研究課題/領域番号 |
23K23378
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補助金の研究課題番号 |
22H02110 (2022-2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2022-2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分34020:分析化学関連
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研究機関 | 同志社大学 |
研究代表者 |
橋本 雅彦 同志社大学, 理工学部, 教授 (20439251)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
17,290千円 (直接経費: 13,300千円、間接経費: 3,990千円)
2024年度: 5,980千円 (直接経費: 4,600千円、間接経費: 1,380千円)
2023年度: 5,330千円 (直接経費: 4,100千円、間接経費: 1,230千円)
2022年度: 5,980千円 (直接経費: 4,600千円、間接経費: 1,380千円)
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キーワード | ドロップレットデジタルPCR / マイクロ流体デバイス / ドロップレット / デジタルPCR / マイクロフルイディクス / ド ロップレット・デジタルPCR (ddPCR) |
研究開始時の研究の概要 |
ドロップレット・デジタルPCR (ddPCR) は、シングルコピーレベルの極微量DNAの検出と検量線に依存しない絶対定量を可能とする革新的核酸定量分析法である。ところが、ddPCR 分析では、偽陽性とも偽陰性ともつかないシグナル強度を示す、通称‘ Rain ’と呼ばれるドロップレットが発生してしまうため、定量結果には一定の‘ 不確かさ’が含まれてしまう。本研究では、現行のddPCRを完全な定量真度(定量値の正しさ)を有した核酸分析法へと進歩させるために、Rainの発生原因の解明とその発生を抑制する手法の確立を試みる。
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研究実績の概要 |
ドロップレットデジタルPCR(ddPCR)プロセスにおいて、最も時間がかかる工程はPCR増幅ステップである。したがって、PCR増幅ステップに要する時間を短縮することによって、ドロップレットPCR分析の迅速化が可能となる。研究代表者は、2022年に実施した研究において、ddPCRの3つの主要工程間においてマニュアル的なドロップレットのハンドリングが不要なマイクロ流体ddPCRカートリッジを新奇に作製した。 PCR反応液全体の温度を迅速に変化させることができれば、PCR増幅熱サイクルにおける変性およびアニーリング段階の温度保持時間を、本質的に排除できることが数十年前に実証されている。そこで、そのような迅速な温度サイクルプロトコルの適用を容易にするマイクロ流体デバイスが、多くの研究グループによってこれまでに開発されており、PCRに必要な時間が大幅に短縮されてきた。しかし、マイクロ流体ddPCRでは、ドロップレット内で単一分子からのPCR増幅が保証される必要があるため、迅速な温度サイクルを適用したアッセイの高速化に関する研究が制限されてきたのが実情であった。 研究代表者が開発した上記のマイクロ流体カートリッジは、薄いガラススライド上にドロップレットが配置され、一般的なPCRサーマルサイクラーに設置して使用することが可能である。研究代表者は、本カートリッジの構造上の特性を鑑み、迅速な温度サイクルを適用した場合であっても単一分子からの高速ドロップレットPCR増幅が達成されるという仮説を立て、研究を遂行した。その結果、30サイクルをわずか22分(40秒/サイクル)で完了させる温度サイクルを適用した場合であってもドロップレット内で単一分子からのPCR増幅が可能であることを明らかとした。この結果は、マイクロ流体ddPCRアッセイの高速化にブレークスルーをもたらした研究成果として注目に値する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究代表者が開発したマイクロ流体カートリッジは、市販の熱サイクラーを使用してドロップレットPCRを迅速かつ簡単に実行できる点において競合するマイクロ流体カートリッジよりも優位である。カートリッジ内に配置されたドロップレットのサイズが小さいため、これらのドロップレットの温度は、年々進化する市販のサーマルサイクラーの高速な加熱および冷却速度に追随できる可能性がある。したがって、本マイクロ流体カートリッジの基本的な構造の変更を必要とせずに、将来的にはさらに高速なドロップレットPCRが達成されると予想される。さらに、本カートリッジ内のPCRチャンバーは、安価なポリカーボネートプレートを両面テープで薄いガラスに貼り付けるだけで作製されているため、非常に安価であり、一度きりの使い切り消耗品としての使用が十分可能である。 以上のことから、おおむね当初の計画とおりに進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
上記したマイクロ流体カートリッジを用いて一分子も見逃さない変異型アレルの検出が、Rainドロップレットの発生を伴うことなく可能であるかを検証する。また、リアルタイム定量PCR法により得られた解析結果との比較・評価も実施する。さらに、ドロップレット内PCRにおける反応ボリュームとPCR増幅の忠実性との相関を詳細に調査することで反応場サイズに依存した酵素反応の特異性を探索する。
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