研究課題/領域番号 |
23K23390
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補助金の研究課題番号 |
22H02122 (2022-2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2022-2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分34030:グリーンサステイナブルケミストリーおよび環境化学関連
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
光藤 耕一 岡山大学, 環境生命自然科学学域, 准教授 (40379714)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
17,680千円 (直接経費: 13,600千円、間接経費: 4,080千円)
2024年度: 4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2023年度: 4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2022年度: 9,360千円 (直接経費: 7,200千円、間接経費: 2,160千円)
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キーワード | 有機電解合成 / 有機合成化学 / 炭素ーヘテロ原子結合 / 有機電気化学 / ヘテロチエノアセン / 有機電解 / 電気化学 / 電子移動 / ヘテロアセン / スルトン / ラジカル |
研究開始時の研究の概要 |
持続可能な社会を構築するには、環境負荷が低く高エネルギー効率・高選択的な反応プロセスの開発が必要不可欠である。このような反応の一つとして近年注目されるのが反応溶液に電気を流すことで反応を行なう有機電解反応である。有機電解反応は、酸化・還元を電極上で直接おこなう極めてクリーンな反応系である。 ところで、近年、有機半導体を活物質に用いた有機電界効果トランジスタや太陽電池が注目を集めており、その活物質として様々な機能性分子が開発されている。 本研究の目的は電気化学的手法を駆使することで、「有機電解反応により発生させた触媒活性種を用いて新規機能性分子を効率的に合成すること」である。
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研究実績の概要 |
有機電解反応は陽極上で酸化反応、陰極上で還元反応が進行するので、酸化反応、還元反応の際に化学酸化剤、化学還元剤を必要としない極めてクリーンな反応である。一方、近年有機半導体を活物質に用いた有機電解効果トランジスタ(OFET)や太陽電池(OPV)が強く注目を集めている。 本研究の目的はその電気化学的手法を駆使して、「電気化学的反応により発生させた触媒活性種(カチオン種またはラジカル種)により炭素-ヘテロ原子を結合形成する電解触媒活性化システムを構築し、新規機能性分子の効率合成に応用すること」である。 申請者は既に、ブロモニウムイオン等価体[Br+]を用いる電解触媒活性化システムにより、チオールの脱水素型環化が進行し、チエノアセン類が合成可能であることを見いだしている。本年度は、溶媒・反応温度等を最適化することで、ジベンゾチオフェンの効率的合成法を確立した。本反応の進行には、溶媒として高沸点・高極性のニトロメタンを用いることと、支持電解質としてリチウム塩を用いることが鍵となる。コントロール実験とDFT計算の結果、系中でごく微量の臭素が発生することが示唆された。なお、電気を流す代わりに臭素を直接基質に作用させても複雑な混合物を与え、目的物は得られない。ごく微量の臭素を電気で発生させることが、本反応において極めて重要であることがわかった。 また、電気化学的に発生させた酸素ラジカル種を経由する新たな炭素ー酸素結合形成反応も見いだした。スルホニルクロリドを水・塩基存在下電解酸化すると、スルホニルクロリドが系中で加水分解された発生したスルホナートが電極上で酸化されて酸素ラジカルが発生し、分子内の芳香環を不飽和結合あるいは芳香環を攻撃することで炭素ー酸素結合が形成されてスルトン誘導体を与えることを明らかとした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
上述したように、本研究の目的は、「電気化学的反応により発生させた触媒活性種(カチオン種またはラジカル種)により炭素-ヘテロ原子を結合形成する電解触媒活性化システムを構築し、新規機能性分子の効率合成に応用すること」である。本年度は、 従来よりもより高活性な[Br+]等価体を微量に発生させるシステムの構築に成功した。活性がただ高ければよいというわけではなく、高活性な活性種の発生を電流値・電気量で厳密に制御し、必要量を必要なペースで微量に発生させて、目的とする反応を選択的に進行させることが可能である、という知見を得た。これは従来のバッチ型リアクタで反応剤を混ぜ合わせていては困難な反応であり、電極反応である有機電解合成ならではの反応と言える。 また、ラジカル種を経由する反応についても、系中でスルホナートを発生させ、それを酸化することでラジカル種を発生させる反応を確立することに成功した。これは当初想定していた、電気化学的に触媒を発生させた触媒種を用いた反応ではなく、基質そのものが電気化学的に活性化された反応であるが、電気化学的に発生させたラジカル活性種を有機合成へと組み込んだ新たな反応であり、有機合成上有用である。 現在、その他電気化学的に発生させた活性種を用いた分子変換反応に精力的に取り組んでおり、新たな反応を幾つか発見し、その詳細の解明と条件最適化に取り組んでいる。研究の進捗状況は極めて順調である。
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今後の研究の推進方策 |
これまでに見いだした電解触媒活性化システムをさらに深化させ、多様な新規ヘテロアセン系分子を合成し、本システムの適用範囲を明らかとすると共に、得られた新規ヘテロアセン類の基本的性質を明らかとする。以下に詳細を述べる。 ・ハロニウムイオン等価体[X+]を触媒とする炭素―ヘテロ原子結合形成反応:現在、新たな様式の炭素ー酸素結合形成反応を見いだしているので、その反応機構を明確にすると共に、その適用範囲を明らかとする。 ・ラジカル活性種を触媒とする炭素―ヘテロ原子結合形成反応:初年度の検討の中偶然に、これまで用いてきたDABCOに変わるリンラジカル種発生の為の新規メディエータ候補を見いだしている。本メディエータが活性を示す条件を明確にすると共に、優れた触媒系を開発したい。 ・複数の反応点を有する前駆体の環化:複数の反応点を有する基質を触媒活性化システムへと適用し、高度にπ拡張されたヘテロアセンを合成する。 ・連続環化を経るヘテロアセン類の合成:ヘテロアセン前駆体として、一つの不飽和結合の近傍に二つのヘテロ原子を配置した基質を用いた連続的環化反応をおこなう。例えば、オルト位にヘテロ原子を有するジフェニルアセチレンに電解触媒活性化システムを適用すると、連続的に環化反応が進行し、アルキンから一気にヘテロアセンへと変換できると考えられる。本研究では、多様なヘテロ原子を導入した環化前駆体からの汎用的な連続環化反応の開発を行なう。 ・得られた新規ヘテロアセン類の構造活性相関の解明:得られた種々の新規チエノアセン類は、そのパッキング構造をX線結晶構造解析により明らかにすると共に、光学的性質・電気化学的性質といった基本的な物理的性質を精査し、その構造と物性の相関を明らかとする。
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