 学習院大学 |
研究代表者 |
草間 博之 学習院大学, 理学部, 教授 (30242100)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
17,420千円 (直接経費: 13,400千円、間接経費: 4,020千円)
2024年度: 5,460千円 (直接経費: 4,200千円、間接経費: 1,260千円)
2023年度: 5,460千円 (直接経費: 4,200千円、間接経費: 1,260千円)
2022年度: 6,500千円 (直接経費: 5,000千円、間接経費: 1,500千円)
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キーワード | 光反応 / 遷移金属触媒 / カルベン / ラジカル / カルベン錯体 / カップリング反応 / アシルシラン / 遷移金属錯体 / 光異性化 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、次世代の「ものづくり」に要請される革新的かつ高効率的な有機物質合成法の開拓に向けて、「光の作用を活用して発生させた高反応性化学種」を「遷移金属種のもつ特徴的な反応性」を活用して反応制御することで、類例のない独創的な反応系を構築し、これにより既存の手法では実現困難、かつ高効率的な有機分子構築法を開発すべく検討を実施する。
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研究実績の概要 |
本研究は「光の作用により発生させた高反応性化学種」を「遷移金属種の特徴的な反応性」を活用して反応制御することで、既存の手法では実現困難な分子変換法を開発しようとするものであり、具体的には1)アシルシランの光異性化で生じるカルベンを、金属種により活性化された有機分子との反応に活用することで、光のみ、あるいは金属種のみでは実現困難な独創的分子変換法を開発すると共に、2)アシルシランの光異性化で生じるカルベンと金属種の直接反応でカルベン錯体を発生させることで、カルベンの極性転換ならびに反応制御を実現し、触媒的合成反応に利用することを目指している。 本年度は、主として2)に関する検討に注力した。既にアシルシランの光異性化で生じるカルベン種がカチオン性の銅塩と直接反応し、Fischer型ー銅カルベン錯体を発生することを見出していることから、この知見を元に他の金属種との錯体形成について精力的に検討を行った。その結果、1価の金錯体を用いると、シロキシカルベンとの効率的な錯形成が進行することが明らかとなった。生じた錯体は不活性ガス下、低温溶液中では安定であるものの、酸素や温度に対して非常に鋭敏であり、現在までのところ、単離・構造決定には至っていない。しかし低温NMRによる解析では、カルベン錯体に由来すると思われる炭素のシグナルが明瞭に確認される。この結果は、短寿命化学種であるシロキシカルベンが、銅塩だけでなく金塩とも錯形成を行うことを示すものであり、この方法論によるカルベン錯体調製に拡張性があることが明らかになったと言える。今後は、配位子の適切な選択により錯体の安定化・構造決定を目指すと共に、この錯体の各種有機分子との反応性を精査し、シロキシカルベン-金錯体に特有の合成反応の開発に向けて検討を進める計画である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は研究課題として掲げた2つの主題のうちの1つである、「アシルシランの光異性化で生じるカルベンと金属種の直接反応でカルベン錯体を発生させ、これを活性種とする触媒的合成反応を開発すること」に取り組み、1価の金錯体が短寿命化学種であるシロキシカルベンとほぼ定量的に錯体形成することを明らかにした。またこの錯体の反応性を調べるべく、各種有機分子との反応を検討したところ、ある種の複素環類とユニークな反応を起こすことを見出した。この知見を元に今後の研究を展開することで、独創的な分子変換手法の開拓が可能と期待される。従って、本研究課題はおおむね順調に進展していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
前項で記したように、本研究課題では主に2つの課題を掲げて研究を展開しており、これまでの検討により、それぞれの課題について、目的の実現に向けて端緒となる知見を得ることに成功している。従って、この方向性で継続的に研究を展開することで、効率的・独創的な分子変換手法の開拓を目指す計画である。 なかでも、「アシルシランの光異性化で生じるカルベンと金属種の直接反応によるカルベン錯体の発生と触媒的合成反応への利用」について、中心的に検討を実施する計画である。調製に成功している金ーカルベン錯体の反応性の解明、反応制御手法の開拓について徹底して検討を実施し、ユニークな触媒的分子変換反応を開発するとともに、さらに多様な金属種との錯体形成、反応への利用へと研究を展開することで、金属カルベン錯体を反応中間体とする合成化学に新たな方法論を提供することを目指す。
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