研究課題/領域番号 |
23K23385
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補助金の研究課題番号 |
22H02117 (2022-2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2022-2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分34030:グリーンサステイナブルケミストリーおよび環境化学関連
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
林 大和 東北大学, 工学研究科, 准教授 (60396455)
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研究分担者 |
久保 正樹 東北大学, 工学研究科, 教授 (50323069)
成田 一人 大阪教育大学, 教育学部, 准教授 (50404017)
吉岡 聰 九州大学, 工学研究院, 助教 (50452818)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
17,030千円 (直接経費: 13,100千円、間接経費: 3,930千円)
2024年度: 4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2023年度: 4,420千円 (直接経費: 3,400千円、間接経費: 1,020千円)
2022年度: 8,320千円 (直接経費: 6,400千円、間接経費: 1,920千円)
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キーワード | サステナブル / 超音波 / プロセッシング / ナノ粒子 / 金属 / ガリウム / 酸化ガリウム / 低温合成 / ヒドラジン / 酸化銀 / 担持 / ナノコンポジット / SDGs / 金属ナノ粒子 / 酸化物ナノ粒子 / 合金ナノ粒子 / 室温 / キャビテーション / 固液系 |
研究開始時の研究の概要 |
低融点のバルク金属をアルコール中で超音波照射すると、金属ナノ粒子が生成する。この現象は金属固体とアルコール溶媒の界面において、超 音波キャビテーションの高温高圧のホットスポットの発生時に、局所的に金属が分解、溶媒中に溶解し、消滅後の室温常圧に戻った過飽和状態 で金属ナノ粒子が析出する可能性が示唆されている。これに対し、学術的な観点から金属(固体)-溶媒(液体)の組み合わせにおける超音波(気体 )の物理化学的作用を理論的・実験的に解析を行い、また 超音波固液系反応場における、現象と材料の構造と特性を予測し、室温で廃棄物が 発生しないSDGs指向の新しい金属ナノ粒子合成プロセスを構築する。
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研究実績の概要 |
本年度は、超音波固液系反応場における金属ナノ粒子が生成する金属と有機溶媒の組み合わせの探索に関する研究開発を実施し、(1)金属と有機溶媒と超音波照射による反応場の解析と(2)生成したナノ材料の評価に取り組み、(3)超音波固液系反応場における現象の解明と体系化及び(4)生成した金属ナノ粒子の組成・組織・構造の評価を行なった. 各種単金属だけではなく、合金粒子と各種有機溶媒の組み合わせにおける超音波照射の影響を調査した.金属ドープした金属ガリウム合金におけるヒドラジン水和物溶媒中における超音波照射実験から、室温でドープした金属が粒子表面に析出した酸化ガリウム粒子が生成する金属種、また室温でドープした金属が固溶した酸化ガリウムナノ粒子が生成する金属種が存在することを見出し、合成するプロセスを開発した. これらの生成形態の違いは、ドープした金属種の酸化還元電位電位の貴卑によって異なる傾向を見出した. また本来、ヒドラジンは還元剤であるが、本系においては、酸化剤の振る舞いをする. これは、ヒドラジンが、ガリウムが超音波照射中にオキシ水酸化ガリウムに反応するのを抑制するスカベンジャーとして作用し、ガリウムが溶媒中の水分子の酸素と直接反応するためであると結論付けられた. ガリウムは、ヒドラジン水和物100℃では酸化しないが、冷蔵庫などの低温中では、酸化しやすくなる現象を発見した. これらの成果は、3報の論文にまとめられた. 他にエタノール溶媒中の酸化銀粒子に超音波照射を行い、分散剤の使用なくチタン酸バリウム粒子上に30vol.% の添加量にも関わらず、平均粒径が27 nm の銀ナノ粒子を担持するプロセスを開発した. このチタン酸バリウム/銀ナノコンポジット粒子は、従来の300℃以上低い温度で焼結が可能で、誘電率がチタン酸バリウム単相の3倍向上することを明らかにした.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
2年度目は、初年度に発見した金属ガリウムの超音波照射における、様々な他金属ドープによる合金ナノ粒子化や金属ドープ酸化物ナノ粒子が室温で析出する現象を、理論的に実験的に明らかにし、3報を論文誌に投稿し、掲載された. また金属の超音波照射については、金属ガリウムだけでなく、他の金属や合金への溶媒依存性の照射データも蓄積し、データベース化している. 特に2年度目は、様々な組成のはんだ合金(スズ系合金)のアルコール溶媒における超音波照射依存性を検討し、ナノ粒子が析出する現象を見出した. 合金ナノ粒子の合成は、金属イオンの還元電位が異なることから、低温での化学合成では非常に困難であり、この室員ではんだナノ粒子析出する現象は、応用価値が高いものである. またアルコール中の金属酸化物(酸化銀)への超音波照射による担持物への金属ナノ粒子析出現象を応用した、キャッピング剤フリーで高濃度(30vol.%)の銀ナノ粒子をチタン酸バリウム上に担持するナノコンポジット化技術を開発した. キャッピング剤フリー・酸化物・高濃度で、銀ナノ粒子担持コンポジット粒子を室温で、作製できるということは、廃棄物が発生しなく低温・高効率で材料合成が可能ということであり、SDGs達成のために有用であると考えられる。 以上から本研究は、当初の計画以上に進んでいるだけでなく、当初の計画では想定されなかった、超音波固液系ナノ粒子合成プロセスにおける新しい現象の発見と現象のだけでなく、実用的な結果が多く得られており、今後の研究展開にも大きな期待が持てる状況である。
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今後の研究の推進方策 |
2年間、様々な金属や物質に超音波照射することにより、超音波反応場における金属と溶媒の性質を理解するために、金属ナノ粒子が生成する条件を探索し、各種なデータを蓄積し、その現象を解明するとともにその現象を利用した応用技術を開発した. 超音波プロセスは、低温短時間などの高環境性でナノ材料を合成できるだけではなく、その非平衡な反応場から特異な結晶構造を有する場合が多いと考えられている. 最終年度は、2年度に引き続き金属と有機溶媒の組み合わせによる超音波照射効果の検討をデータベース化するだけでなく、この超音波の非平衡反応場の解析をハイスピードカメラによるその場観察や計算科学によって行い、また超音波照射により生成した金属ナノ粒子の組成・組織・構造を電子顕微鏡や、特に東北大学に設置された放射光施設であるナノテラスを利用し構造解析することによって、詳細に検討する. 超音波固液系反応場の金属ナノ粒子合成プロセスの物理化学を探索構築するとともに、SDGsに対応するサステナブルなナノ材料合成応用技術を開発する.
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