研究課題/領域番号 |
23K23388
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補助金の研究課題番号 |
22H02120 (2022-2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2022-2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分34030:グリーンサステイナブルケミストリーおよび環境化学関連
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
中村 敏浩 京都大学, 国際高等教育院, 教授 (90293886)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
17,550千円 (直接経費: 13,500千円、間接経費: 4,050千円)
2025年度: 2,340千円 (直接経費: 1,800千円、間接経費: 540千円)
2024年度: 2,340千円 (直接経費: 1,800千円、間接経費: 540千円)
2023年度: 3,380千円 (直接経費: 2,600千円、間接経費: 780千円)
2022年度: 9,490千円 (直接経費: 7,300千円、間接経費: 2,190千円)
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キーワード | 気液界面プラズマ / 炭素固定 / 誘電体バリア放電 / プラズマ反応場 / 大気圧プラズマ / プラズマ化学 / 窒素固定 |
研究開始時の研究の概要 |
二酸化炭素の削減・固定化に向けて、さまざまな技術開発の必要性が高まっている。本研究の目的は、高エネルギー効率で二酸化炭素を物質変換できる革新的気液界面プラズマ反応場を開発することである。具体的には、種々の分光学的手段を駆使して気液界面プラズマを診断することにより二酸化炭素を原料に用いた物質合成・変換の反応メカニズムを解明し、高エネルギー効率で物質合成・変換できる最適な反応条件を見出す。さらに、気液界面を構成する気体と液体を系統的に変えて反応を設計し、二酸化炭素以外の気体を原料とした新たな気液界面プラズマによる物質変換反応も開拓し、プラズマ反応生成物の医療・農業分野への応用を提案する。
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研究実績の概要 |
二酸化炭素の削減・固定化に向けて、さまざまな技術開発の必要性が高まっている。本研究では、高エネルギー効率で二酸化炭素を物質変換できる革新的気液界面プラズマ反応場を開発することを目標に研究を進めている。その目標達成のためには、気液界面プラズマ反応の特性(プラズマパラメータ、活性種の種別・空間分布・寿命など)の定量評価を行い、それに基づく反応制御手法を確立することが必要となる。この反応制御手法を確立するために必要な実験データを取得・蓄積するために、種々の分光学的手段を駆使した気液界面プラズマの診断を進めた。 これまでに我々は、独自に開発した水中密閉型誘電体バリア放電を活用することによって、二酸化炭素から消毒・殺菌に有用な物質への変換が可能であることを見出しており、この知見を出発点にして研究を進めた。水中密閉型誘電体バリア放電方式では、大気圧プラズマでは避けがたい空気の混入の影響を抑制でき、そのように設定した反応場において、二酸化炭素の有機過酸化物への物質変換に適した反応条件の検討を進めた。また、気液界面プラズマ反応の生成物に対する振動分光分析による検出・同定に取り組み、二酸化炭素と水との反応により新たに生成した有機化合物の構造解析を進めた。二酸化炭素と水から成る反応場に加えて、空気(窒素)と水から成る反応場についても実験を進め、硝酸、亜硝酸、アンモニア等の活性窒素種の合成に適したプロセス条件の探索も進めた。さらに、本研究において気液界面プラズマ反応装置のために開発した大気圧プラズマ源は、透明導電膜などのこれらの高機能薄膜の表面改質への応用にも好適であることから、大気圧プラズマ処理を施すのに適した薄膜試料の作製と構造・物性評価も合わせて行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は、気液界面プラズマ反応の特性(プラズマパラメータ、活性種の種別・空間分布・寿命など)の定量評価を中心に据えて研究を進めた。プラズマ放電からの紫外~赤外域での直接発光分光測定や、気相反応生成物の紫外吸収分光測定による基礎的実験データの取得を皮切りに、低密度の反応生成物の検出・同定のために導入した長光路多重反射セルを用いた赤外吸収分光測定にも取り組み、気相反応の分光診断を進めた。これらの気相反応診断法の導入により、次年度以降に気液界面プラズマを用いた新規反応プロセスによる選択合成条件の最適化のための作業を本格化させるための準備を整えることができた。また、液中に捕集した気液界面プラズマ反応生成物についても、紫外吸収分光分析や比色分析に加えて、振動分光分析による構造解析も進めた。さらに、本研究において気液界面プラズマ反応装置のために開発した大気圧プラズマ源による高機能薄膜の表面改質への応用のための取り組みとして、大気圧プラズマ処理を施すのに適した薄膜試料の作製と構造・物性評価も合わせて進めることができた。以上の理由により、おおむね順調に進展していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
気液界面プラズマのその場分光診断をさらに進め、液相に捕集した反応生成物を検出・同定した結果との相関関係を解析したデータの蓄積を進める。具体的には、気相反応生成物について、紫外吸収分光測定や発光分光測定に加えて、長光路多重反射セルを用いた赤外吸収分光測定による検出・同定の作業をさらに進める。また、液相反応生成物については、紫外吸収分光分析や比色分析による同定に加えて、振動分光法による有機化合物の構造解析をさらに進める。これらのデータを駆使して、気液界面プラズマ反応のメカニズムの解析をより詳細に行い、二酸化炭素から有用な有機化合物を生成するための気液界面プラズマ生成条件の最適化を進める。 また、二酸化炭素以外の気体を原料に用いた新たな気液界面プラズマによる物質変換反応の開拓についても、さらに推進する。特に、農業分野への応用を視野に入れて、気液界面プラズマによる新たな窒素固定法の開拓に焦点を当てて研究を進める。プラズマ生成条件(電極構造、放電駆動電圧、周波数、および、デューティ比など)を制御することにより、さまざまな窒素化合物の生成量の比が系統的に変化することを確認しており、これらの知見に基づいて、特に、硝酸、亜硝酸、アンモニア等の活性窒素種について高い生成選択比が得られるプロセス条件を見出す。そのために、気液界面プラズマプロセスにおける「(1)気相での反応過程」、「(2)液相への溶解過程・反応過程」、「(3)気相から液相への輸送過程」の各過程がプロセス全体に及ぼす影響(寄与)を評価する基本的な作業にも取り組み、プロセス条件の最適化のための指針を確立するための解析を進める。
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