研究課題/領域番号 |
23K23404
|
補助金の研究課題番号 |
22H02136 (2022-2023)
|
研究種目 |
基盤研究(B)
|
配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2022-2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分35020:高分子材料関連
|
研究機関 | 東京農工大学 |
研究代表者 |
下村 武史 東京農工大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (40292768)
|
研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
|
配分額 *注記 |
17,810千円 (直接経費: 13,700千円、間接経費: 4,110千円)
2024年度: 3,510千円 (直接経費: 2,700千円、間接経費: 810千円)
2023年度: 3,250千円 (直接経費: 2,500千円、間接経費: 750千円)
2022年度: 11,050千円 (直接経費: 8,500千円、間接経費: 2,550千円)
|
キーワード | 導電性高分子 / 熱電変換 / エアロゲル / PEDOT:PSS / 環境発電 |
研究開始時の研究の概要 |
導電性高分子を用いて、従来報告されているクライオゲルよりもはるかに断熱性・気体吸着性に優れた真のエアロゲル構造を実現し、熱電変換デバイスへの応用や、温度差を用いた分子の吸脱着制御を目指す。 目指すエアロゲル構造は、気体の平均自由行程よりも小さい10 nmサイズのメソ孔をもち、気体の対流抑制により熱伝導率0.03 W m-1 K-1程度と発泡スチロールに匹敵する低い熱伝導率を示すこと、および300 m2 g-1以上の大きな比表面積をもつため、分子の吸着特性にも優れることである。このエアロゲルの熱電効果を用いてLEDの点灯と、熱電効果を用いたCO2などの気体あるいは分子旧脱着制御を目指す。
|
研究実績の概要 |
熱電効果では高温側で励起され、エネルギーを得たキャリアを低温側に輸送する電流をよく流す半導体である一方で、高温側から低温側への流れる熱流を遮断する断熱体であることが理想的である。そこで、高い熱電性能が報告されている導電性高分子からなり、10 nmサイズのメソ孔をもち、体積比率で95%以上の気泡を含み、一般的なシリカエアロゲルにも劣らない300 m2 g-1以上の大きな比表面積をもつことで、熱伝導率は0.03 W m-1 K-1程度と発泡スチロールにも匹敵する低い熱伝導率を有する真の熱電エアロゲルを作製し、その熱電特性、力学特性を評価し、熱電材料としての適性を実証することを目的とした。また、この熱電エアロゲルの応用として、環境発電モジュール、超軽量クーラーボックス、熱電イオンフィルターとしての性能評価・実証を行うことも目指す。 前年度、作製に成功した高い比表面積、低い熱伝導率をもつポリ(3,4-ジオキシチオフェン):ポリスチレンスルホン酸(PEDOT:PSS)エアロゲルの耐熱性を調査したところ、200°Cを超える高温においても、多孔構造が維持されることがわかった。また、その熱電特性において、導電率の温度依存性は200°Cを超える高温までほぼなく、縮退系の導電特性を示すこと、ゼーベック係数も縮退系の温度依存性と矛盾しないことを確認した。この特性の発現はゲル化のための架橋時に発現していることを明らかにした。また、PEDOTのポリビニルアルコール(PVA)との化学コンポジットにより、800%程度の伸長にも耐えるゲルを作製することができた。 CO2の熱電フィルター効果の実証を目指し、CO2環境下での熱電特性評価棟を行っているが、現時点では選択的な吸着による熱電特性への影響は十分に観測されていない。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
ポリ(3,4-ジオキシチオフェン):ポリスチレンスルホン酸(PEDOT:PSS)を用いたエアロゲルの作製には成功し、熱電特性の発現に加えて、エアロゲル特有の低熱伝導率を確認することができた。また、その作製において得られた知見を基に力学特性の優れたPEDOTゲルの作製にも成功した。このゲルは200℃以上の高温にも耐えることができ、しかも縮退系に分類される導電率の温度依存性を示すことを明らかにした。また、ゼーベック係数は値自体大きくはないが、温度の対数に対して線形の依存性を示し、高温でも動作は可能であったため、温度差をつけることにより電圧をかせぐことができるため、10セル程度を直列接続すれば、30 mV程度を得られることも明らかとなった。現在、昇圧回路を用いてLEDの点灯を目指している。また、マトリクスを用いて、伸張性の高い導電性高分子ゲルの作製にも成功した。以上から、熱電エアロゲルの実現と性能の実証に関しては順調に進展していると考えている。 しかし、このエアロゲルと気体との相互作用による熱電効果の変調、およびその変調を利用した熱電フィルターの実証も本研究の目的の一つであるが、まだ、そのための方法論を確立するには至っていない。現在、気体をCO2から酸化還元性を考慮したO2やアンモニアに変更し、再度、その実証を目指しているが、まだ、その方法論を確立できたとはいえず、この目標に関しては進捗がやや遅れていると考えている。
|
今後の研究の推進方策 |
熱電フィルターの実証を行うため、これまで行ってきたCO2ではなく、今後は酸化性の高いO2、還元性の高いアンモニア、および確実に効果が得られると思われる水蒸気において、まず効果を実証し、その知見をもとに、元々のターゲットとしているCO2に適用していくことにする。現状の設備でO2は濃度を変えながら熱電特性を評価することが可能であるが、特にアンモニアは自由に濃度を変更することは困難な環境であるため、低濃度のみで実施する。また、水蒸気も安定した湿度制御は困難であるが、実施は可能と考えている。 エアロゲルはPEDOT:PSSで構成されているため、ゼーベック係数が小さく、電流は比較的得ることができるが、電圧は十分に得ることが困難であることが明らかとなった。そこで、複数のセルを直列に接続して、かつ昇圧回路を接続して、LEDの点灯を行う。架橋による効果で高分子としては特異的に高温で動作が可能であること、および低熱伝導率で比較的フレキシブルで自由な形状をつくることができるエアロゲルという形状の特徴を生かしたデモストレーションを実施する。例えば、熱水パイプの断熱剤としての動作などが考えられる。
|