研究課題/領域番号 |
23K23360
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補助金の研究課題番号 |
22H02092 (2022-2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2022-2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分34010:無機・錯体化学関連
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
川口 博之 東京工業大学, 理学院, 教授 (20262850)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
17,160千円 (直接経費: 13,200千円、間接経費: 3,960千円)
2025年度: 4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2024年度: 4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2023年度: 4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2022年度: 4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
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キーワード | フェノキシド錯体 / 多座配位子 / 構造制御 / チタン / 錯体 / 遷移金属 / アルカリ金属 / 対イオン効果 / アニオン性錯体 / 窒素錯体 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究の目的は、アルカリ金属イオンを対カチオンとするアニオン性遷移金属二核錯体を反応場として、窒素分子の新しい反応性を開拓することである。二核窒素錯体の反応研究においては、(1) 反応過程におけるN2の脱離、(2) N2の結合様式の制御、(3) 構造・反応性相関の解明、といった課題がある。本研究では、アニオン性二核錯体反応場の特徴-(i) 二核中心への窒素分子の多様な配位様式、(ii) アニオン性錯体の強い逆供与による窒素分子の活性化、(iii) イオン対間の相互作用-を活用し、N2 の分子変換に取り組む。本研究を通して、アニオン性多核錯体を用いた反応場制御の指針を確立する。
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研究実績の概要 |
本年度は、窒素分子がend-on型で金属間を架橋したアニオン性二核錯体とハロゲン化アルキルとの反応を検討した。 3つのフェノキシド基を炭素原子により三脚型で連結した四座配位子を用いてチタン錯体1の合成を行った。このチタン錯体 1にカリウムナフタレニドを反応させたのち、続いて窒素を作用させると窒素錯体2が得られた。錯体1はアニオン性チタン二核錯体であり、チタン金属間を窒素分子がend-on型で架橋している。対カチオンとしてカリウムイオンが分子内取り込また接触型イオン対を形成している。 続いて、錯体2とハロゲン化アルキルとの反応を検討した。錯体2のトルエン溶液にヨウ化メチルを反応させると、窒素配位子の両方の窒素原子でメチル化が進行し、ヒドラジド錯体3が定量的に得られた。塩化ベンジルや2-クロロプロパンなどとの反応を検討したが、窒素分子の脱離が進行し、窒素-炭素結合の形成は観測されなかった。 窒素錯体2とヨウ化メチルの反応をTHF中で行うと、メチル化がさらに進行し、錯体1と共にヨウ化ペンタメチルヒドラジニウムが生成するのが観測された。錯体1とカリウムナフタレニドを窒素雰囲気化で反応させることで、窒素錯体2が再生した。これにより、チタン錯体を反応場として用いることにより、窒素分子とヨウカ化メチルとペンタメチルヒドラジニウム塩へと変換できる合成サイクルの構築を達成した。 次に、ヒドラジド錯体3と二酸化炭素の反応を検討した。ヒドラジド配位子のTi-N結合に二酸化炭素の挿入が容易に進行し、ヒドラジド配位子の各窒素原子が1分子の二酸化炭素によりカルボキシル化された錯体4が主生成物として得られた。 以上、end-on型架橋窒素錯体とヨウ化メチルの反応により、窒素-炭素結合が容易に形成できることを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究目的を達成するための鍵は、二核錯体における窒素分子の配位様式の制御である。本研究では、アニオン性二核錯体の構造・反応を対イオン効果により制御する。本研究を通して現在までに、対イオンとしてカリウムカチオンを持つアニオン性錯体を合成し、窒素分子との反応を検討してきた。さらに、得られた窒素錯体の反応性を調査した結果、反応中間体や生成物が対イオンとの相互作用により安定化されていることを明らかにした。これらの成果は今後の研究を展開するための基盤となるものであり、本研究課題は概ね順調に進捗している。
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今後の研究の推進方策 |
今回、対イオンであるカリウムイオンが錯体の安定性および反応性に影響があることを明らかにした。本研究で用いた錯体を出発に、対イオンを他の1族あるいは2族金属に置き換えることを計画している。これにより、対イオン効果を系統的に調査することが可能になり、本研究を効果的に推進することができる。
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