研究課題/領域番号 |
23K23391
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補助金の研究課題番号 |
22H02123 (2022-2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2022-2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分34030:グリーンサステイナブルケミストリーおよび環境化学関連
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
大山 陽介 広島大学, 先進理工系科学研究科(工), 教授 (60403581)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
17,550千円 (直接経費: 13,500千円、間接経費: 4,050千円)
2024年度: 4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2023年度: 4,420千円 (直接経費: 3,400千円、間接経費: 1,020千円)
2022年度: 8,450千円 (直接経費: 6,500千円、間接経費: 1,950千円)
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キーワード | 機能性色素材料 / 蛍光性センサー / 水 / 可視化 / 検出定量化 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では、蛍光性色素の光誘起電子移動(PET)、蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)および分子内電荷移動(ICT)特性を利用して水分を検出・定量化かつ可視化(蛍光発光による画像化)できる蛍光性水センサーを用いた機能性色素材料を創製し、水分の検出メカニズムを解明することで、試料中や試料(基板)表面に付着した微量水分から高水分に対応できる水分検出・定量・可視化蛍光分析法(研究概念)の創成を目的とする。
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研究実績の概要 |
本研究では、蛍光性色素の光誘起電子移動(PET)、蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)および分子内電荷移動(ICT)特性を利用して水分を検出・定量化かつ可視化(蛍光発光による画像化)できる蛍光性水センサーを用いた機能性色素材料を創製し、PET, FRETおよび ICT特性に基づいて水分の検出メカニズムを解明することで、試料中や試料(基板)表面に付着した微量水分から高水分に対応できる水分検出・定量・可視化蛍光分析法(研究概念)の創成を目的とする。本研究を遂行するために、開発したPET型, PET-FRET型および ICT型蛍光性水センサーを1) 種々のポリマーに分散(ドープ)させたポリマーフィルムやコーティング膜を作製、2) 直接ポリマー化させたフィルムを作製、3) 基板表面へ固定化する、ことで土木・農業・建築・医療・医薬・衛生分野に展開可能な水分可視化機能性色素材料を創製し(蛍光性水センサーの社会実装)、4) 本材料の設計指針・開発・研究手法および水分検出・定量限界の評価方法(JISやISOなどの国家・国際規格化)を確立する。本年度は、ガラス表面への固定基としてアルコキシシラン-Si(OR)3を導入した蛍光性水センサーKT-2を開発し、その加水分解・重縮合反応(ゾル・ゲル法)により、ガラス基板上にKT-2のポリシルセスキオキサン薄膜poly(KT-2-TEOS)SQを作製することに成功した。実際に、poly(KT-2-TEOS)SQは、乾燥時では無蛍光性であるが、水蒸気に曝露させた湿潤時では微弱ではあるが青色蛍光発光を目視することができた。さらに、poly(KT-2-TEOS)SQが乾燥-湿潤過程において無蛍光性-発光性の良好な繰り返し特性と耐久性を有していることを実証した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本年度の研究成果として、色素の光誘起電子移動(PET)特性を利用して水分を検出・定量化かつ可視化できる機能性色素材料の創製も目指して、アルコキシシラン-Si(OR)3を導入したPET型蛍光性水センサーKT-2を合成した。KT-2と架橋剤のTEOSを用いて加水分解・重縮合反応(ゾル・ゲル法)により、ガラス基板上にKT-2のポリシルセスキオキサン薄膜poly(KT-2-TEOS)SQを作製することに成功した。poly(KT-2-TEOS)SQの水蒸気暴露時と乾燥時の蛍光スペクトルを測定した結果、その蛍光強度は水蒸気暴露時において増大し、乾燥時では減少することがわかった。実際に、poly(KT-2-TEOS)SQは、乾燥時では無蛍光性であるが、水蒸気に曝露させた湿潤時では微弱ではあるが青色蛍光発光を目視することができた。さらに、poly(KT-2-TEOS)SQが乾燥-湿潤過程において無蛍光性-発光性の良好な繰り返し特性と耐久性を有していた。このように、本PET型蛍光性水センサーを用いて作製したポリシルセスキオキサン薄膜が、水蒸気・水滴を検出・可視化できる機能性色素材料であると実証することが出来、研究目的の1)-3)を達成したため(Sens. Diagn., 2024, 3, 631-639)。
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今後の研究の推進方策 |
昨年度に開発したポリシルセスキオキサン薄膜poly(KT-2-TEOS)SQのガラス基板上への固定化の状態を熱分析(TG-DTA, DSC), FT-IR, XRD, SEM-EDX, EPMA, ESCA, 蛍光顕微鏡および共焦点レーザー顕微鏡観察から評価し、蛍光性水センサーKT-2の重縮合条件が、固定化センサー数や薄膜中での分散に及ぼす影響に関する知見を得る。乾燥⇔湿潤に伴う蛍光性水センサーの分解や基板からの脱離を上述の各種測定・観察から調査し、乾燥⇔湿潤における蛍光性水センサー材料の可逆性・耐久性の改善に資する固定化方法に関する有用な知見を取集する。得られた知見を材料設計にフィードバックし、蛍光性水センサー基板作製のための最適な固定基や固定化条件の設定を図る。改良した蛍光性水センサー材料に水滴や水蒸気を接触させてUV-ランプ照射下で蛍光発光画像・動画を取得(目視)かつ光ファイバー型蛍光検出器を用いて蛍光スペクトルのオンライン測定を達成することで、高感度かつ高耐久性の水分可視化機能性色素材料の開発と研究手法・評価技術の確立を達成する。 蛍光性水センサー材料の水分検出限界(DL)と定量限界(QL)を求めるために、製作済みのアルゴンガスフロー水分量調整器と試料室を装着した水分検出・定量化蛍光分光装置を用いる。すなわち、試料室中に蛍光性水センサー材料をセットし、調整した水蒸気量(g/m3)を含んだアルゴンガスを接触、あるいは試料室内の湿度(%)を調整した際の蛍光強度の変化を測定する。水蒸気量(g/m3)、湿度(%)および水分含有率(wt%)に対する最大蛍光強度をプロットすることで検量線を得る。得られた検量線の傾き(msl)とブランクの標準偏差(σ)から DL = 3.3σ/mslとQL = 10σ/mslを評価し、水分検出・定量・可視化蛍光分析法の確立を達成する。
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