研究課題/領域番号 |
23K23366
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補助金の研究課題番号 |
22H02098 (2022-2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2022-2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分34010:無機・錯体化学関連
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研究機関 | 関西学院大学 |
研究代表者 |
加藤 昌子 関西学院大学, 生命環境学部, 教授 (80214401)
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研究分担者 |
吉田 将己 関西学院大学, 生命環境学部, 講師 (20712293)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
17,680千円 (直接経費: 13,600千円、間接経費: 4,080千円)
2024年度: 4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2023年度: 4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2022年度: 9,360千円 (直接経費: 7,200千円、間接経費: 2,160千円)
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キーワード | 金属間相互作用 / 発光 / クロミズム / 結晶構造 / ソフトクリスタル / 発光性金属錯体 / 構造制御 / クロミック錯体 / 刺激応答 |
研究開始時の研究の概要 |
金属間相互作用により発現する白金(II)錯体や金(I)錯体の特異な発光は、刺激応答性発光材料、イオン・分子センシング、集合状態や環境を検知する発光プローブとしてますます関心が高まっている。しかし、その本質については未解明な点が多い。本研究では、白金(II)錯体ほかd8金属錯体結晶を用いて金属間相互作用を精密に調べることでその本質に迫り、強発光かつ鋭敏な刺激応答が可能な集積発光の学理とこれに基づく優れた光機能を示す系の構築を目指す。本研究により、電子殻や電子(励起)状態の違いも考慮した金属間相互作用の解明に寄与するとともに、これまで達成できなかった新奇クロミック発光系の開発が期待される。
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研究実績の概要 |
本研究では、d8電子配置を持つ金属錯体を用いて、強発光かつ鋭敏な刺激応答性を示す集積発光系の構築を目指している。1年目の令和4年度は以下の成果を得た。 研究項目A.集積発光性白金(II)錯体の金属間相互作用の自在操作.本研究グループでは、集積制御により赤から青まで多彩な発光色を示すN-ヘテロ環状カルベン(NHC)-白金(II)錯体を構築してきた。本研究では、非対称性をさらに拡張した一連のPt(II)-NHC錯体を新たに合成し、高効率フォトルミネッセンスのみならず、励起光を必要としない摩擦発光(トリボルミネッセンス, TL)を見出し、結晶構造と発光特性の追跡により本系のTLメカニズムを明らかにした。特に、集積発光系の特長を生かして、機械的刺激と蒸気曝露により、色変化を示すクロミックTLを実現したことが特筆される。一方で、集積発光性を示す種々のシクロメタレート型白金(II)錯体結晶において、弾性変形を示す結晶が見出され、結晶の変形現象と発光特性について検討した。特に、2種の白金(II)錯体を組み合わせた共結晶において強発光が実現した。 研究項目B. 5d-4d-3d系列における金属間相互作用の効果の探求と新規発光性の導出.5d8の白金に比べて金属間相互作用が格段に弱くなると考えられる同族(10族)元素のパラジウム(4d)、ニッケル(3d)について、Pt(II)錯体と対応させながらその効果を調べる目的で、白金錯体に加えて、対応するパラジウム(II)錯体を構築し、Pt/Pd比を変えた混晶の作製を行った。その結果、混合比率に応じて発光色変化をすることを見出した。加えて混晶により発光量子収率が格段に向上する傾向も見出された。発光スペクトルと集積系内でのエネルギ―移動速度との関係が興味深いが、どのように積層しているかはその積層パターンは不明であり、今後検討を続ける。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初計画に従い、研究項目Aについては、集積発光性白金(II)-NHC錯体のTLとメカノ/ベイポクロミックTL発光という新たな発光特性の発現と機能解明に成功した。本成果は、クロミックトリボルミネッセンスの論文として、英国化学会のChemical Communidationsに投稿、現在修正段階にあり、間もなく受理される予定である。また、弾性変形を示す発光性シクロメタレート型白金(II)錯体結晶については、英国化学会のDalton Transactionsに論文が受理された。2種のシクロメタレート型錯体を組み合わせた共結晶において、弾性変形をしながら高い量子収率を示す結晶が得られたことから、高評価を得られているが、集積構造と発光性についての解明を構造化学的な観点からさらに精密に進めている。一方、ダブルデッカー/トリプルデッカー変換型の白金錯体については、種々の合成法を試みたが純品を得ることに困難な状況が続いている。研究項目Bについては、白金(II)錯体とパラジウム(II)錯体の共結晶で新たな発光特性が見出され、今後の展開が期待できる。
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今後の研究の推進方策 |
研究項目A. 集積発光性白金(II)錯体の金属間相互作用の自在操作. 当初計画した架橋配位子により集積したダブルデッカー/トリプルデッカー変換型の白金錯体の構築については、種々の構造が混在して生成し、精製にはなお検討が必要であることが判明した。次年度は自己集積系に的を絞り、集積構造のフレキシビリティを自在に制御することを目指して、置換基に種々の長さのアルキル基を導入した白金(II)-NHC錯体を構築する。錯体結晶の柔軟性の効果を検証しながら、集積発光色を自在に操作できる刺激応答クロミック系の導出を行う。また、共結晶系についてもさらに探索を進める。 研究項目B. 5d-4d-3d系列における金属間相互作用の効果の探求と新規発光性の導出. 今年度見出した白金(II)とパラジウム(II)錯体の混晶系について、混合比率に応じた発光色変化の原理は未解明である。発光スペクトルと集積系内でのエネルギ―移動速度との関係に興味がもたれるが、結晶内での白金錯体とパラジウム錯体がどのように積層しているか、積層パターンを明らかにする必要がある。そこで、結晶構造と金属イオンの分布について詳細な調査を進める。また、陽イオン錯体と陰イオン錯体の組み合わせによる異種金属複塩型錯体の構築も行い、金属間相互作用と発光状態の関係を明らかにする。
研究項目A,Bともに、単結晶および粉末X線結晶構造解析、発光スペクトル、発光寿命、発光量子収率の各種分光学測定を実施するとともに、(TD)DFT法による理論的アプローチも進める。計算には、引き続き岡崎計算科学センターのスーパーコンピュータを利用する予定である。
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