研究課題/領域番号 |
23K23375
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補助金の研究課題番号 |
22H02107 (2022-2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2022-2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分34020:分析化学関連
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研究機関 | 広島大学 (2024) 大阪大学 (2022-2023) |
研究代表者 |
二宮 和彦 広島大学, 自然科学研究支援開発センター, 教授 (90512905)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
12,480千円 (直接経費: 9,600千円、間接経費: 2,880千円)
2025年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2024年度: 3,380千円 (直接経費: 2,600千円、間接経費: 780千円)
2023年度: 3,120千円 (直接経費: 2,400千円、間接経費: 720千円)
2022年度: 4,810千円 (直接経費: 3,700千円、間接経費: 1,110千円)
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キーワード | 負ミュオン / 同位体分析 / 非破壊分析 / ガンマ線 / 核反応 / ミュオン原子 |
研究開始時の研究の概要 |
同じ元素であるが、質量(重さ)の異なるものを同位体という。同位体間では、化学的な性質は基本的に同じであるが、環境によりわずかに同位体比に変化が生じることが知られている。これにより年代測定や、元素の由来、化学的な履歴についての情報を得ることができる。同位体分析は、これまで試料を破壊することによってのみ達成されてきた。本申請課題では、これを非破壊で成し遂げる、素粒子ミュオンを用いた新たな方法を開発する。本研究の成功により、これまで同位体分析をしたくてもできなかった、貴重な文化財などへの分析が可能になると期待され、素粒子と文化財という文系理系の垣根を超えた分野融合研究が可能となる。
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研究実績の概要 |
本研究では、スイスのポールシェラー研究所で供給される大強度の負ミュオンビームを実験に利用した。本年度は、申請書に基づき、種々のテスト測定と鉛の同位体に注目した実験を実施した。まずは高効率のX線、ガンマ線システムをポールシェラー研究所において構築し、その評価のためにコバルトをはじめとするいくつかの金属単体へのミュオン照射を行い、放出されるミュオン特性X線、および即発的に放出される核吸収ガンマ線の測定を行った。さらに質量数206, 207, 208の鉛の濃縮同位体試料に対してミュオン実験を実施した。 それぞれの実験で得られたスペクトルから、ミュオン特性X線とガンマ線の強度の解析を行った。ミュオン特性X線の測定からはミュオンの停止数を、ガンマ線の強度からはミュオン原子核反応により生成した励起準位の分布を求めた。 コバルトのミュオン照射結果を解析することにより、本研究の結果は過去に報告されている文献の結果と一致することが明らかになった。また、過去の文献では報告されていない、強度の低いピークについても定量でき、ミュオン原子核反応により生成する核準位の情報を更新できただけでなく、その制度についても上げることができた。 鉛の濃縮同位体の結果を解析することで、各同位体でできる生成核分布の違いを明らかにした。また、ミュオン特性X線で得られる同位体シフトについても観測し、今後の実験において必要な統計の見積もりなど、有用な基礎データが得られた。 質量数204の鉛の濃縮同位体試料については、次年度以降の実験を想定して調達を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度で目的としていた、鉛に対するミュオン特性X線の詳細な測定と、即発的に放出される核吸収ガンマ線の分析に成功した。これらの実験データは今後の同位体が混合した鉛の実試料の分析において必要となる、ミュオン捕獲数とミュオン特性X線強度の関係、さらには生成する核準位の分布といった、基礎的な知見をもたらした。これにより次年度以降の実験において必要なビームタイムの見積もりなど、精度を上げることができた。また、次年度以降分析を予定している、質量数204の鉛の濃縮同位体試料についても必要量の試料を調達することができた。
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今後の研究の推進方策 |
今年度得られたデータについて、主要なものはすでに解析済みであるが、強度の弱いミュオン特性X線やガンマ線の分析は完了しておらず、引き続きデータの解析を進める。また、関連してこれらの実験データの論文化を進める。 今回得られた基礎データから今後の分析における必要な統計などの情報が得られた。これらの実験データをもとに、スイスポールシェラー研究所、および茨城県J-PARCでのミュオン実験を進めていく。 未取得である質量数204の鉛の濃縮同位体試料の分析を行うとともに、同位体が混合された天然同位体比の鉛試料、また天然物であるが平均的な同位体組成とは異なる鉛試料の分析を進め、これらの同位体比の違いがミュオン分析により区別可能であることを実証する。さらには、対照実験として質量分析による鉛の同位体比の定量を行う。
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