研究課題/領域番号 |
23K23395
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補助金の研究課題番号 |
22H02127 (2022-2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2022-2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分35010:高分子化学関連
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
石曽根 隆 東京工業大学, 物質理工学院, 教授 (60212883)
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研究分担者 |
本間 千裕 東京工業大学, 物質理工学院, 助教 (10981904)
後関 頼太 工学院大学, 先進工学部, 准教授 (20592215)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
17,550千円 (直接経費: 13,500千円、間接経費: 4,050千円)
2024年度: 4,420千円 (直接経費: 3,400千円、間接経費: 1,020千円)
2023年度: 4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2022年度: 8,450千円 (直接経費: 6,500千円、間接経費: 1,950千円)
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キーワード | 高分子合成 / 定序性高分子 / リビングアニオン付加反応 / 非重合性ビニル化合物 / 非重合性ビニルモノマー / 1,1-ジフェニルエチレン / ビニル化合物 |
研究開始時の研究の概要 |
酵素やDNAなどの天然高分子とは異なり、合成高分子においてモノマーの配列順序(シーケンス)を制御することは未解決の重要課題として残されている。本研究では、単独重合性を示さない非重合性ビニル化合物を用いて、ワンポットでの連続的なリビングアニオン付加反応を利用して、シーケンスが制御された一次構造の明確な新規定序性高分子の精密合成を行うことを目的とする。
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研究実績の概要 |
一連の新規ビニル化合物の単独重合性、反応性の検証と鎖末端定序性官能基化ポリマーの合成を行った。具体的には、求核性の高いリビングポリスチレンのポリマー鎖末端アニオンと、非重合性の1,1-ジフェニルエチレン(DPE)誘導体である、1,1-ビス(4-ブロモフェニル)エチレン(Br2E))、1,1-ビス(4-(1-アダマンチルカルボニル)フェニル)エチレン(Ad2E))、1,1-ビス(4-シアノフェニル)エチレン(CN2E)を用いた付加反応を検討した。求核性の強いリビングポリマーを直接反応に用いると、カルボニル基やシアノ基に対して副反応が部分的に起こる。一方、上記リビングポリマーアニオンと無置換のDPEとの1:1反応を行い、求核性を低下させたDPE型アニオンを使用した場合には、副反応無くAd2EやCN2Eとの1:1付加反応が定量的に進行し、ポリマー鎖末端に、対応するAB型二連子を定量的に導入できることを見出した。これに対して、電子供与性のトリアルキルシリロキシ基(SiO2E)や、中程度の電子求引性基であるエチニル基(TMSE2E)を有するDPE誘導体を使用することで、SiO2E-Br2E-CN2EやDPE-TMSE2E-CN2Eなど様々なABC型三連子を有する末端定序性官能基化ポリマーの合成に成功した。一方、こうしたDPE誘導体は、カリウムナフタレンとの反応で、AA二量体ジアニオンを生成する。このリビングアニオンにB分子、C分子を順に添加することで、定序性BAAB型4量体オリゴマーやCBAABC型6量体オリゴマーが得られることを明らかにした。こうしたDPE誘導体骨格から構成される定序性高分子の合成において、置換基の電子的効果が重要であることが確かめられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
概要に記載した通り、計画通り末端定序性官能基化反応の検討を行い、研究を概ね予定通りに進めることができた。具体的には、概要にも示した一連のDPE誘導体であるSiO2E,DPE,Br2E,TMSE2E,Ad2E,CN2Eを反応性の順に用いた逐次的な添加反応を行うことで、鎖末端に定序性ユニット(2,3連子)を有する一連の官能基化ポリマーの合成に成功した。DPE誘導体の反応は、添加する化合物の反応性が向上する順番に、一方向にのみ進行することが明らかとなり、本研究の鍵となるリビングアニオン付加反応の概念が正しいことが確かめられた。さらに、ここまでに明らかにした末端官能基化反応と相対的なDPE誘導体の反応性の結果を踏まえ、鎖中央のポリマーセグメントを取り去った定序性ユニットのみから構成されるオリゴマー類を合成した。実際には、ラジカルアニオンであるアルカリ金属ナフタレンを用いてDPE誘導体2量体ジアニオンを生成させ、続いてより高反応性のDPE誘導体を添加することで定序性BAAB型4量体オリゴマーを高収率で合成した。BAAB型ジアニオンはさらに別種のDPE誘導体や求電子試薬と反応が可能であり、定序性CBAABC型6量体オリゴマーや両末端にビニル基を有する二官能性定序性オリゴマーが得られることを見出した。
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今後の研究の推進方策 |
これまでに合成した鎖末端官能基化ポリマーの物性評価、反応性の検証を行う。予備的な実験結果として、鎖末端に定序性DPEユニットを有するポリスチレンのガラス転移温度が顕著に上昇することを見出している。また、鎖末端の反応性基(カルボニル基やエチニル基)に対する反応を行い、H型高分子や、さらに複雑な分岐ポリマーの合成を行う。一方、合成した定序性オリゴマーの結晶構造解析にも挑戦し、その末端ビニル化定序性オリゴマー同士のカップリング反応を利用して、シーケンスを制御した定序性高分子の合成を行う。このオリゴマーの合成研究と、引き続くカップリング反応による定序性高分子の合成を推進するために、原料のDPE誘導体(SiO2E, Br2E,TMSE2E,Ad2E,CN2E)の大量合成も行う。DPE誘導体に加えて、N,N-ジアルキル-α -フェニルアクリルアミド、α-フェニルアクリル酸エステルなどの低重合性ビニル化合物のリビングアニオン付加反応を利用して、鎖末端定序性ポリマー、定序性オリゴマーの合成についても検討する。
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