研究課題/領域番号 |
23K23399
|
補助金の研究課題番号 |
22H02131 (2022-2023)
|
研究種目 |
基盤研究(B)
|
配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2022-2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分35010:高分子化学関連
|
研究機関 | 京都工芸繊維大学 |
研究代表者 |
中 建介 京都工芸繊維大学, 分子化学系, 教授 (70227718)
|
研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
|
配分額 *注記 |
17,290千円 (直接経費: 13,300千円、間接経費: 3,990千円)
2024年度: 5,200千円 (直接経費: 4,000千円、間接経費: 1,200千円)
2023年度: 5,070千円 (直接経費: 3,900千円、間接経費: 1,170千円)
2022年度: 7,020千円 (直接経費: 5,400千円、間接経費: 1,620千円)
|
キーワード | 一重項酸素 / 光増感剤 / 共役系高分子 / ヒ素 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では研究実施者が初めて見出したヒ素含有共役系高分子による高効率一重項酸素発生能と著しい一重項酸素耐性や光耐性の詳細をヒ素原子の役割の観点から明らかにするためにこれまでに申請者が合成した種々のヒ素含有共役系高分子の構造と一重項酸素発生能と光および酸化耐性との関係に関する体系的なデータ取得とその機構解明を行う。さらにこれらがヒ素原子に特異な特性なのかを探るためにリンやアンチモン類縁体についても検討する。これらによる超長寿命化を制御できる元素化学の学理の構築を通じて、超長寿命かつ高効率一重項酸素発生高分子系増感剤の設計戦略の創出を目指す
|
研究実績の概要 |
研究実施者はヒ素元素含有共役系高分子が、光照射によって一重項酸素を効率よく発生し、その量子収率は単独の共役系高分子増感剤では最も高い54%であり、さらに一重項酸素が発生するにも関わらず24時間経過しても全く分解が認められないという極めて優れた耐性を発現することを見出した。本研究では、本成果を基盤とし、分子構造と一重項酸素発生能および劣化耐性との関係の体系的データを取得することで高効率一重項酸素発生能と著しい一重項酸素耐性や光耐性の詳細をヒ素原子の役割の観点から明らかにすることを目的とする。 2022年度はこれまでに一重項酸素の高効率発生を示したジチエノアルソール(DTA)共重合体を基盤にそれらのアンチモンやリン類縁体の合成を押し進めた。さらにゲルマンなどの他の元素に拡張させたヘテロール含有共役系高分子を合成し、これらの発光特性と一重項酸素発生能の評価を行ったところ、ジチエノゲルモール共重合体が優れた一重項酸素発生能を示すことがわかった。 ヒ素元素含有共役系高分子の劣化耐性と分子構造との関係の体系的データを取得する目的でトリフェニルアルソールの3,4位をシクロアルカンで縮環させた新規アルソール誘導体を合成し、その構造と安定性および光物性との関係を調査した。その結果、シクロペンタンで縮環体は大気下で安定であったが、シクロヘキサン縮環体はそのねじれ構造に起因して、アルソール環の酸化的開裂が進行することがわかった。 さらに長鎖アルキル基を導入したジチエノアルソールモノマーを合成し、これを用いたベンゾチアジアゾールまたはベンゾオキサチアゾールとの新規共重合体の合成も行った。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
種々のヒ素含有共役系高分子の合成を行い、一重項酸素発生効率と分子構造との関係の体系的データを取得するという目的に対しては、フェニレンアルシンポリマーやベンゾチアジアゾールまたはベンゾオキサチアゾールとの新規共重合体、さらにアンチモンやリンさらにゲルマンなどの他の元素に拡張させたヘテロール含有共役系高分子の合成を行い、一重項酸素発生効率の検討を開始した。その結果、ジチエノゲルモール共重合体が優れた一重項酸素発生能を示すことを見出すなどの成果が得られた。また、ヒ素元素含有共役系高分子の劣化耐性と分子構造との関係の体系的データを取得する目的に対しては、一重項酸素発生する構造以外にも種々の新規ヒ素含有化合物に対象を広げて検討を行った。その結果、トリフェニルアルソールの3,4位をシクロアルカンで縮環させた新規アルソール誘導体を合成し、その構造と安定性および光物性との関係を調査した。その結果、シクロペンタン縮環体は大気下で安定であったが、シクロヘキサン縮環体はそのねじれ構造に起因して、アルソール環の酸化的開裂が進行することがわかった。さらにシクロペンタン縮環体を光照射することによってフェニルアルソン酸としてヒ素が遊離することがわかった。光劣化耐性という観点からはネガティブデータであるが、ヒ素含有化合物の光劣化耐性メカニズムを解明するための重要な手がかりが得られたと考えられる。よってこれらから総合的におおむね順調に進展したと判断した。
|
今後の研究の推進方策 |
2022年度の得られたフェニレンアルシンポリマーやベンゾチアジアゾールまたはベンゾオキサチアゾールとの新規共重合体、さらにアンチモンやリンさらにゲルマンなどの他の元素に拡張させたヘテロール含有共役系高分子に対してより詳細な発光特性、一重項酸素発生効率と劣化挙動の評価を行う。これらの特性を評価することで光励起によりS1に遷移後、T1へ項間交差(ΦISC)を促進させるとともに、T1の寿命を長くさせることで酸素分子へのエネルギー移動(ΦET)を促進させ、それ以外の経路を抑制させる分子設計指針を理論的解析も含めて確立する。種々の波長の光照射実験、加熱および活性ラジカル種に対する反応性を検討し、その変化を紫外可視吸収スペクトル測定等で評価することで劣化耐性発現にヒ素原子の役割を明らかにする。光照射や加熱によって生じる未知の短寿命ラジカル中間体の追跡や理論計算から明らかにし、アンチモンやその他の後周期元素含有共役系化合物についてその知見を系統的に拡大させる。 予想した性能向上が見られない場合でも発光・電気化学特性等の評価データを取得することで、発光材料等の新たな機能・応用展開を図る。
|