研究課題/領域番号 |
23K23373
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補助金の研究課題番号 |
22H02105 (2022-2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2022-2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分34020:分析化学関連
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研究機関 | 山梨大学 |
研究代表者 |
井上 久美 山梨大学, 大学院総合研究部, 准教授 (20597249)
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研究分担者 |
鈴木 孝明 群馬大学, 大学院理工学府, 教授 (10378797)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
17,550千円 (直接経費: 13,500千円、間接経費: 4,050千円)
2024年度: 4,810千円 (直接経費: 3,700千円、間接経費: 1,110千円)
2023年度: 4,810千円 (直接経費: 3,700千円、間接経費: 1,110千円)
2022年度: 7,930千円 (直接経費: 6,100千円、間接経費: 1,830千円)
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キーワード | ケミカルイメージング / バイオイメージング / バイポーラ電気化学 / 微小電極アレイ / 電気化学センサ / マイクロ電極アレイ / 三次元フォトリソグラフィ / カソード電気化学発光 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では、細胞間コミュニケーションの解明のための化学イメージングシステム開発の研究を行う。従来の電気化学顕微鏡の時間分解能と空間分解能の両立問題を解決する革新的な方法として発案し、原理検証を完了した「バイポーラ電気化学顕微鏡」について、高感度化、高解像度化、高速化のための研究を進め、神経細胞からのドーパミン放出など、単一細胞レベルの生体機能イメージングを行える革新的な観察プラットフォームとする。さらに、発光試薬の開拓や電極へのバイオ分子修飾により検出可能分子種の拡張を図り、広く生命科学研究に利用できる手法に発展させる。
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研究実績の概要 |
高時間分解能達成のための高感度化の検討として、三次元リソグラフィ法のひとつである回転露光技術によって作製したテーパー孔アレイを用いる評価について、電極材料充填法の改善により均一発光の改良が進み、理論的な検証ができる状況が整った。その結果、検出溶液濃度条件によっては、理論通りの高感度化ができないことが分かった。このことを検証するため、アレイではなく単一バイポーラ電極系でバイポーラ電位を計測する詳細な検討を実施した。その結果、ルミノフォアの共反応物質濃度が重要であり、これは発光強度と二律背反的な関係にあるため、感度上昇のためには最適条件の検討を理論的および実験的に進める必要があることが分かった。 検出可能分子を拡張するための研究として、PDI-CH3/K2S2O8をカソーディックルミノフォアに用いる研究について、発光機構が従来の論文報告とは異なる機構であることがわかり、論文によりこれを提唱した。乳酸オキシダーゼ修飾電極とバイポーラ電気化学を組み合わせた手法について、駆動電極を発光させる方法での乳酸定量に成功した。 多孔質アルミナ膜の孔の検討について、共同研究企業において安定的に均一サイズの垂直貫通孔をもつ膜の作製検討が進み、代表研究者らによりこの孔へのカーボンペースト充填法の検討も進んだ。生きている細胞近辺の酸素濃度プロファイル取得についても検討を実施し、培養細胞加えて、動物組織や受精卵等への応用のための協力者を新たに得ることもできた。均一発光を得るために均一に導電性材料をマイクロ孔アレイに充填する方法として昨年度の成果である油圧卓上プレス機を用いる充填法(特許出願済)に加えて、膜処理等の効果を発見した。また、ふき取り法の検討についても、これまでの綿棒ふき取りでは難しかった膜表面のカーボンペーストを再現性良く拭きとれる方法の開発が進んだ。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画に加えて、バイポーラ電気化学系の動作について基礎的かつ重要な知見を得ることができた。また、多孔質アルミナの検討も進展し、高密度バイポーラ電極アレイの作製の検討が進んだほか、均一に導電性材料をマイクロ孔アレイに充填する方法の検討も進み、より正確な濃度分布イメージングが可能な技術開発が進んだ。他方、細胞から放出されるレベルの濃度のドーパミン定量については、PDI-CH3/K2S2O8をカソーディックルミノフォアに用いる検討の結果、発光機構が従来報告されているものとは異なること、カーボンペーストより金ペーストを利用すると輝度が大きく向上することを発見したが、金ペーストの安定性の問題により達成できていない。24年度に電解セルを購入し、電子スピン共鳴装置(ESR)を用いてPDI-CH3/K2S2O8の発光機構をより詳細に確認し、さらに電極材料やルミノフォアの検討を進めることで当初計画通り、生細胞からのドーパミン検出を実現する。
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今後の研究の推進方策 |
高時間分解能達成のための高感度化の検討として、テーパー比とルミノフォア/共反応物質の濃度と検出感度との関係に関する検討を実施し、必要感度を得るための最適化に関する知見を得る。 検出可能分子を拡張するための研究として、PDI-CH3/K2S2O8をカソーディックルミノフォアに用いる検討を進め、細胞から放出されるレベルの濃度のドーパミンを定量できることを示す。電解セルを導入して、電子スピン共鳴装置(ESR)を用いてPDI-CH3/K2S2O8の発光機構の詳細を解明する。さらに、神経様細胞を用いてバイオ試料からのドーパミン検出が可能なことを示す。また、脳のエネルギー物質として重要な乳酸をイメージングするために、バイポーラ電極端での発光により乳酸定量ができる方法の検討を行う。 これらに加えて、多孔質アルミナ膜の孔の検討など、より高密度な電極アレイで均一発光を得るための電極充填法や発光基質の検討をさらに進める。そして、実証試験として、生きている細胞近辺の酸素濃度プロファイルを本手法で求めて、細胞の呼吸活性を算出する検討を進める。
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