研究課題/領域番号 |
23K23377
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補助金の研究課題番号 |
22H02109 (2022-2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2022-2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分34020:分析化学関連
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
チッテリオ ダニエル 慶應義塾大学, 理工学部(矢上), 教授 (00458952)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
17,420千円 (直接経費: 13,400千円、間接経費: 4,020千円)
2024年度: 5,330千円 (直接経費: 4,100千円、間接経費: 1,230千円)
2023年度: 5,070千円 (直接経費: 3,900千円、間接経費: 1,170千円)
2022年度: 7,020千円 (直接経費: 5,400千円、間接経費: 1,620千円)
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キーワード | CRISPR/Cas / 核酸分析 / 比色分析 / 分析デバイス / 高感度 |
研究開始時の研究の概要 |
外部機器を利用した核酸増幅に頼らず、簡単なデバイスで十分に低い検出限界を達成するため、分析に必要なすべての機能を紙に統合した2段 階の酵素増幅を利用する。まず第1段階において、CRISPR/Cas酵素(特異的に核酸を識別し、周囲の一本鎖DNAまたはRNAを無差別に切断する)が 、ターゲット核酸の存在下で、ALP酵素(基質と反応することで色変化が生じる)で標識された複数の一本鎖DNAまたはRNAを切断する。その後自 動で第2段階に入り、ALP酵素がリリースされ、強い色変化を引き起こす。その結果、PCRなどの機器を用いて核酸を増幅せず、少量のターゲッ ト核酸で、十分な色変化を引き起こすことができる。
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研究実績の概要 |
2023年度ではCRISPR/Casを用いたバイオセンサーの開発及び紙上での保存安定性について評価した。 まずバイオセンサーの開発においてユーザーフレンドリーなデバイスを実現するために、当該デバイスを使用する際に、本来ユーザー自身が操作するインキューベーションを自動でコントロールされる仕組みを試みた。ポリビニルアルコール(PVA)の水溶液の中に徐々に溶ける性質を利用し、臨時バルブ機能を担わせた。PVAは酢酸ビニルを重合し、得られたポリビニル酢酸を鹸化したものである。分子量及び鹸化度を検討し、計4種類のPVAを試みたところ、膜が良好な剛性を示した膜を作成し、約30分程度完全に溶液に溶け込み、流路を開通する。 また、将来的にスマートフォンを用いて今までの目視定性分析から定量分析を達成するために、検出部と統合できる3Dモデルを設計した。検出性能を確認するため、酵素の着色と同じ吸収波長を有する色素及びLEDを光源として用いて、吸光光度を測定した。その結果、良好な線形関係が得られ、実サンプルに利用できると判断した。 一方、CRISPR/Casを利用した分析デバイスは、反応に関与する全ての試薬を予め支持体に保存する必要があるため、本年度では紙を支持体とした基礎評価と検討を行った。乾燥方法、保存方法及び保存条件について、以下のファクターを比較したところ、WF1を用い、スクロースを添加した自然乾燥させ、冷凍保存したデバイスが最も最適な条件と定めた。 ・乾燥方法:自然、加熱、凍結乾燥 ・保存方法:室温、冷蔵、冷凍保存 ・保存条件(添加剤):スクロース、トレハロース ・保存条件(紙支持体):Whatman(WF)1、WF4、Advantech 5C また、作成したデバイスを異なる温度において反応の進行を確かめ、耐熱性が確認された。今後の核酸増幅法と併用することによって、さらなる感度の向上が期待される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
よりユーザーフレンドリーなデバイスを実現するために、2点の工夫を施した。 1.反応のインキュベーション時間をユーザーに委ねることなく、水溶性ポリマーを用いてバルブを作成し、反応時間を自動的にコントロールすることを実現した。 2.最終的な結果判定は目視で色変化の有無を変化するだけではなく、スマートフォンを用いた検出を確立し、低濃度でも色の変化を定量的に分析できるアダプターを作成した。 更に、CRISPR/Casシステムが紙上での基礎検討から、この分野のポテンシャルと実用可能性を証明した。
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今後の研究の推進方策 |
2024年度では、まず水溶性ポリマーが溶解する時間のばらつきを抑えることに努力をかける。本研究では、水溶性ポリマーのバルブが開通してから、最後の着色反応が進行し、シグナルを表す。そのため、水溶性ポリマーの溶解時間が直接酵素反応の時間に関与し、色強度に影響を与える。よって、水溶性ポリマーが溶解する時間を正確にコントロールすることが、最終的にな誤差を低減する手段として有効である。 次に、2023年度で設計されたデバイスを用いて、全てを統合した検出を行い、スマートフォンで測定した定量分析の結果を吸光光度計の結果を比べ、解析やデータを分析の手法を最適化し、同等なレベルの検出下限を達成することを目指す。 国内及び海外学会を参加し、2023年度の研究成果を発表する。
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